宅配便企業、フードデリバリー企業などで無人カートを利用することが珍しくなくなっている。多くの無人カートは、音声機能、対話型AIに対応をし、人間と簡単なコミュニケーションを取ることができる。それには深い理由があると猫魚が報じた。
今年2024年は自動運転元年
今年2024年は、自動運転元年と呼んで差し支えない年になった。各新エネルギー車メーカーは、NOA(Navigation on Autopilot)を搭載するのが標準になり、最も評価の高いファーウェイのADSの場合、95%以上の時間を運転を車に任せることができるようになった。ほぼほぼ自動運転で、時々、人間が手を貸してやる感覚だ。
さらに、百度のロボタクシーは、武漢市を中心に1000台規模を投入。すでに、市民に普通に利用される状況になっている。
また、宅配便企業などの自動運転カートは、大都市ではもはや珍しい存在ではない。完全に日常のものとなっている。そのため、SNSには自動運転カートの珍プレイ映像が投稿されるようになり、多くの人を和ませている。
バンプにハマってしまった無人カート
宅配便企業「順豊」(SFエクスプレス)の無人カートが、マンション内の減速用バンプで立ち往生している映像が広く拡散をした。
この場所のバンプは2本連続してあり、その間隔が、ちょうど無人カートのホイールベースと同じであったために、乗り越えることができず、立ち往生をしてしまったのだ。通行人もみな笑い出し、スマートフォンでの撮影を始めた。最後には、ある若者が後ろから押してくれて脱出することができた。
無人カートは、人や障害物を感知し、避けるか安全停止をするが、それでも万が一のことがあるために、トルク(タイヤの回転力)を弱く設定がしてある。子どもやペットなどを認識できずに接触した場合でも、ケガなどの被害を与えないためだ。そのため、このような特殊な状況では、小さなバンプも乗り越えられない事態が発生してしまった。
呼び止めたらバックで戻ってくる無人カート
宅配便企業で使われる無人カートの多くは、基幹配送拠点から各地の配送拠点への荷物の輸送に使われる。これであれば、無人カートを出発させる方も受け取る方もスタッフであるため管理がしやすく、基幹拠点からその地区に配達する荷物を乗せ拠点に行き、今度は拠点から各地方へ出荷する荷物を乗せて基幹拠点に戻るということができ、効率がいいからだ。
一方で、大規模なマンションや企業などに対しては、宅配便の配達まで無人カートで行ってしまうケースもある。荷物の受取人にメッセージを送り、一定の場所で停車をし、受取人が暗証番号を入れて荷物を受け取る。つまり、移動する宅配ロッカーのように使えるのだ。
この宅配ロッカー式の無人カートで荷物を取り出した女性が、まだ受け取らなければならない荷物があるのに、無人カートが走り出してしまった。そこで「待って!」と声をかけたら、無人カートが止まり、バックをしてきて、無事、荷物を取り出すことができたというものだ。
無人カートの多くは会話ができる。大規模言語モデルをベースにした会話システムが搭載されているため、ある程度の会話を理解し、それに基づいた行動ができるのだ。
口喧嘩を始める2台の無人カート
あるオフィスビル付近では、2台の無人カートが鉢合わせをした。無人カートは移動可能な障害物=自動車、バイク、人などを認識すると、「譲ってください」という音声を発し、障害物が移動をして道を開けたら再び走り出すということをする。
ところが、この場合は、2台とも無人カートであったために、互いに「譲ってください」と言い続け、立ち往生をしてしまった。
すると、2台の無人カートが口喧嘩を始めたのだ。「あなたは運転免許持っているの?」「君は免許講習の第三課程に合格しているのか?」という言い合いになった。すると、1台のカートが「私の華麗なバックを見せてあげよう」と言い、バックをして道を譲り始めた。すると、もう一台は「バック入庫は第三課程ではなく、第二課程だぞ」と皮肉を言ったというものだ。
通りがかりの人に助けてもらう無人カート
さらに、ある工場では、十字路で2台の無人カートが鉢合わせた。2台はいずれも「お先にどうぞ」と言い合ってお見合い状態になってしまった。すると、その近くにいた男性が「お前が先に行けばいい」と指示をすると、指示をされた無人カートが先に行き、お見合い状態が解消されたというものだ。
無人カートにとって重要なコミュニケーション能力
このような面白映像が拡散している無人カートは、新石器無人車(NEOLIX、https://neolix.net/)のものが多い。ネオリクスの無人カートは、音声認識と音声合成、大規模言語モデルに対応し、人間や他の無人カートと音声で簡単なコミュニケーションをすることができる。
この機能には2つの意味がある。ひとつは状況把握が可能になることだ。無人カートには120m、360度のLiDARが搭載され、物理的な状況は把握ができるが、実際の交通状況では交通の文脈のようなものまで把握をしないと走行戦略が決定できない。例えば、立っている人が障害物になっていた場合、その人が無人カートの存在に気づいてくれなければどいてくれることはないため、音声で注意を促す必要がある。また、障害物が駐車車両である場合、それが運転手がいて停車をしているだけなのか、無人になっていて放置されているのかで走行戦略を変えなければならない。それを確認するために、音声を発して、その応答を理解することで、交通の文脈を理解し、適切な走行戦略が立てられるようになる。
音声対応はハラスメント予防にもなる
もうひとつは、機械に対するハラスメントを予防するためだ。これまでにも、人間社会には無数の自動機械が社会実装されてきたが、人間は自動機械に対して暴力をふるう傾向がある。じゃまに感じたり、思ったとおりに動作しない場合、蹴る、叩くという行動をとる人は多い。ロボットに対しても、物珍しさをすぎて社会実装される段階になると、荒い扱いをしたり、暴力をふるう人が増えていく。
しかし、自動機械であっても、人間とコミュニケーションが取れるものに対しては、このようなハラスメントが大きく減ることが確かめられている。そのため、無人カートは可愛らしい子どもをイメージさせる音声で人間とコミュニケーションを取り、時には人間の笑いを誘うような余計な冗談も口にする必要があるのだ。
無人カートは、そのような意味でも、人間社会に浸透をし始めている。