「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 160が発行になります。
登録はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001690218.html
今回は、ドローン配送についてご紹介します。
深セン市で、フードデリバリー「美団」(メイトワン)によるドローン配送が本格化をしています。現在はまだ「常態化した試験営業」という建て付けですが、法整備が済んでいないためで、深セン市政府は、2022年2月に「深セン市が推進する新型基礎情報設備建設行動計画(2022-2025年)」(http://www.sz.gov.cn/zfgb/2022/gb1234/content/post_9628550.html)を発表し、ドローン配送を都市低空物流としての位置づけを行いました。さらに、同年7月には深セン市交通局が「深セン市現代物流基礎設備体系建設政策」(http://jtys.sz.gov.cn/zwgk/jtzx/gzdt/content/post_9934339.html)を公開し、低空物流、地上物流、地下物流の3層を整備していく方針を明らかにしました。
また、ドローン運行を一括で管理する機関、民航航空局忠南地区管理局と空中利用の調整をする機関の設置も決まり、法整備に向けた作業が着々と進んでいます。いつになるのかは明らかになっていませんが、今年中には法律でドローン配送が認められ、美団も正式営業に入ると見られています。
と言っても、すでに美団は正式営業と変わらないレベルの配送をしており、特に変わることはないかもしれません。
美団が公開している情報によると、2020年1月に深セン市の初の試験飛行6分15秒を行なって以降、2020年10月には試験飛行が10万回を超え、2021年1月から実際の飲食品の配送を行い、2021年6月には配送した飲食品が2500件を突破しました。
その後、数値実績は発表されていませんが、すでに美団アプリで注文をすると、ドローン配送路線の場合、ごくあたりまえのようにドローンで配送される(地図上にスクーターではなく、ドローンのアイコンで現在地表示が出てくる)ので、かなりの数に登っていると見られます。
結んでいるのは、深セン市坂田のショッピングモール「星河World Coco Park」などの4つのモールと、その周辺のオフィスビル、マンションを結ぶ11路線です。
また、上海を始めとした他都市でも、期間限定のイベントとして、ドローン配送を行い、話題を集めています。
美団がドローン配送を実現(または実現間近)までいち早く漕ぎ着けたのは、安全技術の開発が進んだからです。
すでに、米国ではアマゾンがドローン配送「Amazon Air」がサービスを開始していますが、対象地域はカリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションで、いずれもアマゾンの配送拠点があり、人口が密集していない地域です。アマゾンでは順次エリアを拡大していくとしていますが、おそらく人口が密集していない地域が選ばれていくことになると見られています。
https://www.youtube.com/watch?v=Ds78kHn-n84
▲Amazon Airの紹介したメディアのニュース。目的地には着陸をせず、荷物を投下する。
このような人口が密集していない地域が選ばれるのは、安全性を考えてのことです。ドローンは機械である以上、故障を起こして墜落をする可能性がゼロにはなりません。
アマゾンはAmazon Airでどのような安全テクノロジーを使っているかもビデオで公開しています。
https://www.youtube.com/watch?v=3bDyeUiWL3M
このビデオでは、あまり詳しく説明されてはいないのですが、人やペットといった対象を認識し、それを避けるようにルートを自律的に決定するというもののようです。人口が密集していない場所では、このような単純な回避戦略でもじゅうぶん安全が確保できるのだと思います。
また、配達先の住宅の庭に着陸もしません。着陸をさせると、そこで人と接触する危険性があるからです。上空12フィート(約3.6m)のところから、荷物を投下するというやり方のようです。いかにもアメリカらしいやり方ですが、ガラスのコップなど割れ物の注文ができるのかどうか心配になります。
このような人口が密集していない地域では、注文量が少なく、配達のための移動距離も長くなります。極端なことを言えば、1日に1つの荷物を配達するために1時間ほど自動車で走らなければならないということが起こります。これをドローンによる自動化をすることで、配送コストを圧縮するというのがAmazon Airのねらいのようです。
数年前、ドローンによる宅配が近未来の夢として語られ始めた頃、多くの想像イラストが、高層マンションのベランダにドローンが着陸をして荷物を届けてくれるというものでした。夢を描いているのですから、ケチをつけるのは無粋なことですが、これを実現するにはきわめて難しい課題が山積みです。
ひとつは都市空間の中で飛行することの難しさです。特にガラス張りの高層ビルは、測位衛星が発する測位信号を乱反射するため、位置情報が乱れがちになります。都市の中心部では地図アプリの現在地が安定をしないという経験を多くの人がしているはずです。このような環境で、正確な位置を把握して飛行をするのは簡単ではありません。
2つ目は墜落をした場合の被害が甚大になる可能性があることです。下にはたくさんの人が歩いていて、車も走っています。故障により墜落をした場合、人にあたりでもしたら、取り返しのつかない事故となります。自動車を運転している時、突然ドローンが落下してきたら、驚いて、交通事故を起こしてしまうかもしれません。
3つ目は、ベランダへの着陸には神技が必要になります。マンションのベランダは、上階の住人のベランダの床がそのまま天井になっており、サッカーのゴールポストのように、横から侵入して、すぐに垂直降下をして着陸しなければなりません。ドローンは着陸地点の真上にいったん停止をして、そこから垂直降下をして着陸するということは難しくありません。しかし、横に移動して、それから静止し、着陸するというのは神技的な操作が必要になります。
ましてや、住人が「荷物がきた!」と喜んで、ベランダに出てきたりしたら、住人に激突をして大事故になりかねません。
4つ目は騒音です。ドローンが出す騒音は意外にうるさく、音量だけでなく、蚊の羽音のように人の神経に触る音を出します。これが毎日飛んでいると、マンションの住人からは間違いなく苦情が出てくることになります。
つまり、都市部でドローン配送をするということは、条件の悪い環境の中で、高度な飛行を行い、安全を確保しなければなりません。非常に難易度の高いドローン活用になります。
では、美団はいったいどうやって、この難問をクリアしたのでしょうか。今回は、美団が深センという大都市で、ドローン配送を確立するために開発をしたテクノロジーについてご紹介をします。
続きはメルマガでお読みいただけます。
毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。
今月発行したのは、以下のメルマガです。
vol.157:中国のユニコーン企業の現状。第1世代ユニコーンはどれだけ生き残っているか
vol.158:アップルが進める脱中国化。最大の課題は熟練工の不足
vol.159:2023年、スマホはどう進化をするか。今年話題になるかもしれないスマホテクノロジー