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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

公的機関が運営するシェアリング自転車は、テクノロジーの力で良質なマナーを促す

国営企業「人民出行」が電動のシェアリング自転車サービスの展開を始めている。ヘルメットの着用、二人乗りなどを自動検知する仕組み、正しく駐輪するジオフェンスなどのテクノロジーを使い、マナーの問題が起きないように配慮されていると電動車行業平台が報じた。

 

交通インフラとして定着をしたシェアリング自転車

中国ではシェアリング自転車が生活の中に定着し、以前のような過剰投入による放置自転車問題もほぼ解消されている。このシェアリング自転車は公共交通としても重要視されるようになっている。都市部では地下鉄やバスが届かない最後の1kmを補う交通ツールとして、地方では短距離の移動ツールとして必要とされるようになっている。

さらに、中国は電動自転車がある。アシストではなく、バッテリーで自走する自転車で、制限速度は25km/hであるものの、実質的な低速電動スクーターだ。この電動車であれば10km程度の移動までカバーできる。

▲政府は距離に応じた公共交通ツールを配置する方針だ。3km以内の短距離は民間のシェアリング自転車でカバーをし、10km以内は公共の電動自転車でカバーをする。

 

公共交通を強化するために生まれた人民出行

この電動車を公共交通のツールとして普及させる目的で設立された国営企業が「人民出行」(PeopleGo、http://www.peoplego.cn)だ。国家発展改革委員会、公安部、工信部などの中央組織が共同で設立をし、5Gスマート交通を普及させることが目的になっている。

この人民出行が独自の電動車を開発し、湖南省岳陽市などの地方都市からサービスの展開を始めている。当面の目標は100都市でのサービスを展開することだ。

▲人民出行の電動自転車。自転車だが、電力で自走をする。実質的な低速電動スクーターだ。

 

テクノロジーで良質なマナーを促す

この人民出行の電動車の特徴は、テクノロジーによってマナーを制御しようとしていることだ。

電動車は16歳以上であれば免許不要で乗ることができるが、ヘルメットの着用が義務付けられており、2人乗りも小さな子どもを除いて禁止をされている。しかし、このヘルメット着用、2人乗り禁止がなかなか守られない。

そこで、人民出行の電動車は、テクノロジーによって利用者の安全を守る機能がある。ヘルメットにはセンサーが備えられていて、着用しているどうかを感知し、未着用では電動車のスイッチが入らないようになっている。

また、重量センサーが内蔵されていて、2人乗りをした場合、バッテリー駆動が停止をするようになっている。

▲テクノロジーだけではなく、スタッフによる整理もこまめに行われている。駐輪場がきちんとしていると返却をする人もきちんと返却をする。

▲コロナ禍では、スタッフが整理だけでなく、1日3回以上の消毒をおこなっている。

 

正しく駐輪しないと返却ができない仕組み

また、シェアリング自転車で問題になっていたのが、駐輪場での駐輪マナーだ。駐輪の仕方が乱雑であるため、通行のじゃまとなることがあり、わきに積み上げられてしまうことがある。これを見て、返却する人がさらに乱雑に返すようになり、駐輪場のマナーが大きな問題になっていた。

人民出行では、BluetoothRFID電子タグなどを使ったジオフェンスを設定し、駐輪場の枠内に返却をしないと、返却処理ができないようになっている。また、停止線に対して直角に停車する「90度駐輪」も感知するようになっているため、1台分の枠内にきちんと収めないと返却処理ができない。

また、駐輪場には監視カメラが設置をされ、AIが電動車などを物体認識し、違法な駐輪状態、他の自転車の駐輪、盗難、イタズラなどを認識し、スタッフにアラートをあげる。また、駐輪場の空き台数もリアルタイムで認識できるため、利用者に利用できる駐輪場、返却可能な駐輪場をスムースに案内することができる。

使う人のマナーに頼るのではなく、テクノロジーでマナーを誘導するというコンセプトのシェアリング電動車になっている。このような公共性の高いシェアリングによる公共交通の整備は、地下鉄建設の予算が組めない地方都市などから注目をされている。

▲話題になっているのが90度停車。ジオフェンスの中に入れても、停止線に直角に置かないと返却処理が完了しない。