経営が苦しくなる一方の老舗モールが二次元を取り込むことで息を吹き返している。市内に点在するグッズショップは倒産、閉店が相次いでいるが、ショップを集積し、「濃度の高い場所」にすることで若者が集まるようになっていると澎湃新聞が報じた。
老舗モールの救いの神は「二次元」
中国には6000カ所弱のショッピングモールがあり、新しくオープンしたモールはどこも盛況だ。しかし、モール全体の先行きは暗い。新しいモールが盛況でも、それは既存のモールから客を奪っているだけの話で、老舗モールは閑古鳥が鳴いている。新しいモール、目新しいモールでないと客がきてくれないということから、毎年400カ所程度のモールが新規オープンするが、老舗モールの経営をますます難しくさせることになる。
老舗モールは、どうにかして客を呼び戻す必要があり、これまで飲食チェーン、ライブハウスなどを取り込むことで集客を図ってきた。しかし、老舗モールは新たな集客の手法を見つけた。二次元だ。「二次元が老舗モールを救う」というフレーズもSNSで拡散した。
秋葉原化が進む上海市人民広場周辺
このような二次元を導入して成功した老舗モールの事例が増えている。上海市の華聯商業ビルは改装をして二次元を大きく取り入れ、昨年、上海百聯ZX創趣場としてリニューアルオープンをした。さらに、成都市の天府紅も二次元を導入して成功をしている。この他、多くのモールが、規模はさまざまだが、二次元のコーナーを設置し、若者の集客を図っている。
二次元ショップは高層階にも客流が生まれる
上海百聯ZX創趣場は、すでに二次元オタクの聖地になり始めていて、上海市の高校生、大学生だけでなく、上海市以外からも若者がやってくるようになっている。家族旅行では、中高生の中には上海百聯ZX創趣場に行きたいがために上海に旅行することを主張し、中高生は上海百聯ZX創趣場で二次元ショップを満喫する。親は一般のショップを見て回ったり、広場で子どもを待っていたりという光景が珍しくなくなっている。
モールの6階にある「猫受屋」の店員によると、1日の売上が、平日で2、3万元、休日で3、4万元、夏休みには5万元を超えることもあるという。小さなショップとしては驚異的な売上だ。
伝統的なモールでは、客流は1階や2階の低層階に集中をし、3階以上の上層階は客が少ないという現象が起きる。そのため、今はビル型のモールは少なくなり、低層タイプのモールが主流になっている。しかし、二次元ショップは、多くの客が目当てのショップを下調べしてくるために、高層階にも客流が生まれる。
路面店は閉店ドミノでも、モールでは人気のグッズショップ
特に客が入っているのがグッズショップだ。アニメやゲーム関連のバッジ、スタンド、カード、ポスター、フィギュアなどだ。このようなグッズは、ネットでも簡単に買えることができるが、若者たちはオフラインの店舗にきて買うことを好む。知らなかったグッズと出会えることもあるし、友人と一緒にきて、グッズ選びをしていること自体が楽しいからだ。消費だけでなく、社交の要素がある。
市内のグッズショップは閉店が相次いでいる。一時期、ブームとなり、一気にショップが増えたが、すぐに飽きられてしまった。公式ではない紛いもののグッズが販売されたり、コンテンツ愛がなくただ儲けるためだけにつくられた低品質のグッズも販売されたりしたからだ。
しかし、グッズ店が集中をするところには人が集まる。たくさんの店舗が集積することで、グッズ選びに浸ることができ、低品質のショップはスルーをすればいいだけだからだ。
二次元はモールを救うことにもなったが、二次元ショップもモールに救われた面がある。
若者たちは濃度の高い場所に集まる
今、SNSで話題になっているのが「濃度の高い場所」という言葉だ。上海市の中心地である環人民広場周辺には、上海百聯ZX創趣場だけでなく、新世界城、百米香榭、迪美商業街、第一百貨店、静安大悦城などの商業施設が、二次元コーナーを設置するようになっている。このような商業施設は近い距離にあり、歩いて移動することができ、二次元好きの若者たちはショップをはしごして、1日中遊ぶことができる。このような場所が「濃度の高い場所」であり、休日になると、若者たちが集まってくるようになっている。
このようなモールでは、休日にはさまざまなイベントも開催し、環人民広場は、日本の秋葉原のようなオタクの聖地になろうとしている。