新しいタイプのゲームカフェが広がっている。家庭用ゲーム機と大画面ディスプレイを設置し、くつろいでマルチプレイが楽しめるというものだ。カップルや家族づれが楽しんでいる。ビジネスとしても初期投資が少ない部類に入るため、大都市から地方都市にまで広がろうとしていると游研社が報じた。
新世代のゲームカフェが広がる
スマートフォンの普及、コロナ禍などでネットカフェに逆風が吹いていたが、新しい形でのゲームカフェが続々誕生している。従来のネットカフェと異なるのは、ソファが設置され、大画面ディスプレイが設置され、個室を設置しているところも多く、快適にくつろいで過ごせる点だ。
もうひとつの特徴が、店主がビリビリや小紅書(シャオホンシュー、RED)などで頻繁に配信をしていることだ。店内の様子がわかり宣伝にもなり、SNSで混んでいるかどうかどうかを尋ねたり、予約をしたりすることができる。店主としては、店の宣伝だけでなく、配信による広告収入や物販などもねらっている。
マルチプレイゲームの流行が生んだニュータイプゲームカフェ
突如として、新しいタイプのゲームカフェが誕生したのには、「It Takes Tow」が人気となったことが大きい。Windows、PlayStation、Xbox、スイッチなどで遊べるが、特徴的なのが2人プレイが前提になっていることだ。プレイヤーは離婚の瀬戸際に追い込まれた夫婦となり、魔法の世界を探検する。協力プレイは、オンラインでもオフラインでもできるが、オンラインでは同じプラットフォームである必要がある。Xbox同士、スイッチ同士でないと協力プレイができない。一緒にプレイをしたい相手が同じゲーム機を持っているとは限らないため、ゲームカフェにきて楽しむ人が増えている。
また、ゲームは好きだが、ゲーム機やゲーミングPCまで揃えるのはちょっとと思っている人たちが、普段はスマホでゲームを楽しみ、週末などにはゲームカフェの大画面で楽しむという人たちも増えている。
初期投資が安いビジネス
もうひとつの理由が開店コストが小さいということだ。スイッチやプレイステーション、Xboxなどを購入し、後はディスプレイとソファだけで済む。200平米の店舗で、だいたい10万元から40万元(約820万円)程度で、その気になれば8万元(約160万円)程度での開店も可能だ。
また、宣伝広告費なども従来は近隣にチラシを巻いたり、街頭で配ったり、雑誌広告を利用する必要があったが、現在ではネットで済むようになっている。小紅書や抖音などで店内の様子を紹介するコンテンツを高頻度で発信することで、それを見て、客がやってきてくれるようになる。特にビリビリでの配信は必須になっているようで、店主自ら日々状況を発信している。配信動画の方が人気になれば、広告収入が入るようになり、副収入も期待できる。
それでも失敗をするゲームカフェもある
しかし、すべてのゲームカフェがうまくいくとは限らない。SNSで発信をしているだけに、その不人気ぶりも多くの人に明らかになってしまう。
杭州奇跡電玩は、今年2022年3月からゲームカフェを始め、毎日ビリビリで店舗の様子を配信し続けたが、ほぼ毎日、客がほとんど入らない状態が続いた。4月9日に満員になったのをピークに4月23日には閉店を決め、その経営状態を詳細に公開している。杭州奇跡電玩はこの失敗にもめげず、次の店舗の準備をしているようだ。
ゲーム初心者をねらって成功したゲームカフェ
一方、好調にビジネスとして成立をしているところもある。寧波小熊電玩は、ゲームのヘビーユーザーは自宅で楽しむだろうからと、スマホゲームしか遊ばない人たちにねらいを定め、It Takes Twoが話題になっていることから、飲食店の店主と話をつけ、試用クーポンを壁に貼り、自由に取れるようにした。これを見て、ネットでIt Takes Towのことは知っていたが、遊ぶ手段を持っていない人たちがやってきた。30分ほど遊ぶと、ゲームの面白さがわかり、続きも遊びたくなる。そこからは料金を支払ってもらって遊ぶことになる。開店翌日には満席となり、常に満席状態が続いている状態だという。
副業としてはじゅうぶんな収入が得られる
某天的遊戯小屋も成功した側だ。山東省青島市のオフィス・住居ビルの一室にゲームカフェを開いたが、平日の昼は仕事があるので、妻に店を任せ、夕方から店に入る。インテリアも家庭的で、来店客との交流も進み、家族的な雰囲気の店になっていった。某天的遊戯小屋は、お金のためではなく、お客さんがゲームを楽しんでいる時間が好きで、そのような映像をビリビリで配信をすると、さらにファンが集まるようになっていった。
某天的遊戯小屋は開店半年後の収支をビリビリで公開している。わずか2ヶ月で初期投資の15万元は回収を完了し、今年の春節期間には、店で出すドリンク類の売り上げもあり、2万元以上の収入となった。ビリビリのアカウントも11.9万人がフォローをし、こちらの広告収入なども入ってくる。すでに夫婦ふたりで食べていく程度の収入にはなっており、趣味と副業を兼ねた開店としては上出来だと感じているという。
「いいねをしたら1時間無料」キャンペーンがヒット
小張是逗比は、ビリビリでの広告収入を得ることを目的に河南省信陽市に「青橘電玩」を開店した。小張是逗比は以前からビリビリで配信を続けていて収益化をねらっていたが、うまくいかなかった。どの動画も、数百から数千程度しか再生されない。
そこで、「動画を見て、いいねを10個つけてくれたら、ゲームカフェが1時間無料」というキャンペーンを行った。これが話題となり、20万以上のいいねがつき、ビリビリでの収益化の道が見えてきた。20万のいいねがついたということは、青橘電玩は2万時間の無料クーポンを配ったことになり、実質的な「無料ゲームカフェ」になったということが話題にもなり、それで、小張是逗比の動画が再生され、いいねがさらに押されるようになっている。
レトロゲームに特化したゲームカフェも
貴州省貴陽市に開店した耍蛙商店も話題を呼んでいる。ファミコン、ゲームボーイ、初代プレーステーションなどのレトロゲーム機を動態保存しており、実際に遊べるというゲームカフェだ。
レトロゲームをお金を出してまで遊びたいという人はそう多くなく、カフェでは店主がつくった電子製品やコレクションしていた中古カメラ、ガールフレンドがつくった工芸品を販売している。ゲームは無料で楽しめるようにしている。ゲームも元々は主人が子どもの頃に買い集めたものだ。
現在のゲームは、スマホゲームが主流となり、本格的なゲームを楽しむにはゲーム機やゲーミングPCを購入する必要がある。しかし、それは普通の人にはハードルが高く、本格ゲーム人口は減少しているのではないかとも言われている。この新しいゲームカフェは、そのような本格ゲームの体験店として重要な役割をするのではないかと、ゲームスタジオや電子製品の小売店も注目をし始めている。