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人手不足に悩む宅配便企業。無人カートの導入で、再配達業務がほぼなくなる

深刻な人手不足に悩む宅配便業界が無人カートの導入を進めている。これまで効率を悪化させる要因になっていた再配達業務、拠点間配送が自動化できることで、人手不足の解消の決め手になっていると北京日報が報じた。

 

人手不足が深刻な宅配便業界

中国の宅配便企業が、人手不足に苦しんでいる。コロナ禍の影響で、人と会う機会の多い仕事が避けられるようになっているからだ。一方で、買い物に出かけるのを避ける人が増え、その習慣が定着をし、宅配便の荷物数が急増をしている。仕事は増え、配達スタッフが足りない状況で、宅配便の配達が滞り始めている。

宅配便企業各社は、残業を奨励し、残業代に奨励金を上乗せするようになっている。

また、北京市では住民が宅配便の配達に参加をすることを奨励するようになっている。地域の住民が地域住人宛ての荷物を一括して受け取り、その人が最後の配達を担当することで、宅配便スタッフの負担を減らそうという試みだ。配達をする人には件数に応じて報酬が宅配便企業と北京市政府から支払われる。

 

最終的な方法は無人カートによる配達

しかし、いずれの方法も対症療法的なもので、根本的な解決にはならない。そこで、宅配便企業「韻達」(ユインダー、http://www.yundasys.com/cn/)は、北京市亦庄区の経済開発区にある北京南海支店に、32台の無人カートを投入した。

この無人カートを製造したのは新石器科技(Neolix、https://m.neolix.net/)。最大積載量は600kgで、L4自動運転が可能で、交通信号を識別し、道路状況に応じて自律的に走行しながら、設定された地点に移動をする。

30秒でバッテリーが交換でき、満充電で200km走行できる。この32台の無人カートは、毎日8000件の宅配便荷物を配達している。

北京市亦庄区の経済開発区で走る宅配企業「韻達」の無人カート。拠点間配送、再配達、ピックアップなどに利用されている。

 

受取人のスマホに連絡。受取時間の変更も可能

無人カートで宅配便が運ばれた場合は、受取人にショートメッセージが送られる。

「あなたの荷物は無人カートに乗せられました。無人カートは9時43分に、受け取り場所に到着します。受け取り場所:北京経済開発区・北京工業大学ソフトウェアパークxxx。解錠コード:xxxx。無人カートナンバー:xxxx」

さらに、URLがつけられ、時間を変更したい場合は、そのURLから変更ができるようになっている。

時間になって、受け取り場所に行くと、無人カートがやってくるので、解錠コードをパネルに入力すると荷物を取り出すことができる。

▲荷物が無人カートに乗せられると、受取人のスマホに通知が飛ぶ。都合が悪ければ、URLをタップすることで、配達時間や配達場所を変更することができる。

 

支店から配送拠点への配達に使われる

無人カートは、このように直接、顧客に荷物を届けることもあるが、主な用途は北京南海支店が統括する配送拠点に荷物を一括して運ぶことだ。この配送拠点から、近隣から配達される。

このような配送拠点への配送は、配達スピードが要求される現在では、1日に複数回荷物を配送する必要がある。支店から荷物を積んで拠点に運び、帰りは空で帰ってくる。これは配送として非常に効率が悪い。そこで、この配送を無人カートに任せ、人は受け持ち区域内を巡回しながら、配達する業務を担当する。

拠点間配送の仕事がなくなったため、配達スタッフは本来の配達に専念ができるようになった。

▲荷物を積み込むスタッフ。ハンディ端末でバーコードを読んでから無人カートに入れる。再配達の問題も解消されるため、スタッフにとってはこの時点で作業が終わり、後は無人カートに任せることができる。

 

再配達を無人カートに任せることで効率があがる

また、再配達の手間も大きく軽減された。従来は不在による再配達は大きな手間になるために、配達スタッフは事前に受取人に電話をして在宅確認をするのが一般的だった。しかし、この電話に1回1分かかるとすると、1日に100個の荷物を配達する場合は、100分間=1時間40分の電話が必要となる。この時間が業務効率を著しく悪化させている。

かといって、電話をせずに、再配達の荷物をいくつも出してしまうと、同じ配達エリアを何度も巡回することになり、効率はさらに悪くなる。

この問題は、人と無人カートを組み合わせることで解決された。人が配達をして、事前連絡はせず、不在の場合はそのまま荷物を持ち帰ってしまう。持ち帰った荷物は無人カートに乗せてしまう。無人カートに乗せれば、受取人にショートメッセージが送られ、受取人の都合が悪ければ、自分で都合のいい時間を指定してくれる。

無人カートでの配送があると、受取人のスマホに通知が飛ぶ。受取場所でその通知から操作することで、荷物を受け取ることができる。

 

荷物のピックアップにも無人カートを利用

北京南海支店には35人の配達スタッフがいて、毎日27人のスタッフが出勤して稼働をしている。無人カートが導入されてからは、受取人への電話、荷物の荷下ろしなどで約2時間の業務時間が節約できるようになり、平均で1人あたり150件の配達をこなせるようになったという。

また、荷物のピックアップも無人カートに担当させる試みも始まっている。企業などである程度の数の宅配便を出す場合は、従来は配達スタッフがピックアップに行っていたが、配達の途中で寄るために、企業側の希望する時間に行くことはなかなか難しかった。しかし、無人カートを派遣し、企業側でカートに荷物を入れてもらうという形でピックアップにもすぐに対応できるようになった。

無人カートはL4自動運転なので、道路環境が整備されているエリアでなければ利用できないが、経済開発区などを中心に、今後、急速に導入が広がっていくと見られている。