上海市のオフィスビルで、自分でエレベーターに乗り、電話をかけて配達を知らせてくれる出前ロボットが登場して話題になっている。セキュリティを重視するオフィスビルでは、出前の配達員を自由に出入りさせたくない。そういうオフィスビルでの導入が進んでいると上観新聞が報じた。
到着を電話で知らせてくれる出前ロボット
上海市虹口区北外灘の国投ビルの8階にいた解放日報、上観新聞の記者の携帯電話に電話がかかってきた。「こんにちは、エレベーターの前までロボットが出前をお届けにまいりました。携帯電話番号を入力してお食事をお取りください」という合成音声が聞こえる。
10数分前、記者たちは出前サービスである外売アプリを使って食事を注文していたのだ。記者が8階のエレベーターのところまで行くと、そこには出前ロボットが待っていた。
配達員の出入りはセキュリティ上問題がある
上海市のオフィスビルでは、出前ロボットの導入が始まっている。すでに虹橋万科、国投ビル、金橋国際センターなどで導入されている。虹橋万科では、3台の出前ロボットを導入していて、1日に少なくても300件の出前の配達をこなしている。国投ビルでの導入は1月ほど前だが、それでも毎日20件から30件の配達をしている。
オフィスビルが出前ロボットを導入する理由はセキュリティだ。外売配達員だからといって、オフィスエリアに自由に出入りさせるわけにはいかない。かと言って、受付で登録処理を行い、パスを発行してという通常のゲスト処理をするのでは時間がかかりすぎる。そのため、以前は外売配達員はロビーから、注文客に電話をし、取りにきてもらうというやり方をしていた。しかし、大型のオフィスビルでは、注文客が取りにくるのにもけっこうな時間がかかっていた。
配達員がロボットに渡す。ビル内はロボットが配達する
そこで、ロビーに出前ロボットを配置し、外売配達員は、出前ロボットに食事を入れ、ビル内部は出前ロボットが配達する。
出前ロボットは、ビルのゲートを通過することができ、自動でエレベーターに乗り降りすることができ、さらに注文客に電話をかけ、合成音声で、食事が到着したことを連絡する。
注文客はエレベーターホールまで取りに行き、スマホでQRコードを読み、携帯電話番号の下4桁を暗証番号として、食事を受け取る。すべての食事が受け取られると、出前ロボットは1階のロビーに自動的に戻り、充電ステーションに自ら戻り、待機をする。
▲エレベーターとは音信号でやり取りをして階数を指定する。乗り降りする際には、周りの人に注意を促す音声も発する。
音信号で階数を指示
ゲートはワイヤレスで反応するので、出前ロボットが通ろうとすると自動的にゲートが開く。エレベーターは音声で反応する仕組みになっているので、出前ロボットは音信号で階数を指定する。
エレベーターに乗り込むときは、周りに注意を促すために「こんにちは、ロボットです。現在エレベーターを利用中です。ご注意ください」という音声を出す。また、頭部の液晶モニターに「出前ロボット配達中。ご注意ください」という表示をする。
障害物も認識、音声で警告
記者は、エレベーターから降りる出前ロボットの前に立ちふさがり、わざと邪魔をしてみた。すると、出前ロボットは前進せず、「すみません。どいてください」という音声を発した。記者が避けると、出前ロボットは前進をする。
出前ロボットの内部は、3段の収納があり、一度に3件の配達ができる。また、何階に配達するのかも理解し、最も効率のいいルートを自動で計算して配達する。
最初の戸惑いはすぐに消える
この出前ロボットは、上海のYogo robotが開発したKago3。上海市のオフィスビルでの導入は、オフィスビルのセキュリティを重要視したビル運営側が導入をした。いわば「歩く宅配ボックス」の感覚だ。そのため、導入当初は配達にきた外売配達員にいちいち使い方を教えなければならなかった。また、人間の安全に配慮するために、出前ロボットの移動速度の調整にも試行錯誤が必要だった。
しかし、多くのオフィスビルで「すぐに慣れてしまう」と感じている。言わば、家庭の中でのお掃除ロボットと同じで、最初は戸惑うこともあるが、すぐに日常の風景になってしまう。各オフィスビルでは、出前だけでなく、小包荷物の配送や床面の清掃など、ロボット化できるのではないかと考え始めているという。