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量産化の段階を迎えたAIサービスロボット。深蘭科技開発の消毒ロボットが韓国LGより発売へ

韓国LGに消毒用ロボットを提供している深蘭科技(シェンラン、ディープブルー)。そのCTOである周丹弟氏が、AI週刊のインタビューに応えた。AIロボットは量産化の段階を迎えており、新しい人材が必要になっているという。

 

AI+サービスロボット領域で存在感を増すディープブルー

現在、サービスロボットの視覚アルゴリズムチーム、ナビゲーションアルゴリズムチーム、ソフトウェアチームの責任者をしています。現在開発しているのは、消毒ロボット、配膳ロボット、清掃ロボットなどです。

深蘭科技(シェンラン、ディープブルー)は、AIサービスロボット領域を研究してきて、消毒ロボットは、韓国のLGと戦略提携をしている他、日本、オーストラリア、欧米の有力企業と共同開発、製造などの関係を構築しています。家庭内看護、清掃、庭の管理、飲食店、スーパー業務などの領域で市場を獲得し始めています。

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▲深蘭科技の周丹弟CTO。AIサービスロボットは、研究開発の段階を終え、量産化のステージに入ったという。

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▲深蘭科技が開発した配膳ロボットは、多くの飲食店で採用されている。注文したテーブルまで移動をし、料理が受け取られると、厨房に自動的に戻る。

 

命令されなくても必要な行動を決定できるAIロボット

AIサービスロボットの現状は、インターネットの初期にポータルサイトが登場した頃と似ています。ポータルサイトは、メッセンジャーと検索とブラウズの機能が備わっていました。そのような技術が深く融合し、メッセンジャーと融合しWeChatのようなSNSが生まれ、ムービーと融合しTikTokが生まれ、小売と融合し淘宝網タオバオ)が生まれてきました。

AIテクノロジーも初期の段階にあります。従来のロボットはツール型で、命令を聞いて、その作業を実行するというものです。一方、AIロボットは視覚センサーなどを利用し、物体が何であるかを認識し、学習をすることで次の行動を決定していきます。命令されなくても、自分で必要な行動を実行することができます。

将来、技術が真に融合をすれば、ロボットは人間と密なコミュニケーションが取れるようになり、命令を聞くだけはなく、感情を理解したり、環境に適応できるようになるでしょう。

ここがロボットとインターネットの大きな違いです。インターネット技術は受動的で、人が画面に対して何か命令を出して初めて何かが実行されます。しかし、AIロボット技術はあなたが何を必要としているかを察知して、何をすべきかを判断し、あなたの抱えている問題を解決する能力を持っているのです。

技術はいったん融合を始めると、その用途、使用シーンは大きく広がります。私たちディープブルーは、AI視覚、多様なコミュニケーション、アリゴリズムに関して厚い蓄積があり、これを融合することでさまざまなシーンに提供できます。

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▲深蘭科技の清掃ロボット。ゴミを認識し、自動運転で道路の掃除をする。

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▲清掃ロボットは、すでに公共施設などで実際に使用されるようになっている。



複雑な外部環境に適応することが課題

AIロボットの開発は非常に複雑です。目下の課題は、センサーの不安定さで、これをアルゴリズムによって解決しようとしています。また、異なる環境においても、同じ機能を同じように発揮させるようにすることも課題になっています。

複雑な外部環境は、大量のアルゴリズムを適用することが必要になりますが、このような努力により、AIロボットは環境の中で優れたパフォーマンスを示し始めています。

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▲AIサービスロボットは、当然ながら人を認識し、衝突しないように停止をする。人とAIロボットが共存できる環境が整い始めている。

 

LGとの提携が大きなステップに

パンデミックにより、多くの場所で無人による殺菌と消毒が必要になりました。LGがスマート消毒ロボットを企画した時、多くのAI企業を比較したようです。私たちディープブルーは、計算機視覚、バイオテック、自動運転、AI物体認識などのノウハウを持っており、なおかつすでにAIサービスロボットを開発してその技術やパフォーマンスが評価されていること、さらにはナビゲーションAIに関するノウハウも蓄積していることなどが、LGの要求に合ったため、LGが私たちディープブルーを選んでくれたのだと思います。

LGとの提携が始まると、私たちディープブルーは量産化という大きな壁にぶつかりました。LGは大手家電メーカーであるため、製品に対する要求が非常に高く、中国の標準的な製品基準を超えています。それにより、量産化と品質に関してはかなりの努力が必要となりました。

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▲深蘭科技が開発し、LGから発売される自動消毒ロボットのデモ。テーブルや椅子の間を移動し、紫外線を照射して消毒をする。

 

一流のチームに必要なのは、チーム内の協調性

専門家チームであることと、一流のチームであることはまったく違います。一流のチームには、優れた協調性と独特のリズム感があります。一流のスポーツチームをつくりには、スキルの優れたアスリートを集めるだけでは不十分で、チームとしての協調性、リズム感が必要になるのと同じです。

一流のチームが必要としているのは、まず、この領域のテクノロジーにリスペクトを持っている人。そして、学習能力が高く、協調性のある人です。テクノロジーにリスペクトを持っている人は、育成する価値が高いと思います。さらに、協調性があれば、そののチームは一流になることができます。私たちが挑戦しているのはイノベーション領域、新技術の開発なので、学習能力が高くメンタルが強いことも重要です。

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▲配膳ロボットの開発風景。ここのメンバーのスキルも必要だが、チームの協調性もパフォーマンスに対して大きく影響する。

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▲AIサービスロボットはすでに量産化のステージに入っている。量産化技術も要求されるようになっている。