ライブコマースはこれまで中国以外ではあまり流行ってこなかったが、TikTok Shoppingがサービスインした東南アジアで、ライブコマースビジネスが成長を始めている。中国企業は現地に制作拠点を置き始めていると霞光社が報じた。
東南アジアでTikTok Shoppingがスタート
東南アジアのEC状況が大きく変わりつつある。ライブコマースの浸透だ。ライブコマースは中国だけで受け入れられた販売形式と言われ、欧米などではサービスは提供されてみたものの、ほとんど関心を持たれていない。しかし、東南アジアではライブコマースが重要な販売チャンネルになりつつある。
その原動力になったのは、東南アジアでも若者層に圧倒的な人気を持つTikTokが、EC機能であるTikTok Shoppingを東南アジアでスタートさせたことだ。2021年3月にインドネシアで、2022年4月にはベトナム、タイ、マレーシア、フィリピンで、2022年6月にはシンガポールでスタートさせた。TikTokの商品を出品し、TikTokの中から商品が購入できるようになり、その商品を紹介するショートムービー、ライブ配信を行えるようになった。
東南アジアでは毎月セールがある
中国では11月11日、欧米ではブラックフライデー(感謝祭の翌日、年末商戦の始まり)というビッグセールが人気だが、東南アジアでは、毎月のダブルデー(2月2日、3月3日…)に人気がある。
東南アジア各国は経済成長が目覚ましく、多くの人の給料が上がり続けている。そのため、貯蓄に回す人はほとんどなく、毎月もらった給料のほとんどすべてを使い切ってしまう。これにより、年に数度のビッグセールよりも、毎月のセールが好まれるのだ。
日用品、化粧品、服の3つが人気
売れているのは、日用品、化粧品、ファッションの3分野だ。東南アジアでも、仕事が終わった後、TikTokをだらだらとテレビのように流し見をする習慣が広がっている。このようなショートムービーの中に、気の利いたキッチン用品や見たことがない化粧品、近所では売っていない衣類が紹介されるとついつい買ってしまうことになる。
現地化を進める中国企業
すでに中国のさまざまなブランドが、東南アジアでの販売を考える時には、TikTok Shopを中心に考えるようになっている。すでに東南アジアでTikTokライブコマースを行うためのトレーニングをビジネスとする企業も登場している。
中国ブランドが東南アジアで販売をするのにも重要となるのが「本地化」(現地化、ローカライズ)だ。たとえば、ライブコマースで中国人が中国のリゾート地からライブコマースをしているような場合、当南アジアの消費者はすぐに別のライブコマースに移ってしまう。東南アジアの風景の中で、現地の人が説明するライブコマースに人が集まる。
そのため、現地にMCN(制作スタッフ)を設立するのが必須になっている。
中国で好まれるライブコマースは、商品の説明をしっかりしてくれることと、大幅な割引だ。しかし、東南アジアでは求められるものが多様だ。単にエンターテイメントとして歌とダンスを楽しみたいという人もいれば、大幅な割引を求める人もいる。また、詳細な商品説明を求める人もいる。
ライブコマースをどのようなテイストにするかにより、集まる消費者の層が変わってくる。その感覚は、やはり現地のスタッフの方が優れている。
成長率が高いのはタイとベトナム
東南アジアのEC状況はまだまだ初期段階にある。しかし、成長率は世界でも有数の高い地域になっている。ECツールの開発企業「特看科技」(Tabcut)の調査によると、インドネシアのTikTok Shopの流通総額(GMV)は毎月1.9億ドル(約250億円)、注文数は4500万件になっているという。また、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピンでも月のGMVが1億ドルを超えてきているという。特に、タイとベトナムの成長力が高い。
中国国内のライブコマースはすでに淘汰の時期に入っている。市場そのものはまだ成長過程にあるものの、売れるライブコマースと売れないライブコマースの明暗が生まれるようになっている。中国市場の頭打ち感が見えている中で、東南アジアに成長を求める中国ブランドは今後とも増えていくと見られている。