中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

もうこれ以上の地下鉄はつくれない。限界に達した中国各都市が注目をする香港地下鉄のTOD

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 179が発行になります。

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、中国と香港の地下鉄についてご紹介します。

 

中国の地下鉄は、1969年に開通した北京地下鉄1号線が最初ですが、この15年、20年ほどはどこの都市でも地下鉄建設ラッシュでした。都市を訪れるたびに地下鉄が増えていて、人の流れが大きく変わったことに驚かされます。

2022年12月末の交通運輸部の発表によると、中国の地下鉄は53都市で290路線が運営され、営業キロ数は9584kmに達したとのことです。日本の地下鉄は、Wikipediaの情報によると、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の9都市で、営業キロ数は433.1kmですので、中国の営業キロ数は日本の20倍上もあります(ただし、中国では日本のような郊外私鉄という考え方がないため、日本の私鉄に相当する部分も地下鉄が役割を担っています)。

都市別に見ても、上海市営業キロ数が900kmを超え、北京市も800kmを超えています。このため、「北京市内での遠距離恋愛」が話題になったこともあります。すでに北京市の端から端までだと2時間近く地下鉄に乗ることになります。市の中心部の会社に勤めている東へ45分の男性と、西へ45分の女性が恋愛をすると、休日に恋人の家に行くのに地下鉄で1時間30分、歩く時間を考えると2時間近くかかることになります。休日に恋人の家に遊びに行って帰ってくると、移動時間に4時間ほど取られてしまうことになるのです。同じ北京に住んでいながら、遠距離恋愛をしているようだというわけです。

 

しかし、やみくもに地下鉄を建設してだいじょうぶなのでしょうか。地下鉄は鉄道路線の中で最もコストがかかります。特に新路線は深部地下に建設せざるを得ず、さらに建設コストがかかります。一方、運賃は政策的に安く抑えられています。北京地下鉄の場合、初乗りが3元(約60円)で、ゾーン制で加算され、最高でも10元(200円)に抑えられています。これでは、地下鉄をつくりすぎると、運営会社が破綻をしかねません。

そこで、中国政府は都市の公共交通の整備を奨励しながら、同時に地下鉄建設審査基準を厳しくするということを行なっています。都市交通は、何も地下鉄がすべてではありません。輸送能力は地下鉄よりも落ちますが、モノレールやライトレール(鉄道と路面電車の中間形態)などは地下鉄よりも低コストで建設することができ、路線バスも郊外などでは活用できる可能性があります。中国政府は、地下鉄建設計画の審査を厳しくすることで、このような多様な公共交通を組み合わせて、都市交通を整備することを促しているのです。

しかし、まだ地下鉄がない地方都市にとって、「おらが街にも地下鉄を」は悲願になってしまっています。あと先を考えずに、「とにかく1本地下鉄を」で計画を立ててしまい、審査が通らずに、関係者が肩を落とすということが続いています。

 

国務院は2018年に「都市軌道交通計画建設管理の更なる強化に関する意見」で大まかな基準を出しました。地下鉄が建設できるのは、地域GDPが3000億元以上、公共財予算が300億元以上、市の人口が300万人以上です。かなり厳しい基準です。また、ライトレールに関しても、地域GDPが1500億元以上、公共財予算が150億元以上、市の人口が150万人以上という基準になっています。

政府は、やみくもに地下鉄を建設して、運営会社が破綻することを懸念するようになっています。そのため、この基準に達していても、採算が取れないような建設計画は認めないようになり、中国の地下鉄建設はようやく一段落をしました。

 

そこで、注目をされているのが、香港地下鉄(MTR)のTODです。TODとはTransit Oriented Development(公共交通指向の都市開発)で、簡単に言えば、マイカーではなく公共交通で移動ができるように都市を計画をしていくことです。香港は、面積が狭く、人口も多いことから、当初からこのTODを意識した地下鉄建設が行われてきました。

理想的なTODであれば、都市を高密度化することができ、都市活動のあらゆる効率があがります。また、地下鉄運営は駅付近の不動産運営と一体化できるため、運営会社の財務状態も改善できます。

今、中国の地下鉄がつくれずに、残念な思いをしている都市では、この香港の手法に注目をして、中国でもTODを行おうという機運が生まれています。そこで、今回は香港のTODとはどのようなものであるかをご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

先月、発行したのは、以下のメルマガです。

vol.174:中国でも地位を獲得している日本料理。なのに、なぜ日本企業の撤退が続くのか

vol.175:中国で広がるAI面接による採用。AIが面接を受け、AIが採用を決める時代がやってくる?

vol.176:アリペイ運営のアントに上場中断と株主構成の変更。統治権を奪われたジャック・マーに何が起きていたのか?

vol.177:まったく新しいアプローチ、レベル2+自動運転とは何か。テスラのFSDを追いかける百度のANPとファーウェイのASD

vol.178:0を1にするのではなく、-1を1にする。新小売で蘇った百貨店「銀泰百貨」は何をしてきたのか