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出前はロボットが配達する時代に。ドローン、無人配送車、ロボットの連携で料理を届ける

2020年1月7日から、米ラスベガスで開催されたCES2020で、フランスの自動車部品サプライヤーヴァレオ」と美団が共同開発した無人配送車「eDeliver4U」が出品された。一方、ライバルの「ウーラマ」では、ドローン、無人配送車、ロボットの投入がされており、料理の無人配送時代が始まろうとしていると中国物流采購雑誌が報じた。

 

無人配送時代に入る「美団」「ウーラマ」

eDeliver4Uは、長さ2.8m、幅1.2m、高さ1.7m。庫内には17人分の料理を格納することができる。運行速度は時速25km、最高速度は時速50km。満充電で100kmを走行することができる。

美団では、2019年4月にすでに小型無人配送車「小袋」の公道試験を始めており、料理の無人配送が本格化することになる。

美団のライバルである餓了麽(ウーラマ)は、無人配送では一歩進んでいる。ウーラマはアリババ傘下に入っているため、同じアリババ傘下であるアリババ国内生活サービスが「蜂鳥即配」を独立事業体とし、配送ドローン「青蜂」、無人配送車「玉獅」、配送ロボット「赤兎」などを開発、すでに実戦投入をしている。美団とウーラマの無人配送競争が始まりそうだ。

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ヴァレオと美団が共同開発した無人配送車「eDeliver4U」。CES2020に出品された。

 

宅配便よりも難しい料理の無人配送

ただし、美団は2018年は試験運用の年であり、2019年はポイント投入の年となったが、2020年は課題を乗り越える年になるとしている。料理の無人配送には、いくつもの壁があるからだ。

いわゆる宅配便の無人配送車はすでに閉鎖区域では当たり前のように利用されている。最も多いのはマンション内だ。宅配便業者は、各戸に配送するのではなく、ロビーやゲートなどで、無人配送車に入れ、配送を完了する。無人配送車からは、届け先に通知がいき、受取を選ぶと、自宅前の路上まで無人配送車が動いてくるというものだ。利用者は、1階まで降りて、スマートフォンで解錠して荷物を受け取る。いわば、動く宅配ボックスとして使われている。


YOGO STATION Smart Delivery System - World’s Pioneering Multi-robot Automated Delivery Solution

▲蜂鳥即配と開発協力をしているYOGO Robotでは、宅配便用ステーションを開発済み。宅配便業者は、ビル内のステーションに荷物を投入。ロボットがビル内の必要階に移動して配送をする。

 

ユーザー体験を落とさずに無人化をしなければならない

しかし、料理の配送は、このようにはいかない。ひとつは、最短時間で届けなければならないことだ。無人配送車に、保温機能、冷蔵機能をつけることは難しくないが、それでも宅配便のように半日後に受取というわけにはいかない。温かい料理は冷める、冷たい料理は温まる、さらにはものによっては食感が落ちる、腐敗するなどの恐れもある。

もうひとつは、人による配送が各戸配送になっているので、無人配送車になって、1階ロビーまで取りに行くとなると、ユーザー体験は後退をしてしまう。それを嫌って有人配送を指定する人が増え、無人配送が普及をしていかなくなる。

宅配便の場合は「走る宅配ボックス」で、配送側、受取側も利便性を感じることができる。しかし、フードデリバリーの場合は、従来通り、ドアまで届ける必要があるのだ。

 

「幹線」「支線」「末端」でそれぞれの課題

無人配送では、「幹線」「支線」「末端」で分けて考えることが多い。幹線は一般公道、支線はマンションやビル、施設の敷地内、末端は建物の屋内だ。

蜂鳥即配では、この3つのシーンで異なるデバイスを投入し、料理を載せ替えてリレー方式で配送をしている。この載せ替えは将来は自動化されるものの、現在は人が行っている。

幹線を配送するのはドローン「青蜂」で、すでに3200件の料理を配送した実績がある。支線を配送するのは無人配送車「玉獅」で、すでに6.5万件の料理を配送している。さらに、末端を配送するのは配送ロボット「赤兎」で50万件の料理を配送している。

幹線部分の基本的な自動運転技術はほぼ完成をしている。ただし、一般公道であるので、想定外の状況が生じることが考えられるため、路上試験を行いながら、人工知能が経験を積んでいる段階だ。

意外に難しいのが敷地内の支線部分だ。その敷地専用の無人配送車であれば、幹線部分よりもハードルは低い。しかし、一般公道から敷地内に乗り入れて移動するというのは非常に難しい。なぜなら、敷地内の道路は、一般公道と違って、標識、車線などが標準化されてなく、その敷地により異なっているからだ。また、歩行者が多いのか、自動車が多いのかなど、道路状況も敷地によって大きく異なっている。

このような異なる環境を汎用的に学習していくというのは簡単なことではない。

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▲蜂鳥即配が開発したドローン。すでにウーラマの料理を3200件配送した実績がある。

 

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▲蜂鳥即配が開発した屋内ロボット。エレベーターと通信をし、目的階に移動し、荷物を届けることができる。すでに50万件の配送をした実績がある。

 

屋内ではエレベーターとの通信も必要になる

もうひとつ大きな問題が末端、つまり建物内の移動だ。例えば、無人配送車はエレベーターに乗って、行先の階数のボタンを押すことはできない。エレベーターと何らかの通信をする必要がある。

美団無人配送部によると、すでに金地集団、朝陽大悦城などが、美団無人配送車のためにエレベーターを改造し、走行環境の整備などを行うことに同意をしているが、それなりに大きな改造工事となるため、普及の速度はどうしても遅くなる。

蜂鳥即配では、この末端に無人配送車ではなく、配送ロボット「赤兎」を投入している。エレベーターと通信をして、行き先階を指示できる機能を備えている。

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▲アントワークは、すでに正式な営業免許を受けて、杭州市のスタートアップパーク「夢想小鎮」で、ドローンと無人配送車により、ケンタッキーの料理を宅配している。ドローンと配送車の載せ替えは、ステーションで自動化されている。

 

まずは「人+デバイス」、その先にデバイスリレー方式

無人配送車による宅配便は、利用者が受取を急いでいない、宅配ボックス替わりにもなり、自分の都合のいい時間に受け取れるというメリットがあるため、届け先住所前の路上まで届ければよかった。家の前まで届ければ任務が完了する。

しかし、料理の場合は、人に届けなければならない。そのため、宅配便よりさらに難しい壁がいくつも存在をしている。

アリババ系の蜂鳥即配は、ドローン、無人配送車、ロボットを組み合わせ、リレーさせることでこの課題を解決しようとしている。

一方、美団は人と無人配送車の組み合わせを考えているようだ。美団無人配送部の夏華夏総経理は、2018年7月に無人配送車「小袋」を公開したときにこう述べている。「しばらくの間は、人と無人配送車の混合方式になる。複雑な環境下での配送は今まで通り人が受け持ち、無人配送車は近距離や夜間に使われることになる」。

フードデリバリーの無人配送が普及するまでには、まだまだ乗り越えなければならない壁が多く存在する。