中国でも、日本と同じような考え方の郵便番号が使われている。しかし、郵便番号は郵便局のIDであり、宅配時代にそぐわなくなってきている。そのため、個人をベースとする新しいIDの研究が始まっていると江干発布が報じた。
時代にそぐわなくなってきた郵便番号=郵便局ID
中国で、郵便に使う郵便番号の廃止が検討されている。中国国家郵政局は、信書、小包などに6桁の郵便番号を使ってきた。原理は日本の郵便番号とほぼ同じで、郵便局のピラミッド構造をそのまま番号化し、最終的に配達を受け持つ郵便局を数字で指定するものだ。いわば郵便局のID番号だった。
国家郵政局発展研究センターと北京大学時空ビッグデータイノベーションセンターは、共同して郵便の個人ID技術の研究を始めている。まだ研究段階だが、この個人IDの使用が始まれば、従来の郵便番号は不要となり、自然と廃止されることになるという。
▲中国でも郵便物には6桁の郵便番号が使われている。しかし、これは郵便物流に合わせた郵便局のIDになっている。宅配企業は異なる物流網を構築しているため、郵便番号を使わず、独自のコード体系を使っている。
実は郵便局のIDだった郵便番号
その背景となっているのは、年間600億個を超える宅配便の量だ。しかも、ECが地方都市に普及をし始めているので、宅配便量はますます増加をすることが見込まれ、なおかつ地方配送が増え、配送効率が低下していくことが予想される。
宅配便にとって、もはや郵便番号は効率の悪いコードになってしまっている。郵便番号は、配達地域をコード化しているように見えて、実は郵便局のID番号になっている。例えば、226156という郵便番号は、最初の22は江蘇省を表しているが、次の6は南通郵便区を表し、次の1は海門県郵便局を表し、次の5が東興郵便支局を表し、最後の6が配達郵便局を表すという具合になっている。郵政は、郵便番号に従って、郵便や荷物を振り分けていけば、最終的に配達すべき郵便局に届くことになる。そこからは住所を見て配達をする。
▲中国の郵便番号の仕組み。一見、住所を示しているように見えて、実は末端配送を受け持つ郵便局のIDになっている。
宅配企業は独自コード体系を使用。統一コードが喫緊の課題
つまり、郵便番号は郵政の物流に合わせたコード体系であり、多くの宅配企業は郵政とは異なる物流網を構築しているため、効率的ではないのだ。そこで、多くの宅配企業は、郵便番号や住所などの情報から、自社物流に適した独自コードを使って、配送作業を行なっている。
しかし、すでに宅配企業が単独で配送をすることは限界に達している。現在では、宅配企業同士で、荷物を相互委託するようになっている。配送が滞った時に他企業の力を借りる、基幹路線に空きがあれば委託をして輸送してもらうなどだ。この時、それぞれの宅配企業が独自コードを使っているため、委託をするために、配送コードの付け直し処理をしなければならない。
そこで、統一コードの研究が始まったのだ。
▲宅配企業の仕分けセンター。お掃除ロボットのような走行ユニットに荷物を乗せると、配送先を読み取り、適切な「穴」に落としていく。穴の下には、大型の配送袋がセットしてあり、これをトラックで輸送する。
【多维新闻】中国的快递分拣系统逆天了:机器人5分钟计算量,相当于一个繁忙机场
▲中国の宅配企業の多くが、仕分けセンターの自動化をしている。完全無人にはならないが、少人数で大規模センターの運営が可能になっている。
配送先の個人と3D位置情報を織り込んだコードが有力視
どのようなコードになるのか、現在はまだ議論が始まったばかり。しかし、北京大学時空ビッグデータイノベーションセンターの程承旗主任によると、緯度経度のように、地球の1点を示すコードになると言う。平面ではなく、地球の空間を立体分割してコード化することで、中国だけでなく海外も指定できるようになり、マンションやオフィスビルの階数などもコードで指定できるようにする。
数値としての桁数はかなり長くなるが、数字をそのまま使うのではなく、バーコードやQRコードなどの表示方法を使うので問題はないと言う。
このような個人用郵便コードは、身分証番号などに紐づけられ、名前などから簡単に配送場所が検索できるようにすると言う。
送り状に文字情報を記載しない方向へ
このようなコード化を進めるのは、宅配便の量の問題の他に、プライバシーの問題と配送拠点の無人化の問題も背景にある。
宅配便の送り状に記入されている名前、住所などの情報から、宅配便スタッフなどが犯罪を犯す事件も報道されており、各宅配便企業は送り状にQRコードしか表示しないようにし始めている。このQRコードは暗号化されており、専用端末でなければ解読することができない。そして、どの端末がいつQRコードを読み取ったかはすべて記録される。個人用郵便コードが利用できるようになれば、宅配荷物にはQRコードをひとつつければいいようになる。
▲京東の無人配送車。宅配企業はすでにキャンパス内などの閉鎖区域内で走る宅配ボックスとして無人配送を始めている。
手書きの送り状が効率を下げている
また、配送拠点、仕分けセンターなどでは無人化が進んでいる。無人化されていない仕分けセンターもあるため、送り状には手書き文字の情報もある。無人の仕分けを行うために、この手書き文字を自動判別しなければならないが、そこで読み取りミスが出て、効率を下げている。すべてQRコードだけになれば無人仕分けセンターの効率は大きく上昇する。有人仕分けセンターでは、人間は端末でスキャンをして情報を表示すればいい。
▲国営の中国郵政も、湖北省仙桃市で、郵便局から官公庁などへの配達を固定路線を走る無人配送車で行い始めている。
個人ID導入で、配送コストは44%に減少との試算も
北京郵電大学の周暁光教授は、郵便番号が個人ID化された場合の効率を試算していて、その試算によると、輸送車は71%に減り、末端の配送車は77%に、宅配スタッフは41%に減らすことができるという。最終的な配送コストは44%に減らすことができる。
消費者にとっても、宅配企業にとっても大きなメリットのある改革だ。逆に言うと、郵便コードの仕組みが古いままであるために、現在は大きな無駄をしていることになる。