中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

小型EV、1000kmのんびりゆったり家族4人旅。コツは80%急速充電の活用

カタログ航続距離400kmの小型EVで、家族4人で高速道路1000kmを走破した人がその内容を公開している。EVにとって、高速道路は航続距離が短くなる鬼門。しかし、鄒城悦享はのんびり旅を楽しめたという。そのコツは80%急速充電の活用だった。

 

普及をしても寒冷地と高速の課題が残るEV

中国で普及が始まっている電気自動車(EV)だが、多くのオーナーがさまざまな問題を指摘している。充電ステーションが足りずに充電ができないという問題は、多くの都市で解消しつつあるようだ。しかし、大きな問題が寒冷地で航続距離が短くなる問題だ。低温ではバッテリーの能力が発揮できない、暖房を使うなどの理由で航続距離が短くなる。零下になる寒冷地で、バッテリー切れで立ち往生してしまうと生命の危険すら危ぶまれる。

もうひとつの問題が高速道路だ。高速走行は空気抵抗が大きくなるため、車種にもよるが2割から3割程度は航続距離が短くなるという。しかも、充電できるポイントがサービスエリアしかない。高速の途中で立ち往生をしてしまった場合は、追突される危険性もあり、救援を呼ぶ他方法がなくなる。

 

小型EVで1000kmの移動に挑戦した家族4人

ある4人家族が、山東省の済寧市から浙江省の温嶺市までの1000kmの移動をEVで行った。その行程はすべて高速道路であることから、他のEVユーザーの参考になるこかもしれないと、その様子を公開した。

この家族の車は零跑汽車(リープモーター)のT03。このうちの軽享版と呼ばれるエントリーモデルで、価格は5.98万元(約102万円)。日本の軽自動車に近い小型車だが、車体が軽い分、航続距離はカタログ値で403kmと長い。中国ではこのような小型EVが、通勤用、買い物用として売れ始めている。しかし、高速道路を長距離走行するというのは無謀と言えば無謀。しかし、特に大きなトラブルは起きなかった。

f:id:tamakino:20210902102359j:plain

▲鄒城悦享の愛車「零跑汽車T03」。価格は100万円程度ながら航続距離は403kmと長い。

f:id:tamakino:20210902102427j:plain

▲鄒城悦享が走行したルート。片道1000km、往復2000kmの長旅だ。片道12時間以上かかる。

 

事前に充電ステーションの位置を把握することが大切

まず、あらかじめルート検索をし、充電ステーションの位置を確認しておくことが大切だという。高徳地図などの地図アプリでは、ルート検索に「徒歩」「自転車」「公共交通」「自動車」「タクシー」「新エネルギー車」などが選べるようになっており、新エネルギー車を選んでルート検索をすると、対応可能な充電ステーションの位置も表示される。

 

ゆっくり一定速度で走れば航続距離は伸びる

また、子ども2人、大人2人の家族旅行であり、時間に追われているわけではないので、安全とバッテリーの節約を考えて、80kmから90kmでゆっくりと走行することにした。また、追い越しなどもできるだけせずに、速度が一定になる運転を心がけた。夏場であるため、エアコンは常につけていた。

EVの実際の航続距離は、カタログ値どおりいかないのは周知のことだが、人によっては半分以下になるとも言うが、このような走り方であればカタログ値の70%から80%でいけたという。

f:id:tamakino:20210902102419j:plain

▲高速の充電ステーションは、時間帯によって価格が異なっている。深夜0時から朝8時までの間は安い。この安い時間帯を利用して移動するのもひとつの方法。

 

余裕を持って充電箇所をリマインド設定

ただし、充電の仕方にはコツがあるという。実際の航続距離は300km程度と想定して、100kmの余裕を残して、200km以内の充電ステーションを利用することにした。高徳地図では、経路上の充電ステーションを距離順に並べて、指定した充電ステーションが近づくとリマインドしてくれる機能がある。これを設定しておくことで、充電ステーションのことばかり気にする必要がなくなる。

f:id:tamakino:20210902102423j:plain

▲高徳地図アプリでは、ルート沿いの充電ステーションの一覧を表示させることができ、リマインダーをセットすることができる。近づくと音声で教えてくれる。

 

80%充電をこまめにするのがコツ

もうひとつのコツが、満充電にしないということだ。200kmごとに充電をするということは、2時間半ごとにサービスエリアによって充電をすることになる。満充電にするには2時間近くかかるため、これでは煩わしすぎる。しかし、80%充電であれば急速充電ができ、40分ほどで充電ができる。子どももいるので、2時間半ごとに40分程度の休憩をはさむのはちょうどいい。

確かに、急いでいる場合は充電は煩わしいが、時間に追われていない家族旅なので、疲れも溜まらずちょうどいいペースだと感じたという。安全運転にも寄与し、満充電にしないことでバッテリーに対する負担も軽減される。

f:id:tamakino:20210902102404j:plain

f:id:tamakino:20210902102415j:plain

▲旅行先で撮影した写真。のんびり旅であれば、小型EVでもじゅうぶんに家族旅を楽しめる。

 

EVとガソリン車は異なる乗り物

EVは、どうしてもガソリン車と比べられ、その欠点ばかりが強調される。しかし、ガソリン車とは根本的に異なるツールなのだ。PCとスマホを比べて、スマホは画面が小さい、キーボードが使いづらい、周辺機器が接続できないと文句ばかりを言っている人はいない。EVにはEVの使い方がある。都市内で使うのであれば、昼間は充電のことは気にせず走って、夜に充電するということができる。高速を使って遠出をする時には、地図アプリの機能をうまく使って、のんびりとした旅を楽しむ。ガソリン車で一気に駆け抜けていたら楽しめなかった旅を提供してくれる。