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白物家電はコモディティ化して進化の余地はないのか。小米が見つけた人車家全生態とは

 

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今回は、小米の「人車家全生態」についてご紹介します。

 

「アップルは何を売っている会社でしょう?」と質問されたら、ほぼ全員が「iPhoneを売っている会社」と答えると思います。アップルはこの他にMacBookiPadなども売っていますが、iPhoneが最も有名で広く普及しているデバイスだからです。少なくとも「ハードウェアを開発して販売している会社」であることは間違いないと誰もが思います。

しかし、「何を売って儲けているでしょうか」=利益の源泉はどこからきているのかと問われた場合は、違う答えをすべきかもしれません。アップルの中核事業はもはやiPhoneではなくなっているのです。

 

iPhoneは、さんざんな目に会っています。アップルは、米中の貿易摩擦が激化し始めたことから、中国依存を弱める「China+1」戦略を進め始めました。ご存じのとおり、iPhoneは台湾企業である鴻海精密(ホンハイ)の中国工場「フォクスコン」がそのほとんどを製造しています。それだけでなく、パーツの多くは中国企業が供給をしています。

しかし、米中の自由貿易に不安を感じたアップルは、ベトナムやブラジル、インドなどに生産拠点の一部を移し始めました。移すといっても、メンバーは同じで、フォクスコンや中国サプライヤーが中国以外に生産拠点をつくり始めたのです。

ところが、ブラジルとインドの拠点立ち上げは難航をしました。特にインドでは、生産工場で賃金をめぐって暴動が起き、工場は破壊され、製品は盗まれるという事態になったこともあります。これは、やはりアップルのサプライヤーであった台湾「緯創」(ウィストロン)の工場でしたが、結局、再建することは難しく、インドのタタグループに売却をすることになりました。

 

インドは、海外から輸入されるスマートフォンにもともと高い関税をかけていました。そのため、iPhoneもインドでの販売価格は高く、なかなかセールスが伸びません。そこで、アップルはフォクスコンとタタにインド国内でiPhoneを生産させて、インド国内向け需要をまかなう予定でいました。国内製造であれば関税はかからないため、製品価格を下げることができます。

ところが、トランプ関税です。中国から米国へiPhoneを輸入するには、現在は20%に落ち着きましたが、一時期は145%という非現実な関税率になる可能性がありました。一方、インドからであれば10%ですみますから、アップルはインドの生産拠点を強化して、インド向けと米国向けのiPhoneを生産しようと試みました。

ところが、今度は、インドがロシアから石油を購入しているということで、トランプ大統領は懲罰的関税を加えて50%にすると言っています。

アップルにしてみれば踏んだり蹴ったりで、最初から中国で生産していればよかったんだという話になっています。結局、右往左往しただけで、iPhoneの生産は元どおり中国に戻っています。インドではインド向けと米国向けの一部を生産し、中国は米国向け一部とその他地域向けを製造するという分担です。「China+1」戦略による脱中国化という視点では後退とも言える結果になっています。

さらに、アップルは、米国製造に4年間で6000億ドル(約88.4兆円)を投資することを発表しています。今度は、米国製造にシフトをせざるを得なくなっているのです。

 

中国で製造して関税を払って輸入する、製造に不慣れな米国で製造する。いずれの場合でもコストは大幅にあがりますから、iPhoneは値上げをせざるを得ません。当然ながら、今後の売れ行きは落ちていくことになります。

これを避けるには、コスト増加分をアップルが吸収することですが、当然利益率は大きく下がることになります。アップルは非常に苦しい状況に陥っています。

しかし、さすがはアップルとしか言いようがありませんが、アップルは密かに業態転換をしています。

アップルの売上のうち「iPhone」と「サービス」を抜き出して比較してみました。2025年以降はBank of Americaによる予測です。

▲2025年にはサービスの売上がiPhoneの売り上げを上回ると予測されている。アップル業績報告書、Bank of America予測より作成。

 

iPhoneの売上割合が次第に低下をして、サービスが増え続けています。Bank of Americaの予測によると、2025年度の決算では、サービスがアップルの売上高No.1になると予測しています。

サービスとは、iCloudApple Music、Apple TV+などのクラウド系サービスや、App Storeによる手数料収入です。つまり、Appleはもはや「iPhoneを売る会社」ではなく「サービスを売る会社」なのです。

 

このサービスを提供する会社への転身は理にかなったものです。ネットサービスは、最初にサーバーの設置やコンテンツの整備など大きな投資が必要になりますが、その後、ユーザーが増えても追加投資はほとんど必要ありません。そのため、軌道に乗ると、利益率が非常に高くなるのです。

次のグラフは、アップルの製品事業とサービス事業の粗利率の推移です。

▲製品とサービスの粗利率の推移。サービスは非常に粗利率が高い。アップル業績報告書より作成。

 

25年Q3では、製品の粗利率が34.5%、サービスの粗利率は75.6%にもなっています。つまり、サービスの売上が増えるということは、利益はそれに輪をかけて増えていくということです。

つまり、アップルは、任天堂のような会社になろうとしています。ハードウェアはあくまでもサービスへの入り口なのです。ハードウェアを大量に販売をして、サービスに誘導する。アップルがそういう施策をするとは思えませんが、普通の会社であれば、「アップルのサービスに2年間入ること」を条件に大幅割引してiPhoneを販売するということが行われても不思議ではありません。

これはアップルだけでなく、外から見える中核事業と、利益の源泉となる本当の中核事業が異なるという企業は少なくありません。

 

では、今回のテーマの小米(シャオミ)について見てみましょう。小米は誰もがスマートフォンの会社だと思います。その力の入れようは半端ではなく、最近ではスマホの頭脳とも言えるSoC(チップ)「XRING O1」を開発しました。3nmという最先端の製造プロセスを使ったもので、アップルやサムスン、ファーウェイと並ぶものです。詳しくは「vol.283:小米が自社開発のSoC「XRING O1」を発表。最先端3nmチップが意味すること」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/06/01/080000)で、ご紹介しています。

また、スマートフォンOSに関しても、Androidベースですが、自社で「HyperOS」を開発しています。さらに、AIに関しても「MiMo」を開発しました。力の入れようは半端ではありません。

一方、最近では電気自動車EV「SU7」「YU7」が話題になったり、家電もラインナップを広げています。いったい、小米はスマホの会社なのでしょうか、それとも別の事業が利益の源泉なのでしょうか。

今回は、小米の利益の源泉であるほんとうの中核事業は何であるかを見極めます。さらに、小米のスマホ、自動車、家電にまたがる「人車家全生態」戦略とは何かをご紹介します。

日本では、2010年代に「白物家電製品はコモディティ化をして、もう儲からない。付加価値の高い家電製品に集中していく」という戦略を各メーカーが取り、その結果、日本の家電で世界での存在感を示すことができているのはウォシュレットのみという惨憺たる状態です。本当に家電は進化の袋小路に入り、成熟し切って、進化の余地がなかったのでしょうか。今回は、この問題を裏のテーマとして、小米の事業について深掘りしていきます。

 

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