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5分でバッテリー交換。急速充電の次の方式として注目をされ始めたバッテリー交換方式EV

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今回は、バッテリー交換式のEVについてご紹介します。

 

5月20日に日産と三菱が新型軽EVの合同発表会を行いました。自動車としての評価、EVとしての評価はいろいろあるかと思いますが、「軽+EV」という組み合わせは相性がよく、日本でも本格的なEVシフトが始まるきっかけになる可能性があります。

「vol.095:大ヒットする「宏光MINI EV」の衝撃。なぜ、50万円で車が販売できるのか。その安さの秘密」でご紹介したように、中国のEVシフトは日本の軽自動車サイズにあたる上汽通用五菱の「宏光MINI EV」が牽引したと言っても過言ではありません。最高時速は100km/h、満充電航続距離は120km、エアコンなし、カーナビなし、USB充電コンセントありという思い切ったスペックで、2.88万元(約55.2万円)という安さです。

 

自動車には大別してコミューターとツアラーという2つの役目があります。コミューターは、通勤や買い物といった日用用途のことです。ツアラーは高速道路を使って遠出をすることです。このまったく異なった2つの使い方を、1台の同じ自動車に担わせなければならないことが日本の自動車ライフを不幸にしてしまっています。

ツアラーとして使うことを考えると、やはりある程度のグレードの車が必要で、高速道路を安定して走れる車が欲しくなります。また、いい車に乗っているという心地よさも楽しみたくなります。しかし、コミューターは自転車がわりであり、さほど車のグレードは関係なく、むしろ用途にあった仕様であるかどうかの方が重要です。しかし、2台所有するわけにはなかなかいかず、大きめのRVを買ってしまい、コインパーキングでで四苦八苦して駐車するようなことになっています。

 

コミューターにはEVが非常に向いています。この辺りの事情は、「vol.097:始まった中国の本格EVシフト。キーワードは「小型」「地方」「女性」」で、広西省チワン自治区柳州市の実例をご紹介しました。

自動車ライフを豊かにするには、コミューターとツアラーをはっきりと区別し、メリハリをつけることだと思いますが、多くの人が兼用した車を購入するため、どちらの用途にも不満が残ることになってしまっています。軽自動車というカテゴリーは、本来は、取得費用や税制で優遇をして、このメリハリをつけるための制度だったはずです。普段は軽自動車EVに乗り、休日には憧れの車をレンタル、シェアリングしてロングドライブを楽しむ、キャンピングカーで旅に出る。そして、お金のある人には中途半端な高級車ではなく、自分の趣味に惜しげもなくお金を注ぎ込んでいただく。その方が、社会全体の自動車文化は豊かになるように思います。

 

EVのオーナーが直面する問題が、充電ステーションの少なさです。これはタマゴとニワトリの関係になっていて、消費者は充電ステーションが少ないからEVを買うのはまだ早いと考え、業者側はEVの普及がまだなので充電ステーションを拡大できないと考えがちです。

コミューターEVはこのような問題も回避することができます。なぜなら、通勤、買い物に使うのが主目的なので、満充電にしておけば1日分はじゅうぶんに持ちます。そして、自宅に帰ってきたら使わないのですから、その間に充電をすればいいのです。しかも、夜は寝ているのですから、急速充電などの機能がなく充電に数時間がかかるEVでも大きな問題になりません。スマホの充電とほぼ同じ感覚です。このような点もコミューターとEVの相性がいいのです。現状での課題は、冬季にバッテリー性能が著しく落ちるということぐらいです。

 

しかし、ツアラーや商用車などでは問題が出ます。特に問題になるのがタクシーです。一般的にタクシーは1台の車を2人のドライバーが共有をしています。シフトはいろいろ異なりますが、朝から午後までの10時間ほど、夕方から深夜の10時間ほどを担当する2人のドライバーが組になります。受け渡しの間に洗車をしたり、給油をしたりします。

しかし、これがEVだと充電に数時間かかるため、交代に数時間かかってしまうことになります。ドライバーの実動時間が削られてしまい、収入減につながってしまいます。また、担当時間の終わり頃は、バッテリー残量も少なくなりがちです。その時、長距離の客を捕まえても断らざるを得ません。長距離客はドライバーにとって稼げる客なのに、それを逃すのは大きな問題になります。

そこで、この問題を解決するために、急速充電とバッテリー交換方式の2つが登場してきています。急速充電は、30分から60分で満充電にできるというもので、最新の規格では5分で80%充電できるものも登場しています。深セン市では、この急速充電タクシーを推奨しているため、俗に深センモデルとも呼ばれます。

一方、杭州市ではバッテリー交換方式を推奨しています。交換ステーションに行き、充電済みのバッテリーに交換するというやり方で、交換時間は5分以内で、ガソリンの給油と感覚的に変わりません。タクシー会社が自社で交換ステーションを運営すれば、バッテリー残量がまだあっても、都合のいい時に交換をすることができ、充電問題から解放されます。これは俗に杭州モデルとも呼ばれています。

 

中国政府は、EVを普及させるために、充電方式の充電ステーションを整備する方向で進んできましたが、近年、バッテリー交換方式も充実させる方向に進み始めました。

2019年に公表された「産業構造調整指導目録」の中に、政府が支援をする産業として初めてバッテリー交換産業の名称が記載されるようになり、2020年、2021年に公開された「電動自動車バッテリー交換安全要求」「2022年自動車標準化工作要点」などで、バッテリー交換の規格の標準化ガイドラインが定められました。現状は、統一規格というところまでは到達していませんが、将来的には充電設備と同程度の規格統一が進むと見られています。

そこで、今回は、バッテリー交換方式のEVの利点と、ビジネスとしての可能性、普及への見通しなどをご紹介します。中国のEVシフトは第2段階に進み始めました。

 

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