上汽通用五菱が発売した小型電気自動車(EV)「宏光MINI EV」(ホングワン)の勢いが止まらない。2021年8月には累計37万台を突破し、12ヶ月連続で新エネルギー車販売台数のトップの座を守り続けている。その売上を支えているのは女性だ。EVシフトが女性主導で起ころうとしていると中国青年報が報じた。
通勤車だけでなく、女性にも受けた宏光MINI EV
中国でヒット商品となっている小型EV「宏光MINI EV」(ホングワン)。本来は通勤車として企画をされた。そのため、「高速道路は走らない」「1日の走行は片道30分を1往復」ということから、最高時速100km、航続距離120km、エントリーモデルはエアコンなしという割り切りをし、2.88万元(約51.2万円)という低価格を実現した。
価格だけではなく、小型であるということから運転しやすい、デザインが可愛いということから若い女性に受け入れられ、本来ねらっていた地方都市の男性という消費者層だけでなく、大都市の若い女性という消費者層を獲得することができた。
五菱では、2021年3月に、パントーンとコラボしてパステルカラーを採用した「宏光MINI EVマカロン」を発売。このマカロンの購入者の78%が女性になっている。
五菱少女のパーティーイベントも開催
また、2021年9月には、長沙市などで「五菱少女潮妆パーティー」を開催した。五菱の女性ユーザーを「五菱少女」と呼び、潮妆は「トレンドの装い」を意味するネット造語、宏光MINI EVマカロンの秋の新色発表会を兼ねて、女性が好むブランドとコラボしたイベントだ。化粧品の完美日記(パーフェクトダイアリー)、ミルクティーの「喜茶」(ヘイティー)などの他、アパレル、化粧品、写真館、ペットショップなど宏光MINI EVマカロンと提携をする企業が参加をした。
男性を上回った自動車購入率
この女性の間でのヒットが自動車市場、特に新エネルギー車市場を変えようとしている。中国汽車流通協会の統計によると、2020年に自動車を購入した女性の割合は22.28%となり、男性の22.00%を超えている。もはや、自動車は女性が買うものになっている。
https://weibo.com/tv/show/1034:4677759025479700?from=old_pc_videoshow
▲五菱少女潮妆パーティーの公式プロモーションビデオ。宏光MINI EVマカロンの新色発表会だが、若い女性の好きなパーフェクトダイアリー、ヘイティーなどの各種ブランドが参加をしている。
運転の80%は20km以内の走行
これにより、自動車の使い方も変わってきている。男性であれば、大型の車を買い、週末に高速道路を使って遠出をするということに憧れを持っているが、新エネルギー車のオーナーはそのような使い方をしなくなっている。
「2020年度中国都市交通報告」(百度地図)の百度地図からの分析によると、新エネルギー車オーナーの運転の47.24%は5km以内であり、80.02%が20km以内だった。また、宏光MINI EVのオーナーの運転に限ると、1.4億回の運転があった中で、95%以上が20km以内だった。
自動車は中距離移動に使う乗り物になってきている
つまり、自動車はもはや遠方に移動する乗り物ではなくなっている。長距離移動は飛行機や中国版新幹線「高鉄」を利用し、自動車は中短距離の移動に使う乗り物になっている。新エネルギー車、特にEVの欠点と言われている航続距離の問題が、自動車の使い方を変えようとしている。さらに、女性オーナーが増えることで、自動車の使い方が変わろうとしている。85后、90后(85年以降生まれ、90年以降生まれ)の五菱少女世代が、EVシフトの主役になりつつある。