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クレジットカードで電車に乗れるシンガポールのSimplyGo

2019年4月に始まったシンガポールの鉄道、バスのクレジットカード決済「SimplyGo」がMastercardに続いてVISAにも対応をして、本格的に利用できるようになったとRetail News ASIAが報じた。

 

クレジットカードをかざすだけで地下鉄に乗れる

シンガポール交通局(Land Transport Authirity=LTA)は、市内の鉄道とバスにクレジットカードで乗車できるSimplyGoを2019年4月にMastercardから始め、6月にVISAにも対応した。これでほとんどの人が、クレジットカードで公共交通を利用できるようになる。

利用できるのは、コンタクトレス決済に対応したクレジットカード。改札のセンサーにタッチするだけで、乗車料金が引き落とされ、乗車することができる。SimplyGoを利用するには、「Mastercardコンタクトレス」「VISAタッチ決済」に対応したクレジットカードが必要になる。未対応のカードでも、ApplePay、GooglePay、Samsung Pay、FitbitPayなどのスマホ決済に未対応カードを登録することで、スマホをタッチしてコンタクトレス乗車が可能になる。

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シンガポールのSimpleGo。コンタクトレス決済対応のクレジットカードを直接かざして改札を通る。非対応のカードでも、ApplePayなどのスマホ決済プラットフォームに登録することで、スマホをかざして乗車できるようになる。

 

ユーザー体験が最も優れているSimplyGo

このシンガポールのSimplyGoは、キャッシュレス乗車ソリューションとして、最も優れたスマートなものだ。多くの市民がすでに持っているクレジットカードで乗車ができるようになること。公共交通だけでなく、市内でのキャッシュレス決済にも利用できること。外国人も簡単に(TransitLinkウェブでアカウントを作成するだけ)利用できるなど、さまざまな利点がある。

 

Suicaもまだ改善の余地がある

日本の場合、IC乗車券のSuicaで、ほぼ同じユーザー体験が実現できているが、SimplyGoに追いつけていない部分もある。

ひとつは駅の券売機やコンビニで、現金をチャージしなければならないことだ。モバイルSuicaを利用することで、スマホでクレジットカードなどからチャージができるようになるとはいうものの、残高には気をつけておかなければならない。オートチャージの仕組みも用意されているが、JR系列のクレジットカードのみ対応など制限がある。

また、SuicaはあくまでもIC乗車券であり、最近はだいぶ増えてきたとはいうものの、街中のキャッシュレス決済手段として使うには限界がある。コンビニ、カフェチェーンなどでは対応しているものの、一般商店まで拡大をしていくかどうかはまだ不明だ。

本格的なキャッシュレス決済ツールにするには、「上限2万円」という制限が大きな問題になり、これを緩和するためには、再度セキュリティの仕組みを考え直さなければならなるくなる。

 

訪日外国人の間で有名でも、課題は残されているSuica

訪日外国人の間では、「無記名Suica」の存在は有名で、ツアーなどの場合は、旅行社が用意してくれることが多いが、個人旅行の場合、JR駅のみどりの窓口Suica券売機で購入しなければならない。外国人にとって、JRの駅なのか私鉄、東京メトロの駅なのかはわかりづらく、また、すべての券売機で発券できるわけではないことなど、戸惑うことも多いようだ。

さらに、帰国する前に払い戻しをしようとすると、みどりの窓口に並ばなければならない。帰国直前の、飛行機の出発時間が迫っている中で、大きな荷物を持ちながら、みどりの窓口を探すというのは、あまりいいユーザー体験とは言えない。

せっかくSuicaは優れたキャッシュレス決済ツールになっているのだから、訪日外国人のために、空港やコンビニで簡単に購入(現在、JR系のKIOSKNewDaysでは購入可能)できて、交通機関に乗れるだけでなく、多くのインバウンド系ショップで決済ツールとしても使え、最後はコンビニや空港で払い戻しができるという状況がベストだ。

シンガポールのSimplyGoの場合、コンタクトレス決済対応のクレジットカードかスマホ決済を持っていき、それで交通機関に乗り、街中でも決済ができる。ポストペイ方式なので、チャージや払い戻しを考える必要はない。

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▲クレジットカードでもスマホでも乗車できる。スマホはロック解除をせずにタッチをするだけ。もちろん、スマートウォッチでも可能。QRコードや交通カードに比べて、ユーザー体験は圧倒的に優れている。

 

外国人旅行者にとってはユーザー体験が悪い中国のQRコード乗車

中国のQRコード乗車もSinplyGoと比べると、ユーザー体験が悪い。最大の問題は、改札を通る前に、スマホを取り出して、アプリを起動し、QRコードを表示しなければならないということだ。これを忘れて、改札の前にきてしまってから、スマホを操作し始める人が多く、改札での渋滞の原因になっている。

もうひとつは、外国人が原則利用できないということだ。QRコード乗車を使うには、スマホ決済アリペイまたはWeChatペイに実名登録をすることが必要で、実名登録をするには中国国内の銀行口座が必要になる。長期滞在をする場合や頻繁に出張をする人は銀行口座を開設するが、短期の旅行では現実問題として難しい。

それでも、QRコード乗車を多くの中国人が使うのは、NFC交通カードが市単位になっているからだ。北京市の交通カードは、上海では利用できない。都市ごとに交通カードを購入するしかない。しかも、チャージ、払い戻しに手間がかかる。QRコード乗車であれば、ほぼ全国の都市で利用できる。QRコード乗車のアカウントを作成している人の40%から50%は、市外の人だという。

 

150都市がコンタクトレス乗車を検討。世界標準になる可能性も

こう比較をすると、シンガポールのSimplyGoは最も優れたソリューションだ。シンガポール在住者にとっても、訪問する旅行者にとっても、チャージや払い戻しを考えることなく、タッチするだけで乗車でき、街中でのキャッシュレス決済もできる。

現在、VISAは同様のソリューションを12カ国20都市での展開を進めており、導入を検討している都市は150都市にものぼるという。SimplyGoのようなコンタクトレス乗車が、世界での事実上標準となっていく可能性も出てきている。