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生花デリバリーが成長中。なじみのある生花店の商品が購入できることが魅力に

フードデリバリー「ウーラマ」が生花の配達を始めており、好評を得てている。なじみのある生花店の商品を配達してもらえるからだ。部屋に生花を飾る習慣も広がり、生花が有望な商品になってきていると中国花卉報が報じた。

 

贈答需要に加えて鑑賞需要が増える生花

デリバリー、新小売スーパーで、今最も伸びている商品が生花だ。アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)、デリバリーサービス「ウーラマ」では、最も成長率が高い商品となり、両社は力を入れている。

生花のひとつの市場は花籠、花束などのプレゼント需要だ。以前の中国では、生花は大きな都市の市場にでも行かないと手に入れることができない希少な商品で、それだけに花をプレゼントすることに意味があった。生活が豊かになり、生花が簡単に手に入るようになっても、プレゼントとしての花の価値は高いままで、現在でも広く贈られている。夫婦の記念日などに花を贈るのは珍しいことではない。プレゼント需要は現在でも伸び続け、しかも単価も上がる傾向にあり、生花業界としては利益が望める優秀な商品になっている。

さらに、生花が手に入りやすくなって以降伸びているのが個人需要だ。生活の中で、花を飾るという習慣が広がりつつある。こちらはコストパフォーマンス重視だが、利用が広がり続けている。

▲大都市には生花市場があり、巨大な建物の中に生花店、卸店が軒を並べている。新鮮な生花を買うには、このような生花市場に足を運ぶ必要があった。

 

知っている花屋さんからお届けがポイント

ウーラマの生花デリバリーが人気になっている理由は、その契約店舗の多さだ。伝統的な街中の生花店からショッピングモールの生花店、アレンジメント店など、契約店舗は数十万店にのぼる。

ウーラマが仕入れた生花を販売するのではなく、自分がよく利用する店舗の生花を届けてくれる。電話などでアレンジメントを依頼し、ウーラマで配達してもらうということも可能だ。パーティーなどで使う場合は、自宅に配送してもらうのではなく、直接会場に時間をして届けてもらえる。

全国96%の地域をカバーし、1時間で届けてもらえることから、利用者はすでに累積1000万人を超え、人気店ではウーラマ経由の注文で1000件を超えることもあるという。

デリバリーに対応することで、販路が最も拡大されたのが生花業ではないかと言われることもある。

▲デリバリー配達員に商品をわたす北京市内の生花店。デリバリーでは、消費者が知っている店の商品を届けてくれるため、実体店舗のビジネスを拡大することにつながっている。

 

生花はモノではなくサービスが商品

ウーラマの生花デリバリー「鮮花緑植」の責任者、王倩氏は中国花卉報の取材に応えた。「生花の購入は、B2C型ECから、ウーラマのようなO2Oに移り始めています。短時間の市内配送であるため、鮮度が保たれること、配送時間を細かく指定できることが歓迎されています」。

生花も商品だが、通常の商品とは大きく異なることがある。それは実用価値がほとんどないに等しいということだ。どんな生花でも1週間もすれば枯れてしまい、捨てるしかなくなる。その短い間に、食べて栄養になるわけでもなく、何かの役に立つわけでもない。それでアレンジメントなどはちょっとした家電製品ぐらいの価格になる。

しかし、それで贈った相手が喜んでくれ、互いの関係がより深まったり、生活の中に花を置いて癒される効果は何物にも代え難い。家電製品のような実用価値はほとんどないものの、人の気持ちに与える価値はとても高いという特殊な商品だ。

王倩氏は言う。「生花の本質はサービスを売っているのです」。そのため、鮮花緑植も鮮度の問題や配送時間の遅れなど、改善しなければならないことはまだまだ多いという。パーティーで使う生花が、指定時間に間に合わなければ、いかに素敵な花束であっても価値はゼロになってしまうのだ。

ウーラマでは、生花店向けのスクールを設置し、デリバリーに対応する生花店のサービスレベルを上げるための活動を行い、一定レベルのサービス品質を達成した生花店には「安心花坊」の認定をし、それを利用者に示すことで、生花店のサービス品質をあげ、利用者に安心をして使ってもらえる工夫をしている。

▲新小売スーパー「フーマフレッシュ」内の生花コーナー「フーマガーデン」。店頭で購入することも配達をしてもらうこともできる。売上比では大きくはないものの、成長している商品だ。

 

実体店舗のビジネスを支援するデリバリー

ウーラマは本来は飲食店の食事を配達するフードデリバリーだが、現在では薬品、モバイルバッテリー、映画やテーマパークのチケット、鉄道、飛行機のチケットなどあらゆるものを自宅だけでなく、オフィスなど指定した地点に届けてくれるようになっている。

重要なのは、商品をウーラマが販売するのではなく、店舗で販売されている商品をウーラマが届けるという点だ。そのため、生花でも「あの花屋の花」を買うことができるし、飲食でも「あのレストランの料理」を買うことができる。ECの拡大により、実店舗のビジネスは縮小する一方だが、ウーラマのようなO2Oサービスにより、生き延びることができているだけでなく、ビジネスを拡大している店舗も多くなっている。

▲デリバリー配達員に商品をわたす北京市内の生花店。デリバリーでは、消費者が知っている店の商品を届けてくれるため、実体店舗のビジネスを拡大することにつながっている。