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3社のロボタクシーを乗り比べてみたら。見えてきた各社ロボタクシーの個性

百度バイドゥー)のロボタクシー「蘿卜快跑」(ルオボ)が主要11都市で正式営業を始めて話題になっている。また、同時に、小馬智行(シャオマー、ポニー.ai)、文遠知行(ウェンユエン、WeRide)も乗客が乗れる試験営業を進めている。雷科技では、この3つのロボタクシーに乗車をし、乗客目線から比較をした。

 

配車までに15分待たされる蘿卜

蘿卜の営業エリアは市の中心部に限定をされている。また、エリア内であっても、好きな場所で乗り降りすることはできない。仮想の乗降地点が定められていて、そこで乗り降りをしなければならないという制限がある。道路環境のいい場所では50m間隔ほどで乗降地点が定められているが、環境の悪い場所では数100mに1ヶ所になってしまう。その場合は、人間の方から乗降地点に歩いていかなければならない。

雷科技では、蘿崗地下鉄駅A出口から神舟路地下鉄駅E出口までの5.8kmを蘿卜快跑に乗車をした。問題は、ロボタクシーの呼び出しをして到着するまでの時間だ。アプリで注文を入れると、車両とのマッチングに3分かかり、さらに到着するまでに12分かかった。呼び出しをしてから都合15分待たされたことになる。

まだ、車両数がまだじゅうぶんではない、好奇心から利用をする人が多いということはあるものの、一般のタクシーやライドシェアのアプリ呼び出しでは5分から10分で車がやってくることを考えると、使い勝手はいいとは言えない。

運転は非常に丁寧で、ブレーキも滑らかにかけてくれるため、乗り心地はとてもいい。5.8kmを15分で走り、初乗り16元、距離運賃18.56元だったが、現在は割引があり30.42元が引かれ、4.14元で済んだ。同じ距離でライドシェアを頼むと、12元から18元であるため、現在は格安だが、割引が終わって正式運賃の34.56元になると、価格競争力の点が問題になると思われる。

▲蘿卜は各都市で人気となっているが、注文を入れてからロボタクシー到着までに15分かかる。この待たされる時間が大きな課題になっている。

 

すぐにマッチングができるWeRide

WeRideも広州市で、乗客を乗せる試験営業を始めている。営業エリアは市の中心部の狭いエリアに限られている。その代わり、ロボタクシー、ロボミニバスの2種類を提供している。

WeRideのアプリでは、自分で地図上の近い場所にいる車両を選んでマッチングをする仕組みだ。このため、利用者にとっては使いやすい。蘿卜はマッチングはシステム側が行い、それに3分程度かかる。その後に、到着までの予測時間が表示される。到着予測時間が長い場合、キャンセルをして、別のライドシェアやタクシーを利用することになるが、その判断をするまでの3分を無駄にしてしまう。一方、WeRideでは車両を自分で選んでマッチングする仕組みなので、すぐに到着予想時間が表示される。そこで長ければキャンセルをして、別の手段を取ることができる。

WeRideも台数は少ないため、到着するまでに13分かかった。

WeRideは、安居宝科技園西北門から科学城地下鉄駅C1出口の3.7kmを7分かかり、料金は10.98元だった。初乗り12元、距離運賃0.2元の合計12.2元だったが、1.22元の割引があった。ライドシェアでは10元から15元であり、ほぼ同じだ。

▲WeRideのロボタクシー。自分で近くにいる車をマッチングする仕組みであるため、到着予定時間がすぐに表示される。

▲WeRideの営業エリアは、広州市の中心部、狭いエリアに限定をされている。左は蘿卜の営業エリア。右はWeRideの営業エリア。

 

地下鉄駅付近は運転の難易度が高くなる

WeRideはロボミニバスも運行している。6人乗りの固定路線を巡航し、安全監視員が運転席に座っているが、ハンドルから手を離し運転操作は行わない。時速は35kmに制限されている。しかし、地下鉄駅を中心に停車をすることから運転難易度は高い。地下鉄駅付近の道路は混雑をし、バス停付近に違法停車をしている車両もあるからだ。乗車中、安全監視員が3回手動操作を行った。1回は違法車両を避けるためにハンドルを操作し、2回クラクションを鳴らした。

▲WeRideのロボバス。安全監視員が乗る形式だが、すでに市民にとって利便性の高いコミュニティーバスになっている。

▲WeRideのミニロボバス。主要駅を巡回するコミュニティーバスになっている。

▲WeRideのミニロボバスには、安全監視員が運転席に乗車をしている。地下鉄駅付近のバス停などでは交通状況が複雑であるため、人間が運転介入しなければならないこともあった。

 

ハイヤー感覚のサービスを提供するポニー

ポニーは、北京、上海、広州、深圳の4大都市でロボタクシーサービスを始めている。ただし、通常のタクシーのようにアプリから呼び出す感覚ではなく、あらかじめ時間と場所を予約する方式だ。週に最大5回まで予約をすることができる。乗車やキャンセルをすれば、予約枠が回復をする。つまり、常に5回分まで予約ができるという仕組みだ。

自動車も5人乗りと7人乗りのSUVで、運転席と助手席には乗車ができないため、それぞれ3人と5人が乗車できる。このことから、ポニーは、一般的なタクシーというよりも、ビジネス利用などのハイヤー系のサービスを考えているようだ。

黄閣汽車城地下鉄駅A出口から金州地下鉄駅B出口までの6.8kmを乗車したが、予約をしているため2分から3分程度で車両がやってくる。また、ポニーの特徴として、車両が乗車地点に向かい始めると、アプリから自動車の窓を開けて換気をする、エアコンを操作するということができるようになる。事前に窓を開けて換気をし、エアコンをかけて、到着した時には涼しい車内に入ることができる。また、最大時速は蘿卜とWeRideの40kmよりも早く、最大時速60kmで走行をするため快適だ。

6.8kmの行程を15分で走り、料金は10.3元だった。初乗り12元、距離運賃9.6元の21.6元で、11.3元の割引がある。ライドシェアでは15元から23元であり、高めのライドシェアとほぼ同じ水準だった。

▲ポニーのロボタクシーは車が豪華。完全予約制でハイヤーに近いサービスを志向している。

▲ポニーのロボタクシーは、到着前に、エアコンなどの設定をアプリからリモートで行うことができる。到着した時には快適な温度になっている。

 

三社三様のロボタクシー。友人タクシーとは違う路線を志向している

面白いのは、3社ともにそれぞれ強みがあり、個性があるということだ。蘿卜は低価格であり、ポニーはマッチングが速く、WeRideは乗車体験がいい。従来のタクシーやライドシェアの無人運転による代替ではなく、3社ともに新しい移動手段を確立しようとしている。

ロボタクシーが街中を走るようになり、タクシーやライドシェア運転手からは激しい反発が起きている。自分たちの仕事がなくなることから、ロボタクシーに規制をかけるべきだという主張をしている。しかし、運転手たちがこれほど強く反発するのも、「ロボタクシーが未来の方向である」と認識をしているからに他ならない。中国の都市は、確実にロボタクシーに向かって進み始めている。