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鉄道の紙の切符が完全廃止。電子化だけでなく、転売防止にも大きな効果

中国の鉄道「中国鉄路」は10月1日から紙のチケットの発行を停止すると発表した。以降はすべて電子チケットとなる。中国の鉄道は大きな転換点を迎えたと九派新聞が報じた。

 

進む鉄道の電子チケット化

すでに多くの人がスマートフォンからチケットを購入し、電子チケットを使うようになっている。地下鉄でもほぼすべての人がスマホで乗車をしている。チケットを買うこともできるが、出てくるのは紙のチケットではなく、NFCカードかトークンだ。これを使って、乗車をし、改札を出る時に回収ボックスに入れる。

鉄道の方も電子チケット化が進んでいる。2018年11月には海南島の環状高速鉄道が電子チケット化を進め、2020年6月には高速鉄道はすべて電子チケットが導入された。チケットを購入すると、チケットは身分証に紐づけられ、身分証をかざすだけで乗車ができるようになった。

今回、一般の鉄道も高速鉄道と同じように、チケットは身分証に紐づけられるため、身分証かスマホの電子身分証をかざすことで、乗車ができるようになる。

▲電子チケットも、変化によりまごつく人が出ないように、表示は従来の神チケットそっくりになっている。列車番号、席番号などが記載されている。

 

紙の切符は落とす。転売もできる

この措置を進めたのは、ペーパレスや利便性という観点もある。これまで紙のチケットでは、「なくす」という問題がついて回った。必要な時に、どこにしまったかを忘れてしまい、乗車賃をもう一度支払わなければならないことがあった。電子チケットでは身分証がチケット代わりになるため、このような問題が起こらなくなる。

国鉄路のねらいは、この他、チケットにまつわる不正行為を防止するということもあるようだ。紙のチケットは、それ自体が領収書の代わりをして、払い戻しをすることができる。このため、繁忙期には大量に列車チケットを購入し、高値で転売をする転売屋が大量に登場していた。彼らは紙のチケットを転売し、売れ残ったチケットは払い戻しをする。

しかし、電子チケットのみになると、身分証がなければチケットは購入できず、払い戻しをする時は、払い戻し申請をすると、登録済みのメールアドレスに電子領収書が送られてきて、これを提示して払い戻しを受ける。つまり、購入も払い戻しも本人の身分証が必須になるため、転売屋が大量にチケットを購入することができなくなる。

▲従来の紙のチケット。紙チケットはそのまま領収書代わりになっていたため、これで払い戻しを受けることができる。これにより、転売屋が大量にチケットを買い占め、高値転売をし、売れ残ったら払い戻すという不正が横行していた。

 

身分証紐づけなのでスマホがなくてもOK

ただし、困ってしまうのはスマホを持っていない人だ。身分証は全員が持っているためにチケットは購入できる。スマホがある人には、列車番号や指定座席などの情報が表示されるが、身分証だけの人は情報を知ることができない。そこで、駅などにはプリンターが設置された。身分証をかざすと、有効になっているチケットの列車番号や出発時刻などのメモが印刷された紙が出てくる。

スマホがない人は、これを見て、チケットの情報を確認することができる。このメモでは乗車することはできず、乗車には身分証をかざす必要がある。また、このメモはなくしたとしても、何回でも印刷できる。

多くの人が納得しているが、一部の旅行好きの人からは旅情が失われるという惜しがる声があがっている。

スマホがない人は、身分証を駅の専用プリンターにかざすと、チケット情報が記載されたメモがプリントされる。なくしても何回でも印刷することができる。

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