2022年5月20日、TME Liveでジェイ・チョウのライブが配信された。しかし、現在のライブではなく、2013年のライブ映像。それを2000万人以上が視聴をした。なぜ、10年前のライブに人気が集まったのかが大きな話題になっていると証券時報が報じた。
5月20日は恋人たちの日
2022年5月20日は中国の若者にとって特別な日だ。520が中国語の発音で「wu er ling」となり、「我愛你」(愛している。wo ai ni)と音が似ていることから、ポケベル時代から「520」は愛しているの符号として使われ、5月20日はバレンタインデーに準じる日になっている。ネットバレンタインデーとも呼ばれる。2021年に湖南省の平江県の役所が、5月20日には離婚の申請を受け付けないと宣言して話題にもなった。夫婦や恋人たちが、デートをしたり、自宅でゆっくりくつろぐ日になっている。
ジェイ・チョウのライブに視聴者2000万人
この520に、テンセント傘下のテンセントミュージックエンターテイメント(TME)が運営するTME Liveが、人気アーティストの周傑倫(ジョウ・ジエルン、ジェイ・チョウ)のライブを配信して、リアルタイムで2257.7万人が見るという人気となった。
配信されたのは10年前のライブ映像
ジェイ・チョウは、台湾出身のアーティストで、2010年前後にヒット曲を連発し、台湾や中国、さらにはアジア圏で人気アーティストになっている。リアタイ世代は30代から40代だ。
放映されたのは、現在のライブではなく、2013年のコンサート「摩天輪」(観覧車)。ジェイ・チョウの人気がピークの時のコンサートで、2013年では最高のライブとも言われている。
ジェイ・チョウは今でも偉大なアーティストとして尊敬されているが、今話題の旬の人というわけではない。その人の昔のライブ映像を放映して、それが大人気となったことが話題になっている。
10年前のライブ映像に人気の理由
このライブは、TME Liveだけでなく、テンセントミュージック、WeChatチャネルズ、QQ音楽などでも同時配信された。この成功により、TMEのナスダック市場での株価はライブが終わる頃に5%上昇した。
なぜ、昔のライブ映像に人気が集まったのか。ひとつの理由は多くの人がライブに飢えていたことだ。コロナ禍により、ライブの開催はほとんど行われていない。そのため、TME Liveに人気が集まっている。ウエストライフ、張国栄、五月天、崔健などのライブがいずれも視聴者1000万人を超えている。
また、520は仕事を早く終えて、夫婦や恋人で自宅でくつろぐという人が多い。これによりライブを観るという行動がうまくはまった。
さらに、音楽ライブを鑑賞する人の年齢層が、20代ではなく、30代から40代に移っているということがある。若い世代は、音楽を全面に打ち出したバンドやアーティストの楽曲ではなく、アニメ音楽やアイドルなど、コンテンツやパフォーマンスと組み合わされた音楽を好むようになっている。
そのため、ジェイ・チョウのライブの観客も30代、40代が中心になっているのではないかと推定されている。ネットで最もバズった言葉は「ジェイ・チョウの腹筋は戻らない。私の青春も戻らない」というフレーズだった。
無料でライブを配信しても利益が出る
さらに、TME Liveが原則として無料で視聴できることが大きい。無料でライブを公開しても、TMEはじゅうぶんに利益を出せる。
ひとつはスポンサーだ。このジェイ・チョウのライブにはペプシコーラがスポンサーとなっている。
さらに、配信に使うプラットフォームの利用者数が増加をする。WeChatの月間アクティブユーザー数(MAU)はすでに12.883億人もあり、中国人の成人のほぼすべての人が使っている状態だが、それでもこのようなライブを配信することで、MAUを伸ばすことができる。
また、音楽配信サービス「テンセントミュージック」は、利用者数、営業収入ともに下降気味だった。2022年Q1の営業収入は66.4億元で前年比-15.1%、営業利益は6.09億元で-34.23%になっている。
音楽サブスク全体の加入者は31.7%増えて8020万人となり好調だが、有料ユーザー1人あたりの収益(ARPPU)は前年同時期の9.3元から8.3元に低下をしている。
現在の音楽は、ショートムービーが起点になって、音楽サブスクの利用が活発化するという構造になっている。テンセントはテンセントミュージックの他にも、QQ音楽、酷狗音楽、全民K歌などという音楽サブスクサービスを持っている。ライブを配信することで、このようなサービスの利用が進む。
今後も、無料の大型ライブが配信されることが期待され、TME Liveに注目が集まっている。