小米の家電が売れている。基本機能を追求し、適正価格で販売するというシンプルさが現在の生活感覚とマッチしていることも大きいが、ラインナップをシンプルにし、購入時に迷うことが少ないことも売れる理由のひとつになっていると拙言が報じた。
多機能とシンプルを両立させる小米の家電
小米(シャオミ)の家電が売れている。その中でもヒット商品となっているのが、電気ポットと炊飯器だ。電気ポットはシリーズ合計1500万台、炊飯器はシリーズ合計1000万台を突破した。
小米の家電がなぜ好まれるのか。その理由はいくつもある。最も大きいのは基本機能が優れている点だ。電気ポットの場合は加熱板の設計を工夫し、短時間でお湯が沸く。炊飯器の場合は、IH方式を採用し、お米がおいしく炊ける。基本機能を追求し、それを求めやすい価格で提供する。
かといって、単機能家電ではない。炊飯器では、お米、お粥、玄米はもちろんこと、ケーキや蒸し煮、ヨーグルトなども作ることができる。このような多機能は、すべてスマホアプリにまとめられていて、スマホから調理アルゴリズムを送信して実行する仕組みであるため、炊飯器本体はボタンだらけにならない。この多機能とシンプルなデザインを両立させていることも人気の理由のひとつだ。
ラインナップが複雑で、どれを買ったらいいか迷う
これ以外に、ラインナップをシンプルにしていることも大きい。多くのメーカーが炊飯器だけでも複数のシリーズを販売し、機能に差をつけている。低価格シリーズの安さで消費者を惹きつけ、より多機能の高価格シリーズに誘導をしたいという考えからそうなっている。しかし、これが消費者にとっては「どれを選んだらいいかわからない」という迷いを起こさせる。結局、経済的に余裕のある人は、よくわからないままに多機能高価格シリーズを購入し、「使わない機能がたくさんある。操作がしづらい」という不満を持つことになり、低価格シリーズを購入した人は「あれもできない、これもできない。失敗した」という不満を持つことになる。
また、複数の異なる製品ラインナップを用意することは、開発コストを押し上げることになる。そこで、コントローラーチップは共通化をし、製品のシリーズにより、特定の機能をオフにし、エントリーモデルを生産するということも行われている。不正なことをしているわけではないが、消費者にすれば、どこか騙されているような気もしてしまう。
ラインナップを単純化することで消費者を迷わせない
一方、小米の家電はシンプルだ。炊飯器の場合、マイコン加熱方式とIH加熱方式の2シリーズがあり、あとはそれぞれで容量の差しかない。大きな基本機能の差でシリーズを分けているので、安いのが欲しければマイコン加熱方式を選び、炊き上がりで選びたければIH加熱式を選べばいい。あとは容量だけなので、家族の人数や使い方を考えれば、ほぼ自動的に決まる。
同じIH加熱方式でも、「◯◯炊き」などというネーミングをつけて、プレミアムシリーズをラインナップされると、ノーマルなIHにするかプレミアムなIHにするか迷うことになる。この迷わせることの最大の問題は、その場で決められなくなるということだ。カタログをもらい、「また後で、ゆっくりと考えてから買う」ということになり、本当に買ってもらえるかどうかの保証はない。
小米の場合は、迷いが起こらないライナップにしているため、買うべき機種がほぼ自動的に決まる。店頭で、直販ECで、検討を始めてから購入までの時間が圧倒的に短くなる。電気ポットも、ただの湯沸かし、低温保温、恒温保温の3シリーズで、後は容量が1リットルから1.7リットルに分かれているだけ。
このようなラインナップの考え方は、非常にスマートフォン的だ。大きく機能と性能が異なるローエンド、ミドル、ハイエンドのいずれかを選択すれば、後はストレージ容量を考えるだけ。
すべてが消費者目線で設計されている小米家電
小米の家電は、非常に評判がよく、ブランドイメージも高まってきている。また、全体にシンプルなデザインに統一をされているため、無印良品などを好む層から支持されている。そのため、家電を買うのであれば、最初から小米と決めている人も増え始め、それが販売を拡大する良質なスパイラルを生み出している。
小米の家電は、設計、デザイン、機能、販売方法のすべてが消費者から見た視点で行われている。これが小米の家電の人気を支えている最大の理由だ。