中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

創業100年のタクシー会社が人工知能配車を採用。新サービスに対抗する老舗企業

中国では滴滴出向などのライドシェアがすっかり定着をしているが、そのおかげで、従来からのタクシー会社もさまざまな改革を行っている。上海の強生タクシーは1919年創業という100年企業だが、さまざまなテクノロジーを投入して、生き残りを図っていると上観新聞が報じた。

 

タクシー90分待ちの上海ディズニーランド

上海でタクシーに乗りづらい場所と言えば、多くの上海人が上海ディズニーランドをあげる。ディズニーランドには地下鉄などが通っており、上海市内から行くのは便利だが、浦東国際空港との間は、一度市内近くまで戻って乗り換えるという遠回りをするので、1時間以上かかる。しかし、タクシーであれば、直線で行けるので30分程度しかかならない。そのため、空港に行く人はタクシーを利用する人が多い。

ディズニーランドからタクシーに乗るには、専用のタクシー乗り場を利用しなければならない。しかし、夕方のピーク時には90分待ちというのが当たり前だった。

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▲上海ディズニーランドでは、帰りはタクシーが便利であるため、ピーク時には90分待ちにもなっていた。管理システム導入で、待ち時間は最大15分に短縮された。

 

90分待ちが15分に短縮

これは現場のスタッフが、経験と勘で運営をしていたからだ。客が増えてタクシーが足りなくなると、本部に連絡をして車両を回してもらう。しかし、空き車両がディズニーランドに一斉に向かっても、タクシー乗り場の車両が増えるのには1時間ほどはかかる。その間に、さらに乗客が増えるという悪循環になっていた。

強生タクシーと上海国際リゾート区管理委員会は、2019年12月に、共同してタクシー管理プラットフォームを導入した。

ディズニーランドの入場者数をリアルタイムで提供してもらい、過去のデータから車両需要数を算出、それに基づいて、現在の待ち時間を表示するというものだ。現場ではなく、本部が状況を把握できるため、すぐに配車を指示することができる。

これで開園当時の平均待ち時間90分が、15分に短縮された。

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▲管理システムでは、ディズニーランドから入場者数のデータ提供を受け、それに基づいて需要車両数を予測、本部がリアルタイムで配車を行う。

 

根強い「電話でタクシーを呼ぶ」方式

さらに、強生タクシーでは、人工知能による配車サービスも始めている。電話をすると、合成音声の人工知能が受け答えをして、タクシーを配車してくれというものだ。

タクシーももはや道端で手をあげて拾うという人は少なくなっている。というより、中国の都市では、それではタクシーがほとんどつかまらない。タクシーは走っているものの、多くがアプリで予約された迎車だからだ。

都市スマート交通研究院、中国交通報、嗒出行が共同で公開した「全国一級都市タクシー業界サービスレベル研究報告」によると、44.61%の人がアプリのみを使ってタクシーを呼ぶようになっていて、アプリを使わずに道端で手をあげてタクシーを拾う人はわずか13.71%になっている。その他の人は、状況に応じて、アプリを使ったり、道端で拾ったりする。

しかし、強生タクシーの湯健介副総経理によると、まだまだ電話を使ってタクシーを呼ぶ人が多いのだという。アプリは操作をしなければならないが、電話であれば歩きながらでもタクシーを呼ぶことができるからだ。

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▲長い行列が当たり前だった、上海ディズニーランドのタクシー乗り場。待ち時間は大幅に短縮された。

 

人工知能が対応する電話予約

強生タクシーでは、この電話サービスに、人工知能を投入した。予約番号である6258-0000に電話をすると、「AIサービスを利用するには3をプッシュしてください」という合成音声が聞こえてくる。ここで3を押すと、人工知能と会話をしながらタクシーを呼ぶことができる。

人工知能は、電話番号から顧客を認識していて、過去の行き先をすべて記憶している。そのため、過去に利用した行先であれば、例えば「○○ホテル」というだけで、認識をしてくれる。新たな行先の場合でも、名称を言うだけで住所を検索して、確認をしてくれる。

この人工知能は、同時に90名に対応することができ、配車センターでの対応許容量は10%ほど増えたという。

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▲上海ではおなじみの強生タクシー。創業は1919年と、百年企業になったが、ライドシェアの登場で、管理プラットフォームや人工知能など、テクノロジーを次々に採用している。

 

百年企業にもいい効果を与えるナマズ効果

ライドシェアという新しいサービスが登場してきても、古いサービスが淘汰をされて消えてしまうわけではない。滴滴出行の登場により、タクシー会社の多くがアプリ配車に対応をした。スマホ決済が登場してきて、銀行は真剣に利用者の利便性を考えるようになった。新小売スーパー「フーマフレッシュ」が登場して、既存スーパーも宅配など新小売を取り入れている。ラッキンコーヒーが急成長をしたことで、中国スターバックスはアリババと提携してデリバリーを始めた。

このような効果はナマズ効果と呼ばれる。北欧の漁師たちは、とったイワシを生簀に入れておくが、イワシだけだとすぐに弱って死んでしまう。しかし、ナマズを1匹入れておくと、何匹かのイワシは食べられてしまうが、その他のイワシは逃げ回るために活発に動くようになり、長生きするのだという。

中国では、新しいテクノロジーを利用した新しいサービスが登場するだけでなく、創業100年のタクシー会社も対抗するために新しいテクノロジーを取り入れようとしている。

 

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