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今回は、ネット広告の失速ついてご紹介します。
中国のネット広告大手は、いわゆるBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の御三家と、中国版TikTok「抖音」(ドウイン)を運営するバイトダンスの合計4社が大手になります。バイトダンスの広告事業は堅調ですが、BAT3社の2021年第三四半期の広告収入の前年比がいずれも大きく下落をしました。
これが一時的なものであれば、景気がよくなれば回復をするので、大きな問題とは言えませんが、専門家なども口にするようになっているのが、ネット広告不要論です。つまり、もはやネット広告というのは時代の役割を終えたのであって、縮小していくのは自然なこと、それが始まったというだけにすぎないという見方です。もちろん、ネット広告のすべてが不要になるということはないにしても、広告収入は大幅に減少することになるというものです。
いったい広告不要論は本当なのでしょうか。ネット広告がなくなるということは、ネットを活用してビジネスをする人たちはどこで自分たちや商品の存在を消費者に伝えればいいのでしょうか。
まず、どの程度、広告収入が下落をしたのかを確認しておきましょう。現在各社ともまだ2021年の年度報告書が公開されていないため、2021年第3四半期の財務データが最新のものとなります。また、バイトダンスは非上場であるため、財務報告書は一般には公開していません。
昨年2021年第1四半期は、BAT3社の広告収入の前年比は、それぞれ27.0%、105.8%、23.2%という素晴らしい数字が並びました。比較対象になっている2020年の1月から3月が、コロナ禍によるロックダウン、外出自粛の時期にあたっているため、数字が改善するのは当然としても、予想よりもいい数字となりました。特にアリババの105.8%増というのは驚異的な数字で、コロナ禍から力強く復活をしたことを印象づけました。
ところが、2021年第2四半期に異変が起きます。テンセントと百度は23.1%、17.8%と好調さを維持しましたが、アリババが105.8%からいきなり13.7%に下落をしました。これを第1四半期の数字ができすぎで、広告需要を先食いしてしまった反動だといういう人もいましたが、何やら不穏が空気が流れ始めました。
そして、第3四半期に、BAT各社はそれぞれ4.2%、3.4%、5.4%と、一桁にまで落ち込んでしまったのです。成長はしているものの、非常に厳しい数字です。第3四半期の中国の実質GDPの伸び率は4.9%という低いものになりましたが、アリババと百度はこのGDP伸び率も下回っています。つまり、実質的には縮小していることになるのです。
中国のネット広告の分類は、その歴史的経緯から日本とは少し違っています。まず圧倒的に多いのがEC広告です。これはECで販売をする小売業者が出すバナー広告を中心としたディスプレイ広告で、いちばん大きいのは淘宝網(タオバオ)の中に表示される広告です。タオバオで商品を販売する業者は、アリババ(タオバオ運営)に出稿料を支払って、タオバオのトップページなどに広告を出します。また、他のサイトにもバナー広告が配信されます。消費者はこのバナー広告をタップすると、タオバオの中の商品詳細ページに飛ぶということになります。アリババの広告事業の収入の多くは、このEC広告です。
次に多いのが動画広告です。動画配信サイトで、動画を再生する前や途中に挟まれる動画広告です。YouTubeの広告もこの動画広告です。テンセントはテンセントビデオという大きな動画配信サイトを運営していて、ここから広告収入を得ています。
また、中国の統計では動画広告に含められてしまい、個人的には分離をすべきなのではないかと思っていますが、ショートムービー広告もあります。TikTokなどでショートムービーがどんどん配信する中に、広告ショートムービーが混ざっています。バイトダンスがこのショートムービー広告で収入を得ています。なぜ、分離すべきだと考えているのかは、後ほど説明します。
次に多いのが検索広告です。百度などで検索をすると、その検索キーワードに関連した広告が検索結果に挟まるように表示されます。検索結果リストの中に表示されることからリスティング広告などとも呼ばれます。百度がこの検索広告から収入を得ています。
その次がSNS広告です。SNSのトップページなどに表示される広告で、テンセントがこのSNS広告から収入を得ています。
さらに、ニュース広告もあります。ニュースメディアなどの運営が自社で広告を取り、トップページや記事ページに表示するバナー広告です。メディア運営が各社独自に行なっています。
さらに、中国独特のものとして分類広告というものもあります。これは「結婚相手募集」や「期間限定アルバイト募集」などの短い文を大量に並べたもので、出稿料が格安であることから中小企業や個人商店、個人が利用します。日本の昔の新聞に掲載されていた三行広告の感覚です。
ではなぜ急速に広告収入が失速をしたのでしょうか。テンセントは、2021年第3四半期の業績発表文書でこう説明をしています。「特に教育、保険、ゲームなどの業界の広告需要が弱かったが、生活必需品およびネットサービスなどの広告需要は堅調だった」。
つまり、教育、保健、ゲームという3業種の広告需要が弱くなったため、広告収入が伸び悩んだと言っているのです。これは一見最もな理由に見えますが、つじつまが合いません。後ほど、どこのつじつまが合わないのかを説明します。
また、GDPの伸び率が低下をし、さらには社会消費品小売総額の統計が悪化をしていることで、広告の失速を説明しているメディアもあります。社会消費小売総額は、日本の個人消費に相当するもので、市中での経済を反映しています。広告は景気のバロメーターと呼ばれる通りのことが起きているのだと説明されています。
しかし、そうなのだとすると、広告の低迷は長期化をすることになります。GDPや社会消費品小売総額は長期トレンド指標であって、ひと月やふた月で急にあがったり下がったりするものではないからです。
つまり、
テンセントの説明が正しい→広告の失速は短期的
景気の低迷が反映されている説→広告の失速は長期的
広告不要論→広告は衰退をしていく
となります。
いったい、どの見方が正しいのでしょうか。
今回は、テンセントの説明はどこがおかしいのかを説明し、次に社会消費品小売総額との関係を説明します。そして、一部の人たちが主張をし始めている「ネット広告不要論」とはどういう理屈なのかをご紹介します。
今回は、ネット広告の失速についてご紹介します。
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