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制限速度なし、料金所なし。走りながら充電、自動運転車もOKのスーパー高速道路が開通目前

制限速度を撤廃し、走行中充電や自動運転車にも対応するスーパー高速道路「杭紹甬高速」が2022年中に開通予定で工事が進んでいる。工事中の映像が出回ることで、多くのドライバーが期待で胸を膨らませていると楠竹一が報じた。

 

2022年中に全線開通するスーパー高速道路

スーパー高速道路「杭紹甬高速」は、杭州市、紹興市、寧波市(甬)を結ぶ全長161kmの高速道路。2022年9月に杭州市で開催されるアジア大会までに開通することを目指し、順調に工事が進んでいる。その工事風景の写真がネットに出回るようになり、多くの人がスーパー高速道路に期待をし始めている。

スーパー高速道路は今までの高速道路と大きく異なる。

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▲スーパー高速道路「杭紹甬高速」は、杭州紹興、寧波を結ぶ全長161kmのスーパー高速道路。すでに一部は通常規格の高速道路として開通しているが、2022年中に全線がスーパー規格で開通する。

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▲工事中の杭紹甬高速。白い部分が走行中充電設備。対応EVは走りながら充電ができるようになる。

 

1:料金所が存在しない

渋滞の原因となる料金所は存在しない。流入ランプから入り、そのまま出ることができる。料金はナンバー読み取りによる請求となるため、ノンストップで読み取りエリアを通過する方式になる。

 

2:交通事故を自動検知する

マイクロ波検出設備、監視カメラ、ドローンなどにより交通事故を自動検知。また、橋梁部分にもセンサーがあり、過積載車なども検出する。さらには、危険な運転をする車両の検知能力まであるという。この情報は、監視センターにより、救急車、警察車などの出動命令に使われるだけでなく、DSRC(Dedicated Short-Range Communications、専用狭域通信)により各対応自動車に送信される。ドライバーは、前方の詳細な事故情報や、通行規制を知ることができるようになる。

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▲スーパー高速道路は、事故や危険運転車の情報を自動検知し、その情報をセンターからドライバーに配信をする。

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▲道路上にはさまざまなセンサーが設置され、事故や危険運転車両を自動検知する。



3:制限速度が撤廃される

現在、中国の高速道路は制限速度が時速120kmに設定されているが、この速度制限が撤廃される。交通事故、危険運転などの検知、情報提供が可能になるため、安全性が高まるからだ。ドイツのアウトバーンに続いて、速度無制限の高速道路が登場することになる。ただし、高速で走行する自動車は、他の車両を追い抜く際に危険運転になる可能性があること、また、高速走行時の事故の保険の過失割合の取り扱いなどの問題があり、当面は制限速度時速160kmの運用となる見込みだ。

 

4:走行しながらEVの充電ができる

2車線には充電設備が埋設される。これにより、対応EVでは、走行をしながら充電をすることができるようになる。杭紹甬高速は全長161kmであるため、1時間少しで走り切ってしまうため、充電できる量はさほど大きくはないが、これが広がれば、EVでも安心して遠出ができるようになると期待されている。

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▲EV利用者から大きな期待を集めている走行中充電設備。対応EVであれば、バッテリーを減らさずに走行できる程度の充電が可能になる見込み。

 

5:自動運転車専用車線が設置される

中央寄り車線は、自動運転車専用となる。L4以上の自動運転車はこの車線を走る限り、ハンドルから手を離すことができる。将来的にはL5自動運転=無人運転もこの車線を使うようになり、トラック物流などのコスト低下、物流量の向上などが期待をされている。

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▲中央より車線は自動運転車専用となる予定。L4以上の自動運転車は、この車線を走る限り、ハンドルから手を離すことができる。

 

今後新設される高速道路は原則スーパー高速に

今後、中国で新設される高速道路はこのようなスーパー規格になっていく。ただし、いずれの機能も、自動車側に対応する装置の搭載が必要になる。自動車業界では、スーパー高速対応車の販売と普及に力を入れている。