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奇妙な流行ーークラウド自習室。自分を中継する理由は「孤独に押し潰れそうになる」

大学生の間で奇妙な習慣が流行している。クラウド自習室だ。ただ自分が自習する姿を共有し合うだけで話をするわけではない。コロナ禍で孤独を強いられた大学生たちが、自分の精神を守るためにしている。この他にも、誰かとつながりたいという理由で、自分の生活を中継する人が増えていると銭江晩報・小時新聞が報じた。

 

奇妙な流行「クラウド自習室」

中国の大学生の間で不思議な習慣が静かに広がっている。クラウド自習室だ。アリババの釘釘(ディンディン)やテンセントミーティングなどのビデオ会議システムは、学生の間でも身近なツールになっている。これを利用して、場合によっては数万人規模の学生がひとつの会議室に入り、自習をするというものだ。

誰もおしゃべりをしたり、発言をしたりする人はいない。ただ静かにそれぞれが自習をしている。画面では膨大な数の学生が自習をしている姿が映し出されるだけだ。その奇妙なクラウド自習室が広がっている。

クラウド自習室は、テンセントミーティングを使って行い、その画面はビリビリでライブ配信される。話をする人はいない。みな静かに勉強している。

 

ある大学生が始めたクラウド自習室

このクラウド自習室を2019年に始めた星伊さんは、当初、自宅などで、学習系のライブ配信を聴きながら自習をしていた。しかし、ライブ配信の内容と自分の自習の内容が異なるため、集中ができない。しかし、ライブ配信を切ってしまうと、孤独に自習をしていることに心が潰されそうになる。

だったら、同じように自習をしている人を集めて、ビデオ会議システムを使って、みんなで一緒に自習をすればいいのではないかと思いついた。そこで、ビリビリを使って参加者を募集し、テンセントミーティングを使ってみんなで自習をし、その様子をビリビリのライブ配信で流すようにした。

一応のルールはある。話してはいけないなど自習室と同じルールを設定した。さらに、時間割をつくり、自習時間と休み時間を設けるようにした。これが受け、現在、星伊さんのビリビリのファンは10万人を超えている。自習は一人でやるものだけど、寂しくならないからだ。

▲星伊さんが始めたクラウド自習室。話をするわけではなく、黙々と自習するだけだが、誰かと一緒に自習することが安心できるという。

 

誰かとつながりたい。自分を中継する人々

星伊さんは、このクラウド自習室から収入を得ていない。利用料を取ることもしないし、投げ銭をしてもらうこともしない。自分が寂しいからクラウド自習室をつくり、それが大規模になってきてしまった。

近年、このような不思議なライブ配信が増えている。映画やテレビドラマなどで、権利者がライブ配信で流すことを許可しているコンテンツがある。これをただ放映して、フレームウィンドウの中に配信者の顔が写っているが、放送実況のように何かを解説するわけではない。ただ、黙って見ている。

もっと極端なのは、一人で食事をしているライブ配信だ。ただ、黙って食事をしているだけで、視聴者に何かを語りかけるわけではない。自分の生活の一部をライブ配信しているのだ。それでも数百名の視聴者がついているが、視聴者側も一緒に食事をしている(と思われる)。投げ銭などが目的ではなく、一人で映画を見たり、一人で食事をするのは寂しいから、誰かと一緒に感覚を得たい。そういう理由から、このようなライブ配信が行われている。

このようなライブ配信では、音声やチャットを使ったコミュニケーションもきわめてまれだ。それでも顔を見合わせることで、安心感を得ている。それだけ孤独感が強くなっているということだ。