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「返金のみ、返品不要」がECの業界標準へ。タオバオ、京東も導入へ

ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が始めた「返金のみ、返品不要」施策が、アリババの淘宝網タオバオ)、京東(ジンドン)、抖音(ドウイン、TikTok Shopping)にも広がり、EC業界の標準となる可能性が出てきたと大衆日報が報じた。

 

「返金のみ、返品不要」が業界標準

昨年2023年9月から、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が導入した「返金のみ、返品不要」施策が、淘宝網タオバオ)や京東(ジンドン)に広がり、業界標準となろうとしている。

どのECでも、法律により「7日間無理由返品」にはこれまでも対応をしていた。現物を見ずに購入を決めるECでは、商品が到着してから7日間以内であれば、理由を問わず返品ができるというルールだ。返品の宅配便料金はプラットフォームや販売業者が負担をしなければならない。

しかし、すべての商品で7日間無理由返品ができるわけではない。品質劣化が進む食品類や、コピーが可能なコンテンツ類、開封をすると価値が失われてしまう下着類、化粧品類など、いくつか例外規定がある。

拼多多では、農産物や低価格商品の取り扱いが多い。農産物は7日間無理由返品の対象外であり、低価格商品の返品は返送宅配便料金の方が高くなることもあり、7日間無理由返品は販売業者にとっても消費者にとっても使いづらい制度になっていた。

▲拼多多が導入した「返金のみ、返品不要」制度は、他のECにまで広がっている。商品は返品する必要がなく、自分で処理をすればいいというものだ。拼多多はこの制度によって悪質な出品業社を排除しようとしている。

 

運営がトラブルに介入、返金をする

そこで導入をしたのが「返金のみ、返品不要」制度だ。商品に問題がある、商品紹介ページの記述と異なった部分があるという場合は、消費者はまず販売業者に返品を申請するが、販売業者がそれに応じない、引き伸ばしをするなどの問題が生じた場合は、拼多多に直接「返金のみ、返品不要」を申請することができる。

運営側では、状況を調査し、販売業者に問題があると判断をすると、消費者との紛争を解決する手段として「返金のみ、返品不要」を適用する。それは、運営側が消費者に代金を返金し、商品に関しては消費者側で処分をしてもらうというものだ。

消費者はすぐに代金が返ってきて、販売業者は返品の宅配便料金を負担しなくて済む。ただし、問題のある商品を販売する業者や誇大広告で売ろうとする業者にとっては、「返金のみ、返品不要」の適用が増え、代金は入ってこない、商品も戻ってこないという大きな損害になり、不良な業者は自然に淘汰をされていくことになる。

「返金のみ、返品不要」は、消費者を手厚く保護する仕組みであると同時に、不良な業者を排除する仕組みにもなっている。

 

タオバオは業者のスコアを参照して自動適用

この仕組みをタオバオと京東も導入をした。

タオバオでは、2023年12月25日に紛争解決ルールを改定し、返金のみ制度を正式に導入した。タオバオでは、以前から消費者の苦情や取引状況などのビッグデータから販売業者の品質スコアを算出しており、消費者から苦情があった場合、この品質スコアを参照して、一定以下であれば、自動的に「返金のみ」が適用される仕組みだ。

京東は家電製品が販売の主力であるため、単価も大きい。不用意に「返金のみ」を導入すると、大きな損失になる。そのため、「返金のみ」が適用されるのは「商品が広告の説明とは異なっている」という理由のみで、なおかつ、消費者は食い違いを証明する写真またはビデオを送付する必要がある。これによる審査で、広告の説明とは異なっているが確認された場合、返金を行い、商品は消費者側で処分をしてもらうことになる。

また、商品そのものに問題がある場合は、これまで通り、交換または返品が可能だ。

 

制度を悪用する消費者は排除されていく

この制度が拡大すると、悪意のある消費者により悪用されることも考えられる。商品に問題がなくても、なにかとケチをつけ、代金を返金してもらい、商品は処分せずにそのまま使い続けるということが可能になる。

しかし、すでに各プラットフォームは対策済みだ。拼多多では、販売業者から消費者の「悪意のある行為」の苦情を受けると、調査をし、消費者の悪意を確認すると、その消費者には販売業者の商品が見えなくなるフィルタリングをかける。つまり、その消費者から購入されることがなくなる。その消費者が複数の販売業者から苦情が申し立てられた場合は、消費者に対して警告の上、場合によってはアカウントの凍結をする。

タオバオでは、ビッグデータによる販売業者、消費者の品質スコアを算出している。消費者の品質スコアが低い場合は、この「返金のみ、返品不要」は適用されず、法律どおりの「7日間無理由返品」を利用してもらうことになる。

拼多多がこの制度を導入した時、一部の販売業者からは強烈な反発があったが、多くの販売業者は大きな反発をしていない。誠実な商売をしている販売業者にとっては、この制度は無縁のものであり、消費者保護政策を強くして安心して買い物ができる状況をつくれば、消費者が買い物しやすくなり、売上増加に結びつくからだ。

「返金のみ、返品不要」は、EC業界の標準施策になろうとしている。