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ファーウェイの天才少年が開発をした自律走行する自転車。一人で4ヶ月で開発

ビリビリの配信主「稚暉君」が公開した動画が話題になっている。自律走行をする自転車を週末の空き時間を利用して、わずか4ヶ月で開発したというものだ。稚暉君はビリビリの人気配信主であるだけでなく、ファーウェイの天才少年プロジェクトにも選ばれた人。すでに商品化してほしいという声が相次いでいる。

 

自律走行自転車を開発したのはファーウェイの天才少年

ビリビリの配信主「稚暉君」(ジーホイジュン)が、動画を公開したのは6月6日。すでに300万回以上再生されている。稚暉君は以前から科学やテック系の動画を公開している人気配信主。

この稚暉君の本名は、彭志輝(ポン・ジーホイ)さん。2018年に電子科技大学を卒業し、2020年にファーウェイの天才少年プロジェクトで合格をし、高給でファーウェイに入社をした。



https://www.bilibili.com/video/BV1fV411x72a/?spm_id_from=333.788.recommend_more_video.-1

▲稚暉君の自律走行自転車の紹介ビデオ

 

自転車で転倒したことが開発のきっかけ

稚暉君が自動運転自転車の開発を始めたのは、自分で自転車に乗っていて、転倒してしまいケガをしたことがきっかけだ。中国で自転車は「自行車」というが、ぜんぜん自分で行く車じゃないじゃないか!と、自動でバランスを取り、自律走行する自転車を開発しようと考えた。

開発期間は4ヶ月かかったというが、仕事もあるので、週末だけの作業。その短い時間で自動走行自転車を開発し、その開発手法にも注目が集まっている。

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▲稚暉君は自転車で転倒をしてしまった。これが開発のきっかけになっている。

 

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▲設計はすべてCAD上で行った。まずは自分のクロスバイクのデータを入力し、自転車をCADで再現。

 

CADで設計、部品は3Dプリンター出力

稚暉君は、すでに持っているギアのないクロスバイクに装置を取り付けて、自律走行自転車を開発することにした。

コンセプトは3つのモーターを使うというもの。ひとつは前進をするために後輪に接して、前進力を生み出すモーター。これは当然だ。

もうひとつは、大きな金属の円盤を回転させるモーター。この金属の回転により、角運動量が生じ、自転車のバランスを取る。いわゆるジャイロ効果でバランスを取るというものだ。

最後のひとつは、ハンドルを回転させるモーター。ジャイロでバランスを取るだけでなく、ハンドルを切ることで転倒しないように前進をする。

そして、具体的な設計をCAD上で行った。そして、部品を3Dプリンターで出力。ただし、強度を必要とするパーツは、知り合いにCADデータを渡して、金属の削り出し加工などの手法によって製造してもらった。

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▲後輪に接するモーター。これにより前進する。

 

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▲ハンドルを制御するモーター。走行中はハンドルの切り角を変えることでバランスを取る。人間が行う操作と基本的に同じだ。

 

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▲座席下に設置されたジャイロ。これが回転し、ジャイロ効果を生む出すことで、車体のバランスを取る。

 

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▲多くの部品は、CADから3Dプリンターで出力した。

 

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▲強度が必要な部品は、知り合いにデータを渡して、金属の削り出し加工で作成してもらった。

 

Unityを利用して仮想空間の中で機械学習

さらに、計算チップ部分の設計も行なった。AI計算に特化した計算チップとモーターの制御コントローラーなどを1つのボードに乗せたもので、傾きセンサーなど各種センサーから得た情報を処理して、駆動モーターとジャイロの回転数、ハンドルの切り角を制御して、自律走行させようというものだ。AIチップは当然ながら、ファーウェイのアセンド310が使われている。

ただし、そのAIプログラムの開発には時間がかかった。50ものパラメーターを参照して機械学習をしなければならないからだ。この時に利用したのが、オープンワールドゲームなどの開発で使われているUnityだ。自動運転自転車のモデルをUnity上で作成し、プログラムもUnity内に移行し、バーチャル空間の中で学習を進めた。

そして、実際に組み立てをしてテスト走行を行い、その結果からプログラムを修正し、Unity上でテストし、実際の自転車に反映させるということを繰り返していった。

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▲自転車の小脳の役割をするAI計算チップ。もちろん、ファーウェイのチップが採用されている。

 

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▲完成した自転車。開発はこの小さな部屋で行われた。

 

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▲バランス試験もこの部屋の中で行われた。

 

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▲ゲーム開発プラットフォームUnityを利用し、バーチャル空間の中で自転車を走らせ、機械学習を進めていった。

 

天才少年が生み出した新しい乗り物

この自動運転自転車のシステムは、「軒」(シュアン、XUAN)と命名された。eXtremely Unnatural Auto-Navigationの略だという。また、軒というのは、古代中国で乗り物を総称する言葉だったという。

ジャイロ作動時には、停止をしている状態でもバランスを取り、自立ができる。見た目は自転車だが、自転車とはまったく違った新しい乗り物になっている。すでにコメント欄には「商品化してほしい」という声が相次いでいる。

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▲実際の路上テスト。動画を見るとわかるが、これは走行中ではなく、停止をしている。停止をしていても、ジャイロの回転数を変化させることでバランスを取ることができる。

 

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▲ハンドルに荷物をかけると、一瞬揺らぐが、すぐにバランスを取る。

 

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▲このような柵の上に乗せても、バランスをとって静止する。

 

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▲自律走行自転車はすでに進化をしていて、走行をしながら周辺のマップを作成する機能が搭載された。最終的には、始点と終点を指定するだけで、自動走行するようになる。