中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

流量から留量へ。UGCからPGCへ。変わり始めたECのビジネスモデル。タオバオの変化

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 132が発行になります。

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、タオバオの大きな変化についてご紹介します。

 

淘宝網タオバオ)は、言うまでもなくアリババを象徴するECサービスです。そのタオバオが、ソーシャルEC「ピンドードー」、SNS「小紅書」(シャオホンシュー、RED)、ショートムービー「抖音」(ドウイン)、「快手」(クワイショウ)などに市場を蚕食されて苦しい立場に追い込まれているということは数度にわたってご紹介してきました。

「vol.117:アリババに起きた変化。プラットフォーマーから自営へ。大きな変化の始まりとなるのか」では、プラットフォーム運営ではなく、直接自営店舗を出そうと試みていることをお伝えしました。

「vol.124:追い詰められるアリババ。ピンドードー、小紅書、抖音、快手がつくるアリババ包囲網」では、なぜタオバオが追い詰められているのか、その理由をご説明し、対抗策として「淘特」「態棒」などの新たなサービスを始めていることをご紹介しました。

 

しかし、このような対策というのはあくまでも受け身のもので、販売業者や消費者が他のサービスに流れないように、他のサービスそっくりのサービスを取り入れるという消極策にすぎません。

しかし、いよいよアリババが動き始めました。受け身ではなく、攻めの策を打ち始めています。

それはタオバオアプリの中に「発見」というタブをつくったことです。この「発見」タブをタップすると、「ライブ」「発見」の2つのサービスが利用できます。

ライブはいわゆるタオバオライブのことで、ライブコマースを見ることができます。以前のタオバオライブは、人気サービスであったのにも関わらず、メニューの奥の方に隠れていてアクセスするには数ステップが必要でした。これが「発見」タブから簡単にアクセスできるようになりました。

もうひとつの「発見」では、出品業者が投稿した商品の写真、ショートムービーを見ることができます。これは以前は「逛逛」(グワングワン)と呼ばれていたもので、小紅書に非常に似通ったサービスです。

これで、タオバオは二本立てのECとなりました。ひとつは従来通り、商品を検索して購入するEC。日本のアマゾンや楽天と基本的には同じECです。もうひとつは「発見」。ライブコマースや商品の森の中を散歩して、偶然の出会いから購入するECです。

これはアプリとしてはメニューの整理を行っただけの小さな変化ですが、ECとしては大きな変化になります。タオバオが生まれて20年余、最大の変化になります。なぜ、この小さな改善が最大の変化と言えるのか、それをご説明するのが今回のメルマガの主眼になります。

また、タオバオは、小紅書や抖音の形式は取り入れましたが、あえて変えている部分があります。これが功を奏するかどうかは未知数ですが、アリババは、この変化を糧に、小紅書や抖音の先に進もうとしています。これについても、後ほどご説明をいたします。

いずれにしろ、米国で生まれたECというビジネスは、中国で大きな変化を遂げ、今、次の時代に進もうとしていることは間違いありません。ただ、「日本でもいずれ同じことが起こります」と言えれば、メルマガ的には都合がいいのですが、果たしてそうなるかどうかはよくわかりません。中国ではもはやライブコマースはオンライン小売の重要なチャンネルになっていますが、ライブコマースが軌道に乗っているのは東南アジアの一部くらいで、多くの国ではほとんどうまくいっていません。ライブコマースも、そしてこれからご説明するタオバオの大きな変化も、中国特有のものである可能性もあります。

 

昨年の12月、アリババでは大きな人事異動がありました。アリババの事業部組織は数年ごとに大きく変わり複雑ですが、大淘宝と呼ばれる「タオバオ」「天猫」「アリママ」、B系と呼ばれる「淘菜菜」「淘特」「1688」などの小売サービス、本地生活サービスと呼ばれる「盒馬鮮生」「ウーラマ」などの3つに分類されるのが一般的です。

このうちフーマフレッシュ、ウーラマなどはECとはまた異なるビジネスなので、統括者が異なりますが、大淘宝とB系は異なる統括者が立ち、扱う事業も入れ替わるのがこれまででした。

ところが、12月の人事異動で、B系を統括していた戴珊(ダイ・シャン)が、大淘宝も統括することになりました。つまり、アリババのオンライン小売を戴珊が1人で統括をすることになり、各サービスが横断的にシナジー効果を生むことができる体制になったのです。アリババがさまざまな試みを始めたのは、戴珊が大淘宝を掌握して以降のことです。

現在のアリババの張勇(ジャン・ヨン)CEOは、以前、天猫の責任者でした。この時に、あの独身の日セールを企画して、大淘宝を大きく成長させた人です。その功績により現在のCEOとなりました。その張勇が大淘宝の統括者として指名をしたのが戴珊です。なぜなら、戴珊はアリババのDNAの継承者だからです。

 

戴珊は、アリババの創業メンバー「アリババ十八羅漢」の一人です。そして、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)の最後の教え子です。ジャック・マーは創業する前、杭州電子工業学院(現・杭州電子科技大学)で英語と国際貿易の教師をしていました。その時の教え子が戴珊で、ジャック・マーの最後の教え子とも呼ばれます。そして、ジャック・マーが起業をすると、学院を卒業した戴珊はジャック・マーの創業に参加をしました。

戴珊はジャック・マーを崇拝している女性で、「私はこの仕事をしたいと主張したことはありません。ジャック・マーがこの仕事をしろと言えばそれをしますし、あの仕事をしろと言えば従います」というもので、常にジャック・マーのそばにいて、忠実な右腕としてアリババを成長させてきました。

現在、創業メンバーの十八羅漢の多くのメンバーがアリババを離れたり、リタイアをする中で、アリババのDNAを持つメンバーとして戴珊への求心力は日に日に高まっています。

張勇CEOは、その求心力の高まりも計算に入れて、オンライン小売事業のほとんどを統括させるという、今までにやったことがない組織改変をしたのだと思います。求めているものは、大胆な改革です。大淘宝を今の時代に合わせて、根底から作り直す。そのようなことを期待し、戴珊もそれに応えて、半年という短い間に、矢継ぎ早に改革をしてきました。

そして、今度の淘宝アプリの変更で、その方向が見えてきました。いよいよ、(中国の)ECが大きく変わる時代に入ります。それはパラダイムシフトと言ってもいいほどの大きな変化になります。

今回は、どこが大きく変わろうとしているのか。それをご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.131:ショッピングモールは消滅する。体験消費が物質消費に取って代わる。モールが生き残る4つの方法