中国のコーヒー格差は大きい。上海は世界一カフェの多い都市だが、地方ではコーヒーを飲む習慣すらまだ定着をしていない。蜜雪氷城は、次の成長戦略として、ラッキーカップの展開を始めた。地方市場に激安価格でコーヒーを提供する。すでに500店舗を越え、カフェ業界の台風の目となっていると鈦媒体が報じた。
蜜雪氷城が地方市場に仕掛ける激安カフェ
ドリンクスタンド「蜜雪氷城」(ミーシュエビンチャン)が運営するカフェ「幸運珈」(ラッキーカップ)が500店舗を超え、大きな存在となってきた。
蜜雪氷城は地方都市を中心に1万5000店舗以上を展開する低価格ドリンクスタンド。人気商品はソフトクリーム3元、レモン水4元というもので、客単価8元という激安チェーンだ。ユニークなプロモーションやSNSを活用することで人気を拡大してきた。
ラッキーカップは、この蜜雪氷城のカフェ版で、最も安い無脂肪乳ラテが5元(約90円)というものだ。2017年から直営店の営業を始め、2020年4月にフランチャイズ加盟店を募集したところ人気となり、2021年には400店舗が新規開店をした。蜜雪氷城と同じように、地方都市での出店が続いている。
ラッキーカップの邱騰宇総経理によると、2022年の春節初日には河南省の洛陽市、南陽市の多くの店舗で1日の売り上げが1万元を突破し、通常時でも1日2000元の売上は確保できているという。
上海は世界最大のカフェ都市に。一方で地方は空白地帯
ラッキーカップの出店は三線都市、四線都市が中心で、北京、上海といった大都市には出店していない。この価格設定では、家賃が大きな負担となり黒字にならないからだ。
しかし、この下沈市場をねらうという戦略が功を奏している。ひとつは、中国の大都市はすでに世界有数のコーヒー都市になっている。上海はカフェ数で言えば、世界一の都市となり、人口1万人あたりのカフェ数で見ても、ニューヨークや東京を上回っている。いわゆる大都市は完全なレッドオーシャンになっている。
大都市でも、低価格コーヒーは存在している。ラッキンコーヒー、マナーなどだが、安いといっても15元から25元の価格帯だ。さらにファミリーマート、ローソンなどのコンビニがコンビニコーヒーを展開しているが、これも価格帯は10元から15元。大都市ではこれが限界だ。一方、ラッキーカップは5元から14元の価格帯で算入をした。
今までになかった価格帯であり、地方都市ではカフェそのものが少なく、あっても気軽に飲める価格帯ではなかった。つまり、地方都市でこの価格帯というのはブルーオーシャンというよりも、空白地帯だったのだ。
開店経費は約550万円。1年半で初期投資を回収
ラッキーカップの加盟店になるには、約16万元の初期費用が必要になる。加盟料1万元/年、管理費5000元/年の他、コンサル料4800元、保証金1万元、設備費用9万元、初期仕入れ4万元が必要になる。さらに、店舗の賃貸、改装なども必要になるので初期費用はだいたい30万元(約550万円)前後になる。
現在、加盟店が募集されているのは河南省、江蘇省、浙江省、上海市など15の省市で、それ以外の地域では3店舗を開店する場合にのみ加盟が認められる。この場合、初期費用は100万元前後かかることになるが、管理マネージャーが店舗を巡回してアドバイスをしていく関係から、15省市に注力をして、店舗品質をあげていく必要があるからだという。
現在のところ、標準的な店舗で1日の売上が2000元、200杯前後になるという。それでも平均粗利は55%もあるので、売上が1日1500元というのが損益分岐点になり、70%の店舗が黒字になっているという。初期投資はだいたい1.5年で回収できる計算になる。
飽和をする蜜雪氷城が、ラッキーカップで次の成長をねらう
蜜雪氷城は、ユニークなプロモーションで人気を高めてきた。テーマソングは頭に残るということから「洗脳神曲」とまで呼ばれるほど知られるようになった。また、店頭でこのテーマソングを歌うとソフトクリームが無料でもらえるというキャンペーンも話題となり、現在は、恋人同士で来店し、5秒間キスをするとソフトクリームが1つもらえるというキャンペーンを展開している。来店客に中学生、高校生、大学生が多いため、このキャンペーンには一部で批判的な声もあるが、中学生、高校生にとっては、蜜雪氷城の店舗にいくと何かが起こると期待をされている。
しかし、蜜雪氷城もすでに1万5000店舗を展開し、成長の限界が見え始めてきている。以前のような成長曲線は描けなくなっている。蜜雪氷城はラッキーカップで次の成長曲線を描こうとしている。
▲蜜雪氷城の公式テーマソング。頭にこびりつくことから「洗脳神曲」と呼ばれ、この曲を中心にさまざまなユニークなプロモーションを行い、蜜雪氷城は成功をした。