コンビニ店舗数2位の美宜佳は2.6万店を中国に展開し、地方都市にまで浸透している。しかし、やみくもに店舗を広げているわけではなく、デリバリーなどの先進的なサービスに素早く対応をすることで顧客を惹きつけていると瀚海観察が報じた。
日経コンビニとは規模感が桁違いの中国系コンビニ
日本人が中国に行くと、街中にローソンやファミリーマート、セブンイレブンといった日系コンビニをよく見かける。なじみのある看板を見かけて、安心をして買い物をしている人も多いはずだ。
しかし、日系コンビニは中国ではマイナーな存在だ。店舗数ベースでのトップコンビニは、「易捷」(イージエ)で2.8万店舗。中国石化が運営をし、ガソリンスタンドを中心に出店をしている。易捷はガソリンスタンドの売店としての役割が大きい。その次は美宜佳(メイイージャー)で2.6万店舗。これは日系コンビニトップのローソン(4466店)の6倍近くなる。
店舗数だけではない。美宜佳の2021年の営業収入は500億元に達し、これはローソン、ファミリーマートの3倍、セブンイレブンの4倍になる。日系コンビニは中国に浸透しているように見えて、国内系コンビニの規模から比べるとまだまだ小さな存在だ。
躍進の理由は新サービスへの迅速な対応
なぜ、ここまで差がついているのか。日系コンビニは大都市にしか出店をしていない。しかし、美宜佳などの国内系コンビニは地方にまで満遍なく出店をしている。これにより、物流と情報の拠点として機能し、利用が進んでいるからだ。さらに、美宜佳は新しいサービスへの対応が早く、先進的なコンビニとして認知をされている。
美宜佳は1990年、中国の第1世代のスーパーとして東莞市からスタートした。1997年にコンビニに業態転換をし、それ以来成長を続けている。成長の鍵は、新サービスへの迅速な対応だった。
アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)が2003年に登場して人気となり、ECによる影響が実体店舗にも及ぶようになると、2007年、タオバオに出品をし、2010年には自社のECサイト「美宜佳生活館」を立ち上げている。
この頃はまだ1000店舗規模であり、スマホ決済も普及をしていないため、オンライン決済手段も銀聯しかなく、オンライン決済手段を持たない人も多かった。そこで、ECで購入したものを美宜佳の店舗に配送し、そこで現金で支払うという店舗受取の仕組みも提供した。
さらに、2017年という早い時期にデリバリーにも対応を始め、2022年4月の段階で、オンライン売上は月に2億元を超えるようになり、デリバリー注文も月に390万件を超えるようになっている。
このような先進サービスへの対応を迅速に進めたことにより、2017年には1万店舗を突破した。
地方に展開しながらも最先端コンビニの美宜佳
2017年以降は「美宜佳のデリバリーは、空間を超えて便利な生活を提供する」を合言葉にデリバリー業務に力を入れた。自社の配達スタッフと、美団、ウーラマのデリバリーサービスを活用して、コンビニの商品が30分で自宅に届く体制を整えた。
他のコンビニも遅れてデリバリーに対応をしているが、対応店舗は限定されている。美宜佳はデリバリーサービスを全国200都市、2万店以上にまで広げている。日系コンビニは大都市にしか展開せず、地方にはあまり進出をしていない。それは購買力や商圏の人口数などの問題から採算性を考えるからだが、もし、地方に進出した場合は、美宜佳という強いライバルがいることが大きな壁になっている。美宜佳は、最先端のサービスを大都市だけでなく、地方でも行っている。地方の住人にしてみれば、すでに最先端のコンビニがあるのに、なぜ新参者の日系コンビニを利用しなくてはならないのかと考えることだろう。
地方市場進出に存在する高い壁
中国でビジネスを展開する外資系小売チェーンでは、コロナ禍による痛手を取り返すために、地方市場=下沈市場への進出が大きなテーマになってきている。しかし、コンビニの場合は、下沈市場には美宜佳という強力なチェーンがすでに地位を確保してしまっている。コンビニが中国市場でさらに成功するには、美宜佳という高い壁を乗り越える必要がある。