中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

変わりつつある日本製品に対するイメージ。浸透する日系風格とは何か

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今回は、日本ブランドのイメージの変化についてご紹介します。

 

たいへん残念なニュースがあります。中国で成功した日本企業の事例として有名なイトーヨーカ堂成都市春熙店が今年2022年いっぱいで閉店をするそうです。この春熙店は中国のイトーヨーカ堂1号店で、イトーヨーカ堂だけでなく日本企業小売チェーンの象徴的な店舗にもなっていました。

理由は業績不振ではなく、地権者との契約更改が不調に終わったためで、その他に展開する10店舗は営業を続けていきます。しかし、業績不振が理由ではないと言っても、近年のイトーヨーカ堂の業績が低迷をしていたのは紛れもない事実です。特に2019年からの落ち込みは顕著で、四川省チェーン商業協会が発表している成都市の商業施設のランキング50にも、イトーヨーカー堂双楠店が2020年に15位、2021年に18位にランキングされているだけで、その他の店舗はランキングされていません。

また、中国チェーンストア経営協会が発表している中国スーパーの100位ランキングでも、2019年のランキングの30位にイトーヨーカー堂がランキングされていますが、2020年以降はランキング外になっています。

理由は外的要因が強いようです。成都市でも次々と新しい商業施設がオープンをしてそちらに客流を取られてしまったようです。また、春熙店は成都市の中心部にあり、近年の都市計画により都市周辺が発展をし、中心部では人口が減少をし、オフィス街化が始まっています。いわば銀座にスーパーがあるような話で、この変化もイトーヨーカ堂にとっては逆風になりました。

いずれにしても、残念であり、寂しい話です。

 

イトーヨーカ堂の戦略の特徴は、店舗を拡大しないということです。成都で10店舗、北京で1店舗を展開していますが、それ以外の都市には結局展開をしませんでした。中国では1都市で成功したら、一気に他都市展開をしてスケールするのが常識なのにそれをしなかったのです。多くの中国人関係者が、これをイトーヨーカ堂戦略の誤りと見ていました。

イトーヨーカ堂がなぜスケールしない戦略を取ったのか、確かなことはわかりませんが、私はなんとなく理解できます。イトーヨーカ堂は1997年11月に成都春熙店、北京店の連続開店を予定していましたが、北京店の開店が準備の遅れにより開店ができなくなりました。そこで、北京店用に用意をしていた商品を成都店に転用をしましたが、これが大失敗でした。

北京と成都では食べるものの好みがまったく違います。北京は饅頭などの粉物文化ですが、成都四川料理の中心地です。また、北京ではモノトーンの衣料が売れると見込んでいましたが、成都の女性は原色が大好きです。

開店初日から惨憺たる有様で、売上は想定の1/3でしかなかったのです。それ以降も、成都の消費者から見れば「なんか勘違いした商品ばかりの百貨店」と見られ、3年ほどは鳴かず飛ばずというよりも、いつ撤退してもおかしくない状況が続きます。

この大失敗により、有名な幹部によるドブ板マーケティングが始まります。日本人経営層も、日本人コミュニティの中で生活をするのではなく、現地の中国人コミュニティに積極的に入っていき、中国人が食事をし、遊びに行く場所に行き、どのような消費性向を持っているのかを体感していきます。また、商圏にあるご家庭を家庭訪問し、どのような商品を買い、どのようなものを食べているのかを記録し、データを積み上げていきます。有名な話ですが、住宅から出るゴミを漁って、どのような商品を購入しているのかを調査したという話もあります。

このような努力の末、現地にあった商品構成に変えていき、そこに「日本の食品は安全」「接客が丁寧」というポジティブなイメージが加わり、成都市の中産階級の人がベストワンに選ぶ百貨店+スーパーに育っていきました。

このような地元に超密着する手法であったため、簡単に他都市に展開できなかったのだと思います。もちろん、他都市でもゼロからドブ板マーケティングをすれば成功する可能性はじゅうぶんありますが、それでは販売する商品構成が成都と大きく違ってしまい、チェーンとしてのスケールメリットが生まれません。であるなら、成都の中で深掘りをしていき、業態を多様化させる方向に進んだほうがいいのではないかと考えたのではないかと想像します。

しかし、誤算なのは、この20年の中国の変動ぶりは想像以上に速かったということです。じっくりビジネスを組み立てていくやり方だと、すべてが後手に回るようなことになったのかもしれません。

 

中国での日本企業、日本製品は非常に高く評価されています。その一方で、イトーヨーカ堂のように素晴らしい仕事をしても、少しでも緩い部分があるとライバルにやられてしまう。中国市場にはそんな厳しさがあります。

しかし、日本のイメージは高評価であるだけでに残念でなりません。もったいないという悔しい思いがします。

最ももったいないと思えるブランドが、無印良品MUJI)です。MUJIは20代、30代の男女から非常に高い評価を得ています。MUJIの簡素、自由、快適といったデザインコンセプトが、近年の若者層の感覚とうまくシンクロしているのです。そのため、中国人でのMUJIの評価は、ワンランク上の日用品です。それも高級という方向よりも、優れたライフスタイルを送る人が使うという上質感を感じています。

例えば、閑魚(シエンユー)などの不用品取引サービスを見ていると、MUJIの紙製のショッピングバッグが出品されています。知人にちょっとしたプレゼントをする時に、MUJIのバッグに入れて贈ると、センスがいい、ちょっと高級のような雰囲気が出るからだそうです。それほどMUJIのブランドは高い評価を受けています。

しかし、では実際の業績はどうなのかというと、中国のMUJIは苦境に立たされています。コロナ禍でもちろん大きな打撃を受けましたが、MUJIの低迷はコロナ禍前である2015年頃から始まり、2018年にはすでにマイナス成長に入っていました。その状態のところにコロナ禍がやってきたため、中国のMUJIは翻弄をされている状況です。

なぜ、ブランドイメージは高いのに、業績が悪い=売れないのでしょうか。非常にもったいない話です。

今回は、MUJIの話をきっかけに日本ブランドがどう受け止められているかをご紹介します。また、メイソウ、奈雪の茶、元気森林などは日本企業ではないのに、日本風要素を取り入れることで成長をしてきました。なぜ、このような企業は日本風であることを標榜するのでしょうか。このような事例を通じて、日本ブランドのイメージがどう変わってきたのかをご紹介します。

 

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vol.153:SHEINは、なぜ中国市場ではなく、米国市場で成功したのか。持続的イノベーションのお手本にすべき企業

vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか