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中高生の消費、10の意外。意外にお金を持っている05后のお金事情

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今回は、05后=中高生の消費事情をご紹介します。

 

どの国にも世代論というものがあります。日本では団塊の世代ゆとり世代が有名で、Wikipediaによると、ゆとり世代は「堅実で安定した生活を求める傾向があり、流行に左右されず、無駄がなく自分にここちいいもの、プライドよりも実質性のあるものを選ぶという消費スタイルをもっている」だということです。

同じ世代であっても、考え方や性格の異なる人がたくさんいるわけですから、このような世代論がどこまで合っているかはともかく、消費や文化の予測を立てていく時の仮説としては使うことができます。

中国でもこのような世代論はよく語られますが、最も古くは「80后」(バーリンホウ)が注目されました。80年代生まれという意味で、現在の30代にあたります。この世代が注目をされたのは、中国の改革開放が進み豊かになり始めた頃に生まれたため、貧しさを知らない世代だからです。伝統的な中国の価値観にとらわれず、自由な発想ができる。古い中国を変えてくれる世代という評価です。

もちろん、マイナス評価もあって、子ども時代は「小皇帝」と呼ばれました。一人っ子政策が行われていた中国では、80后は一人っ子であることが多く、子どもを大事にする中国家庭でわがまま放題に育てられ、基本的なルールも守れないという評価です。

 

その次によくメディアで取り上げられたのがZ世代です。これは中国ではなく、米国で使われるようになった分類で、X世代が1965ー1980年生まれの世代、Y世代が1981-1995年生まれの世代、Z世代が1996年以降生まれの世代です(年号については、資料により多少の違いがあります)。

このZ世代という言葉が中国でもよく使われるようになったのには理由があります。XYZ世代を日常のテクノロジーに当てはめると、X世代が物心がついた時に使ったのはアナログ携帯電話やネット接続のないパソコンでした。デジタルパイオニア世代とも呼ばれます。Y世代が物心がついた時は、ネット接続できるパソコンとデジタル携帯電話でした。デジタルネイティブ世代とも呼ばれます。Z世代はもはやパソコンを使わず、スマートフォンタブレットを使います。ネット接続をしていることなど当たり前すぎて気にもしてません。モバイルネイティブ世代とも呼ばれます。

もうひとつの理由が、中国特有の人口動態です。次の人口ピラミッドを見てください。

▲中国の人口ピラミッド。50歳前後と30代前半の2つのピークがある。population.netより引用

 

Z世代は現在の20代以下ですが、年齢別人口が上の世代と比べて圧倒的に少ないのです。中国は40代後半と50代前半のボリュームが大きく、この人口=消費者が多いことが中国の経済を発展させてきました。しかも、その下からやはり人口が多い80后が大人になって社会参加をして貴重な労働力となりました。これが中国の経済発展を支えた人口ボーナスです。

しかし、Z世代になると人口は大きく減り、働き手もいなくなります。働き手はイコール消費者ですから、消費の総量が大きく減少することは避けられません。ですから、Z世代の消費動向が気になるのです。

Z世代を象徴する言葉は「宅・仏・喪」です。自宅で過ごし、仏のように悟り、モノを欲しがらず、喪(無気力)という意味です。実際、自動車などは販売台数が減少をしています。EVが売れていると言っても、燃料車の減少分を補うほどにはまだなっていません。これもスマホを使いたがるZ世代が、車を運転するより、スマホを見ていられる地下鉄やタクシーを好み、そもそも自宅から外に出ないせいだと言われたりします。

詳しくは、「vol.011:人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる」「vol.049:自動車に関心を示し始めたZ世代」などで、Z世代が燃料車からEVにシフトをしていることをご紹介しています。

 

Z世代は95后とも呼ばれますが、最近話題にのぼることが多いのが00后(リンリンホウ、2000年代生まれ)です。Z世代の後半、あるいは次の世代ですが、注目を浴びる理由は00后が大学を卒業し、社会に参加をする年齢になったということです。

しかも、00后の大学生活は、かつてない経験となりました。コロナ禍により、オンライン講義が多くなり、人との接触が極端に少なくなったのです。

これを象徴するような習慣がクラウド自習室です。アリババの釘釘(ディンディン)、テンセントミーティングなどのビデオ会議アプリがコロナ禍によって急速に広まりました。日本で使われるZoomなどと似た機能のサービスです。これを使って、小学校から大学までオンライン授業が行われるようになりました。

この中で生まれたのがクラウド自習室です。自分の部屋で自習をする時に、ビデオ会議アプリを起動して、クラウド自習室に入ります。そこでは多くの大学生が自習をしている姿が映し出されています。みな話をしたりはしません。静かに自習をしています。ただ、時間割が定められていて、1時間につき5分程度の休み時間があります。このクラウド自習室の様子をビリビリでライブ配信し、多くの大学生が参加をしています。

 

https://www.bilibili.com/video/BV1NY4y1a7rM/?spm_id_from=333.999.0.0

▲奇妙な流行であるクラウド自習室。みな黙々と自習をしている。孤独に耐えきれなくなって映像だけでもつながっていたという思いから始まった。

 

