中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

米国から東南アジアにシフトするTemu。セミホスティングモデルで現地業者の共存をはかる

米国の関税優遇策や追加関税などで、米国のTemuのパフォーマンスは悪化をしている。Temuはすでに東南アジアに大きな広告投資をして、ユーザー数を増やしている。その決め手になっているのがセミホスティングモデルだと派代網が報じた。

 

米国で失速するTemu

米国にとってやっかいな問題だった中国の越境EC「Temu」(テム)と「SHEIN」(シーイン)。商品価値800ドル(約11.8万円)の輸入小包については一律で関税をかけないというde minimis(デ・ミニミス)規定を利用して、関税を支払わずに日用品や衣類を低価格で販売をしていたが、米トランプ政権はこの規定を、半年の移行期間(フラット課税)を経て、廃止することを決定した。

これにより、2025年5月のTemuのグローバルでの月間アクティブユーザー数は前年比で28%も減少するという大きな打撃を受けることになった。

 

米国から逃げ、東南アジアで成長するTemu

しかし、Temuは死んでいない。東南アジアでのユーザー開拓に力を入れ、月間アクティブユーザー数は2200万人を超えた。前年比で87%成長となった。特にフィリピンとタイの成長が目覚ましく、東南アジア地域の86%を占めている。

 

急成長の秘密はセミホスティングモデルの導入

この急成長は、Temuが現地で広告投資を拡大したこともあるが、2025年2月に東南アジアでセミホスティングモデルを導入したことにより、中国から多くの販売業者がTemuに参加し、商品数が激増したことが大きい。

Temuの基本的な仕組みはフルホスティングモデルだ。中国内の販売業者は、Temuの行う入札に参加をし、契約が取れると、商品をTemuの国内倉庫に納入する。そこから海外への発送、通関手続きなどはすべてTemuが行ってくれる。越境事業を手がけたことがない業者でも参加をすることができ、初期にはこの仕組みで多くの販売業者を集め、Temuは短期間に急成長をすることができた。

このフルホスティングモデルは、入札制度を基本としているため、Temuから見ると同類の商品の中で最も安い価格をつけたものを採用することができ、Temuの低価格の最大の理由になっている。しかし、販売業者から見ると、価格圧力が強く、利益が出ないという不満も起きていた。

▲日本のTemuでもセミホスティングモデルが採用されている。「国内発送」のマークがあるものがそれに該当する。このため、同類の商品でも価格差が大きくなっている。

 

販売業者が自由に価格設定できるセミホスティング

そこで、Temuはセミホスティングモデルを導入した。販売業者は、自力で通関手続きを行い、現地国のTemu倉庫に納入する必要があるが、その代わりに価格は自分で自由に設定ができる。販売業者は適正価格での販売ができることになる。ただし、もちろんフルホスティングによる低価格商品も販売されているため、それとの競争にはなる。

 

現地の販売業者もTemuに参加できる

もうひとつセミホスティングモデルの利点は、現地国の販売業者が参加できるようになったことだ。現地国の販売業者は国内にあるTemu倉庫に納品をすればいいのだから簡単に参加ができる。価格も自分で決めることができるため、他のECでも販売している販売業者も参加がしやすい。Temuにとっては、現地国の商品も扱えるようになるため、消費者からの信頼を得やすくなる。

Temuの中で「国内発送」と表記された商品が、このセミホスティングモデルを利用している。

 

規制をする国も

もちろん、課題もある。インドネシアベトナムでは、国内産業を守るために、Temuに営業許可を与えていない。インドネシアでは、TikTok Shopも同様に営業許可が取れず、現地のEC「Tokopedia」を買収することで、営業許可を取得した。Temuも現地のEC「Bukalapak」と何らかの形で提携をするのではないかと見られている。

東南アジアでは、現地のShopee、Lazadaが2強のECとして強かったが、TikTok ShopとTemu、SHEINなどの振興のECが台風の目となっている。Shopeeにはテンセントの、Lazadaにはアリババの資本が入っており、中国国内での競争が東南アジアで展開されていることになる。

中国の越境ECにとって、米国市場はもはや成長の望みはなくなっている。そのため、東南アジアや中東での競争が激化をしている。

 

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