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運用コストはガソリン車の2.78分の1。低価格EVの登場で、自動車のコスト構造が大きく変わる

2.88万元という低価格で登場した宏光MINI EVがヒット商品になっている。これによりEVとガソリン車の運用コストに大きく差がつくことになった。ガソリン車はEVの2.78倍になるとSo宜的旅界視覚が報じた。

 

低価格EVの登場で、コスト計算が大きく変わった

NEV(新エネルギー車)は、車体価格が高いというのが当たり前で、さらにバッテリーの交換費用も高い。燃料代は大きく節約できるものの、ライフタイムのコストを考えると、EVが得になるのか、ガソリン車が得になるのかがよく話題になる。

ところが、上汽通用五菱から「宏光MINI EV」が発売されたことで、この比較計算が大きく変わった。宏光MINI EVはエントリーモデルでは2.88万元(約51万円)、標準モデルでも3.28万元(約58万円)だ。

その標準モデルを購入した人が、ライフタイムでのコストを計算し、その結果が話題になっている。

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▲大ヒットとなっている宏光MINI EV。最高時速100km、航続距離120kmという低スペックだが、高速道路に乗らない日用車としてはじゅうぶんであり、カスタマイズするラッピングなどの販売も増えている。

 

バッテリーの交換時期は8年10万kmが目安

この筆者は、宏光MINI EV標準モデル(3.28万元)を購入するときに、販売店からバッテリーの交換時期について、8年10万kmが目安という説明を受けたという。つまり、年に1万km+を走行する計算だ。

小型EVの積極導入に成功した広西チワン自治区柳州市での状況をレポートした「2021年中国新エネルギー車柳州モデルビッグデータ報告」(新エネルギー車国家ビッグデータ連盟)によると、小型EVの1回の走行距離は7.56kmで、1日に30.38kmを走行している。1日に7.56km前後の走行を3回から4回するというのが標準的な使い方で、遠距離移動の乗り物ではなく、中短距離移動の乗り物として使われている。具体的に言えば、通勤と買い物だ。

この数字をもとに計算すると、年間走行距離は1万1088kmとなり、販売店の案内とほぼ一致する。

 

トータルコストは8年10万kmで68万円

また、3万kmごとに点検が必要で、1回の費用は100元程度だという。つまり、8年10万kmで300元から400元が必要になる。

充電費用は、家庭用の電気を基本に計算すると1kmあたり0.05元となる。これが10万kmで5000元。

合計して、8年10万kmで、本体価格の3.28万元と合わせて、約3.8万元(約68万円)となる。

 

ガソリン車のコストはEVの2.78倍

では、これがガソリン車であった場合はどうなるか。まず定期点検の回数が多い。ガソリン車の場合、半年点検(1回500元)と年点検(1回600元)の両方を受ける必要がある。8年10万kmでは、半年点検が16回、年点検が8回となるので、合計1.28万元となる。

燃料代は燃費やガソリン価格によるが、1kmあたり0.6元として計算をすると、10万kmで6万元となる。

これで、仮に車体価格が同じだとすると、3.28万元+1.28万元+6万元=10.56万元(約188万円)となる。EVの2.78倍になる。

 

小型EVならコストは月約7000円

ただし、この計算にはバッテリーの交換費用が入っていない。宏光MINI EVのバッテリー交換費用が実勢でいくらぐらいになるかはまだ不明なところも多いが、現在10kwhクラスのバッテリーの価格が9000元から1.2万元であり、さらに交換費用などを合わせると1.5万元から1.8万元程度になると見られている。つまり、本体価格の半分程度の費用がかかることになる。

今後、技術が進歩をして、バッテリー価格が安くなることはじゅうぶんに予想されるが、多くの人が8年10万kmで、新車に買い換えると見るのが自然だ。

そのような使い方であれば、8年10万kmのコストが3.8万元。一月にならすと、396元(約7000円)。この他に、保険費用や故障をした場合の修理費用なども必要になるが、月7000円で、通勤と買い物の足ができるという考えれば決して悪くない買い物になる。

低価格の小型EVを購入し、バッテリーが劣化をしたら新車に買い替える。これはつまり、現在のスマホの使い方そっくりだ。小型EVの登場により、自動車は完全に日用の道具となった。