このクラウド自習室に参加をしても、勉強を教えてもらうわけでも、誰かとおしゃべりを楽しむわけでもありません。黙々と自習をしています。しかし、みな孤独感に押しつぶされそうになっているのです。将来どうなるかがわからない中で、自室で自習をして大学の課題をこなしてきました。これで社会に出て、本当にやっていけるのかどうか途方に暮れている人は少なくありません。

 

国家統計局は、2022年上半期の16歳から24歳の失業率が、19.3%という過去最悪の数値になったことを発表しました。国家統計局のスポークスマンは、これは摩擦的失業であり、短期間に解消されるとコメントしましたが、専門家からは反論の声もあがっています。

失業はその内容により3つに分類されます。ひとつは需要不足失業で、不景気から生産が落ち、労働者の需要がなくなるというものです。企業は賃金を下げ、リストラを行なっていきます。経済が回復しないと解消が難しい失業です。

2つ目が構造的失業です。企業が求める労働者と、労働者が求める職のミスマッチによるものです。例えば、製造業は人が余りリストラをしているのに、介護職では人が足りないというようなケースです。

3つ目が問題になっている摩擦的失業で、主に若年層が転職をするために、転職活動や技能学習のために一時的に離職をしているというものです。よりいい職業に就くための準備期間であるために、時間とともに自然に解消されていきます。

国家統計局は、この高い失業率は摩擦的失業によるもので、短期間で解消されていくとしていました。全世代の平均失業率は、5.5%とコロナ禍の影響があるにも関わらず、比較的低く推移をしている。若年層だけ突出して失業率が高くなっているため、摩擦的失業によるものだと考えられるというロジックです。

しかし、中国政策科学研究会の経済政策委員会の徐洪副主任などは、摩擦的失業ではなく、新卒生の00后世代に構造的失業が起きていると見るべきだと主張をしています。つまり、大卒生は高い報酬や条件の職を希望するが、そのような求人は多くない。報酬や条件が低い職ならあるが、そのような職業につきたくないという報酬と条件のミスマッチによる構造的失業だという主張です。大卒生たちは、条件の悪い職業についてしまうことを避け、より自分のスキルを高めてなんとか希望する職業に就こうとしているため、表面的な現象としては摩擦的失業に見えるが、その根底にあるのは構造的失業なのだ。少なくとも構造的失業と摩擦的失業の複合状態であると見るべきだと主張をしています。

この議論は、一見、学者の議論に見えますが、摩擦的失業は短期に解消される、構造的失業は社会構造を変革しない限りいつまでも続く、つまり長期化をすることになるという点が大きなポイントです。徐洪副主任の主張通り、若年層の構造的失業であり、それを政府が摩擦的失業と考え社会構造の変革政策を打ち出さない状態が続くと、若年層が就職できない社会が長く続くことになります。

どちらの主張が正しいのかははっきりとはわかりませんが、今後の中国社会の弱点になる可能性を秘めた問題になっています。

 

00后とともに話題にのぼるようになっているが05后(2005年以降生まれ)です。現在の中高生にあたります。05后も、友だちや恋人と出会う対面での出会いが重要な時期にコロナ禍に見舞われました。00后は人生を決める大事な時期に孤独を強いられることになり、05后は青春を謳歌する大事な時期に孤独を強いられることになりました。

その中高生たちの日常はどのようなものになっているでしょうか。それを明らかにしてくれるのが「05后消費傾向洞察報告」(PCG)です。この報告書を読んで、個人的にかなり驚きました。私が知っている(というより勝手に想像していた)中国の中高生の姿とは相当にかけ離れているからです。

私のイメージの中の中国の中高生というのは、お小遣いの額も少なく、アルバイトもできず、楽しみといえば学校帰りに蜜雪氷城に友だちと行って3元のレモンジュースを飲みながらおしゃべりをし、制服であるジャージをいつも着て、欲しいものと言えばOPPOスマートフォンというイメージなのです。

この報告書を読んでからある中国の方に、自分の中にある中国の高校生のイメージを伝えたところ大笑いされました。それは10年以上前の姿だというのです。その方に言われて気がついたのですが、中国でもアジア圏でもヒットした「駆け抜けろ1996」という青春ドラマがあり、その中に出てくる高校生のイメージだと言われました。このドラマのような高校生が今でもいると勝手に思い込んでいましたが、このドラマは題名からもわかるように、1996年頃の高校生を描いたもので、今、中年になった人が「あの頃の自分もそうだった」と懐かしみながら見るという趣向なのです。現代の人から「それは古すぎる」と笑われるのも当たり前です。

このメルマガでは、「中国はこうだと思い込んでいる方が多いですが、ほんとうはこうなんです」と偉そうに語っておきながら、自分もうっかりその罠にはまっていました。常に、新しい情報を仕入れて、自分の考え方やイメージをアップデートし続けないと、中国のことは理解できないということを再認識しました。

どこが驚いたかというと、意外にも自由になるお金を持っていることと、SNSが情報の中心となり、消費傾向が成人とあまり変わらなくなっているということです。

今回は、05后=中高生の消費生活に関する「10の意外」についてご紹介します。

 

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今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.144:クーポン設計のロジックと、ウーラマの行動経済学を活かしたユニークなキャンペーン

vol.145:Tmallがわずか15ヶ月で香港から撤退。アリババも通用しなかった香港の買い物天国ぶり

vol.146:WeChat以前の中国SNSの興亡史。WeChatはなぜここまで強いのか?