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給料はデジタル人民元で転送。公務員のデジタル給与支払いが始まる

デジタル人民元の試用地域は現在17省市26地区となり現在でも増え続けている。さらに、公務員の給与のデジタル人民元による支払いも始まったと端庄優雅大件事が報じた。

 

公務員の給与を全額デジタル支払い

デジタル人民元の試用地域は現在17省市26地区。昨年5月時点の統計で、すでに2.64億回、830億元が決済された。デジタル人民元に対応をしている商店数も456.7万軒となった。

さらに、公務員を中心にデジタル人民元による給与支払いが始まっている。江蘇省常熟市の金融監督管理局と財政局では、2023年5月から公務員の給与支払いを全額、デジタル人民元払いに切り替えた。また、江蘇省徐州市政府は「徐州市デジタル人民元試用実施方案」を公開し、財政予算及び国営企業では日常の企業間決済をデジタル人民元で行うことを推進し、公務員の給与支払いの一部または全部をデジタル人民元で支払うことを決定した。

このような試みは、デジタル人民元の試用が始まった2020年4月から徐々に進んでいる。蘇州市相城区の公務員は、交通手当の50%が5月からデジタル人民元で支給されることになった。また、蘇州市呉江区では、6月から公務員の10386人の給与が全額デジタル人民元で支給されるようになった。

このようなデジタル人民元での給与支給は、公務員と公営企業を中心に各地で進められている。

▲デジタル人民元のアプリ。ウォレットは複数つくることができる。デジタル人民元アプリは、QRコードNFCタッチ決済の両方に対応している。

 

不便は感じない全額デジタル給与支払い

デジタル人民元で給与を受け取った人に不便はないのだろうか。すでにデジタル人民元で給与を受け取るようになって1年以上になる湖南省のある公務員によると、不便はまったく感じていないという。

必要なことは、デジタル人民元のアプリをダウンロードし、本人確認の設定などをして開通することだけだった。職場の経理に自分のアカウント情報を伝えるだけで、給与が自動的に転送されてくるようになる。

デジタル人民元支払いに対応をしている商店はまだまだ限定的であるものの、スマートフォン上で自分の銀行口座に転送することができる上、銀行のATMでは手数料なしでデジタル人民元を現金に変えることができる。

▲デジタル人民元アプリを使えば、NFCによるタッチ決済が利用できる。商店の支払いだけでなく、個人間で資金を転送する時もタッチで可能になる。

 

スマホ決済に連結したことで利便性が大きく向上

また、スマホ決済「支付宝」(ジーフーバオ、アリペイ)、「微信支付」(ウェイシン、WeChatペイ)にも対応をしている。銀行カードの紐付けと同じようにデジタル人民元を紐づけるだけで、アリペイなどにチャージ、あるいはポストペイ方式で利用できるようになる。

デジタル人民元だけで給与の受け取りと支払いをしようとすると、まだ未対応の商店、サービスもあるため不便さを感じるが、アリペイ、WeChatペイと紐付けをすれば以前と変わらず便利に使え、不便に感じたことはまったくないという。

現在、公務員と国営企業で給与のデジタル人民元支払いが進んでいる。いずれ民間企業にも普及をしていくことになる。中国は着実に無現金社会へと進んでいる。

▲デジタル人民元では、開通する時に、好きな銀行のウォレットを作成することができる。この時、「網商銀行」(アリペイ)または「微衆銀行」(WeChatペイ)を選択しておけば、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」でデジタル人民元が使えるようになる。

▲アリペイ決済をする時に、決済方法をデジタル人民元に指定をしておくと、ポストペイ方式で支払いができる。アリペイ対応店舗で決済できるため、不便さはまったく感じないという。