2021年2月に、北京など5都市にAI先導区の指定がされ、AI先導区は合計8カ所になった。この8つのAI先導区の人工知能産業の経済規模は全体の80.9%となり、中国の人工知能産業は、この8つのAI先導区がある8都市、その8都市が属する4つの経済圏が中心になっていくと第1財経が報じた。
中国が進める4つの経済圏に選択的集中をする政策
2021年2月、中国工信部は、北京、天津(浜海新区)、杭州、広州、成都の5都市を国家人工知能創新応用先導区に指定をした。すでに、上海(浦東新区)、深圳、済南・青島の3都市が先導区に指定されているため、合計8都市の先導区が指定されたことになる。
中国政府は、経済圏を4つの地域に集約する政策を進めている。その4つとは、
1)長三角:上海、杭州を中心とする都市群
2)京津冀:北京、天津、河北省を中心とする都市群
3)粤港澳:広州、深圳、香港、マカオを中心とする都市群
この4つの経済圏を高速リニア鉄道で結ぶという計画も浮上してきている。国務院が公開した「国家総合立体交通網計画綱要」によると、2035年までに全国で、高速鉄道、リニア鉄道を整備し、「123交通圏」を実現するとしている。123交通圏とは、通勤は1時間、都市間は2時間、経済圏間は3時間で結ぶというものだ。
人工知能のAI先導区は、この4つの経済圏に設置されたことになる。
▲中国では、2035年までに全国に高速鉄道(中国版新幹線)を行き渡らせ、4つの経済圏をリニア鉄道で3時間で結ぶ計画を立てている。
8つのAI先導区の産業規模シェアは80.9%
「国家人工智能創新応用先導区発展特色」(賽迪顧問)によると、この8先導区のAI産業規模は、中国全体のAI産業の80.9%を占めている。また、AI関連企業数も83.2%になる。つまり、中国の人工知能開発は、この8都市が中心となる。
しかし、人工知能関連の学部がある大学数で見ると、先導区は決して多くない。特に目立つのが深圳の少なさだ。
現在は、全国の大学で人工知能を学んだ学生が、先導区に職を求めるという構造になっている。
▲各AI先導区の産業規模割合。8先導区で80.9%となり、先導区以外では19.1%しかない。中国の人工知能産業はこの8つの先導区が中心となっている。
▲各先導区の人工知能関連の講座がある大学数割合では、先導区以外の割合が大きい。人材育成は全国で行い、それを8つの先導区が集める体制になっている。
各先導区は特色を出すことで競争
8つの先導区は、まったく同じではなく、それぞれが競争をして特色を出そうとしている。済南・青島、成都の2都市は、電子部品産業や研究開発の基礎が他都市に比べると弱いため、応用アプリケーションの開発に特化をしている。また、京津冀の北京、天津は基礎研究に力を入れている。
さらに、各先導区の焦点領域にも特色がある。目立つのは深圳のブロックチェーン、済南・青島の軌道交通、広州のハードウェアなどだ。
この8つの先導区の指定により、中国の人工知能産業の体制が定まった。すでに、人工知能産業の成長には目を見張るものがあるが、今後、その成長が加速をすることになる。
▲各先導区は、それまでの産業基礎によって、特色がある。目立つのは、北京、天津の基礎研究割合の高さと、済南・青島、成都の応用開発の高さだ。
▲各先導区は、焦点領域も異なっている。目立つのは、深圳のブロックチェーン、済南・青島の軌道交通、天津の知能港湾、広州のIoT、インフラなどだ。