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中国人はなぜライドシェアばかりを使い、タクシーを使わなくなったのか。そのシンプルな理由

コロナ禍で落ち込んだタクシー需要がまったく戻らない。理由は簡単で、多くの人がタクシーではなく、ライドシェアを使うようになっているからだ。中には、ライドシェアの配車に30分かかると言われても、ライドシェアを待つ人もいる。なぜ、タクシーはそこまで嫌われるのか、趣観財経が報じた。

 

ライドシェアの方が安い

タクシーよりもライドシェアが好まれる最大の理由は、ライドシェアの方が価格が安いことだ。そもそもの価格が安いだけでなく、さまざまな優待の仕組みがあり、クーポンを使うとタクシーの半分以下になることもある。

特に重要なのが、需要が落ちる昼間などのオフピーク時にはさらに価格が安くなることだ。多くのプラットフォームが、車両数と需要のバランスを見て、価格を変動させるダイナミックプライシングを導入しているため、オフピーク時は地下鉄やバス料金に+αする感覚でライドシェアを利用できる。

▲ライドシェアは一般の乗用車を使ったタクシーサービス。いわゆる白タクだが、多くの人がライドシェアを使うようになっている。乗る時は、携帯電話番号の下4桁で互いを確認する。

 

乗る前に料金が確定しているわかりやすさ

ライドシェアの価格は、現在地と目的地を指定すれば、注文時に確定をする。それ以上の料金を後から請求されることはない。一方、タクシーは距離制料金を採用しているため、着いてみないといくらかかるのかがわからない。そのため、遠回りをして料金を多くしようとする悪質な運転手もいて、そのような心配をしなければならないこと自体がユーザー体験を悪くしている。ライドシェアではそのような心配は不要だ。

▲タクシー利用者数はコロナ禍で253.27億人にまで落ち込んで以来、回復がゆっくりでしかない。この間に、ライドシェアが接客品質などを向上させたからだ。交通運輸部の統計より作成。

 

着いたらすぐ降りるだけ。事前精算のライドシェア

また、ライドシェアであれば注文した時に決済が終わっているため、下車する時はそのまま降りることができる。一方、タクシーは料金を計算し、支払いをしなければならない。ほとんどのタクシーがスマホ決済に対応しているが、それでも料金を入力し、支払ったことを運転手に確認してもらうなどの面倒がある。

そのため、特に知らない都市ではライドシェアを選択する人が多い。地理に不案内であるため、料金の相場がわからないが、注文前に表示される価格で納得をして配車を頼むことができる。一方、タクシーはいくらかかるかわからず、場合によっては遠回りをされていないかどうかも心配しなければならない。

 

自分の好きな場所で待つことができる

ライドシェアは大都市であれば5分から長くても10分ぐらいで配車されることが多い。タクシーを道路で拾う場合は、どのくらい待つのかがわからない。すぐにつかまることもあれば、いつまで経っても空車のタクシーがやってこないこともある。

ライドシェアでは何分ほどで配車されるかも表示され、到着をしたらプッシュ通知がされるため、確実に乗ることができる。特に、ホテルやレストラン、自宅にいて配車を頼む時は、多少時間がかかっても、座って待っていればいい。タクシーの場合は、自分の好きな場所で待つのではなく、タクシーがつかまりそうな大通りで拾わなければならない。

これにより、多くの人がライドシェアを利用し、タクシーを使う場合でも、配車アプリから呼ぶようになっている。道端でタクシーを拾うというのは、たまたま空車を見かけた時ぐらいになっている。

 

事件を経て、安全性も高まっている

ライドシェアの品質はあがってきている。過去に、乗客の女性が運転手に殺害されるという事件も起きたことがあるが、それがきっかけになり、プラットフォームの監視システム、運転手の管理システムが整備された。運転手は常に乗客から評価をされ、その評価が下がると、一定期間乗務停止になる。そのため、多くの運転手の接客品質があがっている。

どの運転手がどの乗客をどのルートで運んでいるかは常時監視され、ルートから大きく外れるなど異常値が検出されると、プラットフォームはすぐに連絡を取り、連絡がつかなければ警察に通報する体制が整っている。

滴滴などの大手プラットフォームでは、個人の自動車を持ち込むのではなく、プラットフォームが提供する自動車を使うことが多くなり、車内は清潔にされ、タクシーよりも快適になっている。

▲ライドシェアと言っても、プラットフォームでは専用車を運転手にレンタルもしている。そのため、品質面ではタクシーと変わらなくなっている。

 

ライドシェアと競争をしなければならないタクシー

大都市では、タクシーの台数が慢性的に不足をしており、以前から街中でタクシーを拾うのは簡単なことではなかった。そのため、多くの人が、タクシーを利用するのであっても、タクシー会社の配車アプリか、滴滴などのライドシェアプラットフォームを使う。ライドシェアプラットフォームでは、タクシーを含め、ライドシェアの種別ごとに料金が表示される。この時、タクシーの料金はライドシェアよりも高いことがわかる。ライドシェアでも「快車」と呼ばれるカテゴリーは、タクシーとなんら変わらない。同じ品質であれば、誰だって安い方を使うことになる。

以前の中国の大都市では、夜11時をすぎると、路上でタクシーの争奪戦が行われるのが毎日のことだった。あちこちにタクシーを探して手を挙げている人がいて、しばしばどちらが先にタクシーをつかまえたかで揉め事になる。しかし、今ではそのような光景は過去のものになっている。タクシー業界は、ビジネスモデルを変えざるを得なくなっている。

▲ライドシェアアプリでは、行き先を指定すると、配車可能な車と料金、配車予想時間が一覧表示される。6.29元、13.7元は相乗りなので、慣れていないと難しい面があるが、15.57元、15.73元の車は専用車でタクシーと変わらない。タクシーは16.07元と価格が高くなる。