中華IT最新事情

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宅配はOKなのに、出前がNGな大学の謎

中国の多くの大学では、宅配配達員は校内に入ることができる。さらに、受取所を仮設している大学も多い。ところが、外売(出前)サービスの配達員は校内に入ることができない大学がほとんどだ。なぜ、宅配はOKで、出前はNGなのか。楽説安徽が解説した。

 

宅配は校内OKなのに、出前配達員は進入禁止

どこの国でも大学生は新しく登場したサービスに真っ先に飛びつく世代だ。中国の大学生たちもスマートフォンを使い、SNSで連絡を取り、財布を持たずにキャッシュレス決済をするというのが当たり前になっている。当然ながら、ECサイトもよく利用する。また、レストランやカフェの出前サービスである外売もよく利用する。

ところが、宅配配達員は大学の門で、身分証などを提示することで校内に入ることができるが、外売の配達員は身分証を提示しても校内に入れてもらうことができない。この違いは何なのか、大学生の間で議論になっているという。

 

ECサイトは大学生にとって不可欠な存在

ひとつは、宅配は大学生にとってもはや使わないわけにはいかないサービスになっているということだ。中国の大学は、原則、校内の寮生活をすることになっている。また、大学の多くが郊外にあり、勉強には最適な環境であっても、買い物には決して適している場所にはない。生活に必要なものの多くをECサイトで購入するようになっている。

ただし、宅配配達員は学生寮の建物の中に入ることは禁じられている。特に女子寮は、防犯の観点から、男性は入ることができない。男性と会う必要がある場合は、学生寮の外で会わなければならない。

そこで、学生寮近くに、臨時の宅配受取所が作られていることが多い。と言っても、地面に荷物を並べているだけで、学生は荷物が届くとそこに受け取りに行く。

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▲大学内には、臨時の宅配便集積場が作られている。荷物を頼んだ人は、ここまで取りに来る。

 

校内の安全確保が難しい出前のスクーター

しかし、外売サービスは校内に入ることすら許されない。この違いは、校内の安全確保の問題だという。講義時間中の校内は人通りも少なくなり、ひっそりとしているが、休憩時間になると一気に人が出てきて、校内は繁華街のような人手になる。この時間に、配達の車やバイクが通ると、学生の安全確保が難しくなってくるのだ。宅配便の配送車は、講義時間中に出入りをするため、安全上問題はない。しかし、外売は、学生が講義を終えて、人出が多い休憩時間になった時に配達をする。そのため、安全確保が難しいというのが最大の理由だ。

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▲外売サービスは、校内の安全確保が難しいという理由で、校内に入ることを禁止ている大学が多い。そのため、こんな方法で受け渡しをしている例もあるという。

 

学食と利益衝突する外売サービス

学生の間では、もうひとつの理由として、学生食堂との利益衝突の問題があるのではないかと言われている。学食は、栄養価の高い食事を安価に提供するため、利益はほとんど出ない。薄利ビジネスの最たるもので、大量の学生が毎日利用してくれることで何とか維持をしている。大学側から補助を出したり、OBなどが寄付をして経営を維持している例もある。

そこに、外売サービスの利用を認めてしまうと、学食の運営が破綻をしてしまう可能性があるのだ。破綻まで行かなくても、経営が圧迫をされ、価格が上がったり、サービスが低下したり、最悪な場合は食の安全に問題が生じる可能性すらある。

つまり、大学は、学食と学生の食を守るために、外売サービスが入ることを禁じているのだという。

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北京大学の学食。学生数が多く、時間も重なるため、混雑する。安価で食事を提供するため利益は薄く、経営は厳しい。その学食も変わらざるを得ない状況になりつつある。

 

大学生が生み出した外売サービス「ウーラマ」

学生の間では、意見はさまざまだ。外売を入れて、学食も公平な競争をすべきだという意見もあれば、飲食費が高騰する中国で、安価に朝昼晩が食べられる学食がなくなってしまうと、大学生活そのものが送れなく人もいるという人もいる。

学食もひとつのビジネスではあるが、長い間、競争というものをまったくしてこなかったことは事実。キャッシュレス決済の対応や、メニューの改善などが遅いこともまた事実だ。

そもそも外売サービスの「餓了么」(ウーラマ)は、上海交通大学の学生たちが、学内に食事や飲料を届けるサービスとして始まった。大学生たちの感性に合ったサービスなのだ。

旧態依然とした「学食」も変わる時期がやってきている。

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