中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

漢字しか登場しないアクションRPG「文字遊戯」が中国、台湾でヒット。Steamでのセールスも好調

漢字しか登場しないアクションRPG「文字遊戯」が中国、台湾などでヒットゲームになっている。漢字の知識を使ったパズル要素がヒットの要因だ。このゲームを開発したのは台湾の「チーム9」。今後も文字遊戯の新作を発表していくと3DM遊戯網が報じた。

 

漢字しか登場しないアクションRPG「文字遊戯」

台湾発のゲーム「文字遊戯」(ワードゲーム)が漢字文化圏でじわじわと人気になっている。

このゲームにグラフィックは一切使われていない。使われているのは、漢字キャラクターのみで、コンピューターが生まれた黎明期を彷彿とさせる画面だ。しかし、これでアクションRPGのようなゲームなのだ。「我」という文字が自分のキャラクターで、これを矢印キーで動かして冒険をする。

f:id:tamakino:20220304095418p:plain

▲中心にあるのはナレーションの文章。これを「我」を移動して、文字をずらすと、縦読みで「勇者はお姫様を救え」というクエストが現れる。

f:id:tamakino:20220304095411p:plain

▲文字遊戯の画面。ダンジョンにいる「我」と「公主」(お姫様)がキャラクターで、これを矢印キーで動かしてプレイする。画面はすべてをクリアしたエンディング画面。何とも地味だが、プレイした人は感動をする。


www.youtube.com

▲文字遊戯のゲーム実況動画。これを見れば、どんなゲームかがわかる。簡単ではないかもしれないが、日本人でもプレイできそうだ。

 

漢字ならではアクションパズル要素

人気の理由は漢字を使ったパズル要素だ。例えば、ダンジョンに入ると真っ暗で何も見えない。ただ「灯りは点灯していない」という文字が表示されているだけ。そこでプレイヤーは「我」を移動させて、「不」の文字にぶつける。これで「不」の文字が消え、「灯りは点灯した」の意味になる。すると、灯りが点灯してダンジョンの様子が見えるようになる。また、次の画面に進むには「門」という文字を発見して、ワープをする必要がある。

面白いのは、マップをつくっている漢字と、ナレーションや説明として表示される文字に区別がなく、ナレーションの漢字も道具として利用ができる点だ。

f:id:tamakino:20220304095423p:plain

▲キャラクターである「我」を移動させて、「灯不亮了」(灯は消えた)の「不」の文字を取り除くと、「灯亮了」(灯はついた)となり、ダンジョンに灯りが灯る。このような漢字パズル要素が人気の要因になっている。

 

漢字の知識がないと進められないRPG

河が目の前に横たわっている。河という文字が並んで河が表現されている。主人公の「我」はなにか道具がないと河を渡ることができない。しかし、周りを見渡しても「鳥」しかいない。そこで、「我」を「鳥」にぶつけてみると、合体をして「鵝」(ガチョウ)に変身する。これで飛んで、河を渡るというものだ。

f:id:tamakino:20220304095405g:plain

▲河を渡らなければならないが、使えるのが鳥しかいない。我を移動させて鳥にぶつけると合体をして「鵝」(ガチョウ)に変身することで河を渡る。

 

漢字圏のみながらSteamでも好調なセールス

この「文字遊戯」を開発したのは台湾の「チーム9」。現在のところ、文字遊戯を2作発表しているだけだが、2021年の台北ゲームショーのベストイノベーション賞の受賞を皮切りに、数々の賞を受賞している。

漢字圏である中国、台湾が主な市場で、海外にはほとんど売れないという不利な状況ながら、Steamでのセールスも好調だという。

f:id:tamakino:20220304095421j:plain

台北ゲームショーで、ベストイノベーション賞を受賞したチーム9のメンバー。長いゲームの歴史の中で、盲点になっていた領域を切り拓いた。

 

ゲームの質はグラフィック表現ではない

この文字遊戯は、コンピューターゲームの盲点になっていたかもしれない。グラフィック表現能力が高くないコンピューターの黎明期に生まれてもおかしくないゲームだった。実際、同様のアイディアのゲームは当時存在していたというが、文字遊戯ほどの謎解き、パズル要素はなかったともいう。

このレトロさも人気の要因のひとつになっている。黎明期にあってもおかしくないゲームが今でも多くの人に遊ばれている。グラフィック表現は精密になり、高精細、VRと進化をしていっている。ということは、今のゲームはいつか、グラフィック表現が古くなり遊ばれなくなる可能性がある。しかし、文字遊戯は、そもそもが古いグラフィック表現なのに楽しまれているのだから、年月が立っても遊ばれる息の長いゲームになる可能性がある。

これは単なる「面白いアイディアのゲーム」ではなく、ゲームのひとつのジャンルが生まれようとしているのかもしれない。実際、文字遊戯のフォロワーゲームが多数生まれている。

f:id:tamakino:20220304095401j:plain

▲文字遊戯がヒット作となったため、チーム9ではさまざまなグッズ販売も始めた。人気なのは、文字遊戯に登場する感じの活版活字。デスク上のインテリアとして人気になっている。

f:id:tamakino:20220304095427j:plain

▲チーム9のロゴ。文字遊戯を開発したチームだけに、9も漢字、しかも正の字を使った表現になっているところに注目。