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災害時の宅配ドローン。緊急救援物資の運搬に活躍

7月中旬、北京市付近が連日豪雨となり、市内でも道路が冠水し、郊外では土砂崩れなどで道路が崩落し、いくつかの集落が孤立した。救援物資を送り、同時に状況把握をするために、ECサイト「京東」の配送用ドローンが使われたと京東物流が報じた。

 

豪雨被害に即応する民間企業救援チーム

7月中旬、北京市では連日の豪雨となり、多くの地域が被害を受けた。特に川沿いの道路が崩落したり、橋が流されて、孤立する集落が問題となった。北京市政府は民間企業にも救援に協力するように要請、ECサイト「京東」ではすぐに10数名のドローンエンジニアを中心とした緊急救済チームを結成した。また、2機の配送ドローン、2機の偵察ドローン、3台のドローン制御車両を出動させた。

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▲中央電視台で報道された緊急物資輸送の様子。

 

川沿いに飛行する救援物資配送ドローン

災害救援チームは、集落が孤立している蜜雲区西湾子橋と懐柔区瑠璃廟鎮に向かい、まず偵察用ドローンを飛ばし、高度60mから地区全体の撮影を行い、被害の概要を観察した。そして、チームは両地区に別れ、救援活動をすることになった。

配送用ドローンは川に沿って飛んで、緊急支援物資を集落に送り込んだ。ミネラルウォーター、パン、発電機、ガソリンや軽油などだ。他にも消防隊が車両や徒歩により緊急支援物資を送り込んだが、現地入りした当日は配送は簡単ではなく、当日送られた物資の約3割がドローンによるものだったという。

この「川沿いに飛ぶ」ということに意味があった。川面は地形の凹凸がなく、平らなので、ドローンのルート設定が用意。また、見通しがいいので、目視や車両によるリモート監視などもしやすい。丘や山を越えるルートに比べてトラブルのリスクを大きく下げることができる。また、川の両岸には集落に向かう道路が走っているため、救援物資を配送しながら、道路の崩落状況や橋の状態を映像で確認することができる。

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▲ドローンの指令機能を持った京東の車両も緊急出動した。

 

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▲偵察ドローン。高度60mから全体の被害状況を撮影した。

 

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▲偵察ドローンから撮影した被災地。映像撮影だけでも、崩落している橋などの様子がわかる。

 

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▲緊急物資を配送するドローンは川沿いを飛行した。飛行リスクを減らすとともに、川沿いの道路の被害状況を撮影するためだ。初日の救援物資の3割程度を輸送した。

 


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▲京東が公開した救援活動のまとめビデオ。緊急チーム出動→偵察ドローンによる状況把握→配送ドローンによる物資輸送という活動がまとめられている。

 

ドローンはあくまでも初期対応。即応が鍵

京東では、5月9日に、社内に公益ドローン救援隊を設立して、地震や洪水といった災害時にドローンによって緊急物資の輸送、被害状況の観測に役立ててもらおうとしていたところだった。京東によると、全国の配送拠点に災害支援用のドローンなどの配備を進めていき、全国どこの災害でも即応できる体制を整えていくという。

ドローンで配送できる物資の量は多くはない。しかし、緊急支援が始まった直後は車両輸送が難しく、従来は消防隊員や人民解放軍が背負って徒歩で配送をせざるを得ないケースも多かった。危険な任務であり、二次災害の危険性も高い。ドローンによる緊急物資輸送は、この初期支援を代替することができる。車両輸送が始まるまでの物資輸送を担う。

そのため、ドローンによる災害支援隊は、緊急出動ができる体制がなければ意味がない。京東が全国の配送拠点に、災害支援ドローンを配備するのはそのためだ。

このドローンによる救援の様子は、中央電視台などでも報道され、全国的な話題となった。

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▲京東では、全国の配送拠点に、緊急時に即応できるドローンの配備を進めている最中だった。