清華大学の学部生が開発した卓球ロボットが話題になっている。ロボットそのものはUnitreeが市販しているG1を利用し、その動きを制御するAIを開発した。ただ打ち返すだけでなく、きちんとスイングをして打ち返すことができると量子位が報じた。
学部生が卓球ロボットを開発
人型ロボットの開発が進む中国で、誰もが想像していたロボットが登場してきた。卓球をするロボットだ。この成果は「HITTER: A HumanoId Table TEnnis Robot via Hierarchical Planning and Learning」(HITTER:階層計画と学習による人型卓球ロボット、https://arxiv.org/pdf/2508.21043)で紹介されている。
この研究の中心になっているのは、清華大学の姚班という精鋭を集めたクラスの学部生、蘇智氏。学部生が開発をしたということも話題になっている。


▲HITTERがプレイしている様子。球をただ当てて戻すのではなく、スイングをして打ち返している。人間と卓球をプレイできるレベルになっている。
卓球を“プレイ”できるロボット
卓球の球を認識して、ただ打ち返すだけのロボットはこれまでにもたくさんあった。このロボットがこれまでと異なるのは、壁打ちの代理ロボットではなく、卓球をプレイして、人間に勝てるということだ。
このために、研究チームは階層計画という考え方を導入した。高次層では、球の軌跡を予測をするということがメインになっている。これに基づいて、打球をする位置、速度、タイミングなどを演算する。低次層では、高次層が演算した予測に基づいて、ロボットの身体や腕の動かし方を演算する。この動きは強化学習により、実戦を経ることで精密になっていく。


実力は一般人の水準を超えている
使われているロボットは「宇樹科技」(Unitree)のG1の手にラケットを持たせたもの。階層計画により、ただ球がくるところにラケットを出して、あてて戻すというのではなく、球の高さに合わせて膝を折り曲げ、腰を中心にスイングをして、打ち返す。
論文内の実験では、26回の試行で24回ボールを返すことに成功した。1回はコートに入らず、1回は空振りをした。
また、人間との対戦では106回連続でノーミスでプレイした。これは、卓球のトレーニングをしていない普通の人の水準を超えている。

相手の予測を裏切るプレイが可能になるか注目
卓球というのは、予測を裏切ることが鍵になるスポーツだ。例えば、逆回転のカットをされた場合、返すボールは沈んでしまうため、やや上向きにすくうように球を打たなければならない。HITTERはこのレベルはクリアしている。
上級者になると、カットをしたように見せて実はカットしていない球を返して相手を惑わせる。HITTERがこのような上級者の技にも対応できるようになるのかどうかは非常に興味深く見られている。また、さらにHITTERが、カットしたかのように見せて実はカットしていないという相手を惑わせる技を使えるようになるのか。そこも注目されている。
卓球は、テニスなどに比べて、コートが狭く、反応するために使える時間が短い。このため、ロボットの演算にとっては非常に厳しい条件となる。球を見てから対応していたのでは間に合わず、さまざまな予測を行いながら、人間は卓球をプレイしている。中国だから卓球ロボットというだけでなく、ロボット技術の開発という点でも、HITTERはチャレンジングなのだ。
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