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もはやサブカルの聖地ではない。ビリビリが生き残るために失ったもの

動画共有サービス「ビリビリ」が変わり始めている。当初は、ACGNを中心としたサブカルの聖地だったが、収益化の柱としてタイアップ広告を拡大したため、サブカルから「どんな動画もある」総合サイトに変貌しつつあると市界が報じた。

 

もはやサブカル映像だけではなくなっているビリビリ

中国の動画共有の中心地となっているビリビリ。ネット民からは「Bサイト」という略称で呼ばれることが多い。

ビリビリはボーカロイド初音ミク」の動画を共有することからスタートをしたため、サブカル、特にACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)関連の動画が多いというイメージがあるが、実際は「どんな動画でもある」が正しい。

2003年5月にスタートしたEC「淘宝網」(タオバオ)は、多数の販売業者が参加をし「どんなものでも売っている」というイメージが多くの消費者を惹きつけて成長をした。

ビリビリも同じで、「どんな動画でもある」というイメージが成長の源泉となった。ビリビリは動画の内容を21ジャンルに分類しているが、そのうちACGNに直接関連したジャンルは3つでしかない。実際、最近は中学、高校の学習過程が学べる学習動画が人気になっている。

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▲ビリビリの陳睿(チェン・ルイ)CEO。サブカルサイトだったビリビリを発見し、サブカルの聖地に育て上げた。しかし、まだ収益化をすることに苦しんでいる。

 

ビリビリ収益化の要はタイアップ広告

しかし、ビリビリの経営は厳しい。2021年の財務報告書によると増収減益となった。営業収入は193.84億元で前年から61.54%増と大きく伸びている。しかし、赤字幅も拡大した。純損益は55億元で、前年の26億元の2倍以上となった。

営業収入の内訳は、2021年Q4では、スマホゲーム収入が12.95億元で15%増、ポイントチャージ収入が18.95億元で52%増、広告収入が15.88億元で120%増、EC収入が10.03億元で35%増となった。

つまり、三本柱の「ゲーム」「チャージ」「広告」がほぼ同じ額であり、その中で広告の伸び率が突出をしている。今まで、ビリビリの収入の源泉であったゲームとチャージから、広告を主体としたビジネスモデルに移行をしていることがはっきりとした。

2021年には、未成年のゲーム規制が行われただけでなく、文化部によるゲームの内容審査に時間がかかるようになり、ゲームが公開できないという状況が生まれた。これにより、テンセント、ビリビリ、快手の株価が大きく下がった。しかし、ビリビリの場合、実はかなりゲーム依存から脱却していたのだ。

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▲ビリビリの純損益は拡大傾向にある。広告収入を強化する必要に迫られているが、それにより、サブカル的な雰囲気が失われていくことを嘆く古いファンもいる。

 

最も多い動画ジャンルは知識学習系

この広告は、ゲーム、EC、家電製品、食品飲料、自動車の5つが主な広告主になっている。このような企業が配信主に依頼をし、タイアップした配信映像を作成するというものだ。

この広告収入を確保するために、ビリビリは失ったものもある。2009年の段階で、動画の配信主の70%以上はACGN関連だった。2012年には科学技術関連の配信主がACGN関連の配信主に迫る勢いとなり、それ以来、ビリビリはACGN以外のジャンルの動画共有を伸ばす施策を行い、扱う領域の幅を広げてきた。これは古くからのビリビリファンから見ると、日和見であり、裏切りだった。「Bはサイトは死んだ」と言って去っていくファンもいた。しかし、去っていくファン以上に多くの視聴者を獲得していった。2021年には、科学技術や学習といった知識学習系の動画が全体の49%にもなっている。

これにより、企業にとっては商品とコラボレーションがしやすい動画が多くなり、広告出稿が増えている。

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▲2021年のビリビリの営業収入内訳。広告が27.46%と大きな存在になってきた。伸び率も前年比120%増と大きく伸びている。

 

若者が好きな動画ならなんでもあるサイトを目指すビリビリ

ビリビリはいまだにACGNというサブカルの動画もたくさんあるが、それがメインではなくなっている。おそらく、コアなACGNファンはビリビリではなく、よりディープな場所に移っているのだろう。彼らからすれば、ビリビリはもはや苦笑の対象になっているのかもしれない。

しかし、ACGNのライトなユーザーである大多数の若者にとってビリビリは居心地がよく、ビリビリは広告収入を伸ばすことができている。ビリビリは、もはやサブカルの聖地ではなく、若い世代が見たいと思っている動画ならなんでもあるサイトになっている。

ビリビリは2024年に黒字化することを目標にしている。