工業情報化部は、AEBの搭載を義務化する方針を示した。欧州、日本に続く標準搭載化になる。しかし、AEBは動作条件や回避戦略にさまざまな違いがあり、AEBの定義に関する議論が進んでいると鈦媒体が報じた。
中国でもAEBが標準装備に
2025年5月、工業情報化部は「自動車自動緊急制動系統技術要求及び試験方法」を公開し、パブリックコメントを募った。この新しいガイドラインでは、AEB(Autonomous Emergency Braking、自動緊急ブレーキ)がオプション装備ではなく、標準装備になり、議論を呼んでいる。欧州、日本に続く、AEB搭載義務化になる。
現在、AEBは新車の60%に搭載されているが、8万元(約160万円)以下のAEB搭載率は2.6%で、新しいガイドラインは、このエントリーモデルにもAEBの搭載を求めるものだ。
ガイドラインでは、時速20kmから時速60kmの間で、歩行者、自転車などの交通弱者を識別し、自動でブレーキがかかることを求めている。また、誤作動率は現行の1%から0.1%以下に強化される。
さらに、新しい基準では、シミュレーションテストが義務化され、対自動車、対歩行者/自転車の試験に合格をしなければならない。
かなり厳しい内容であるとともに、低価格のエントリーモデル車にも搭載を求めていることから、技術開発とエントリーモデルの低コスト化が求められることになる。

動作条件が異なるさまざまなAEB
しかし、AEBの動作範囲について、さまざまな議論を呼んでいる。それは、同じAEBといっても装備によって動作条件が異なるからだ。
ポイントは、超音波センサー、ミリ波レーダー、カメラなどの対象物識別センサーの組み合わせで、動作条件が異なってくるということだ。
一般に、ミリ波レーダーにのみ頼るAEBの動作上限は時速30kmであり、カメラのみに頼るAEBの動作上限は時速40km、カメラとミリ波レーダーを使う場合は時速70km、ツインカメラとミリ波レーダーでは時速90kmが動作上限となる。それ以上の速度でAEBを動作させるには、より遠くまで感知できる別のセンサーが必要になる。

環境によって戦略を変えなければならない
さらに、AEBは3つの道路環境=都市内一般道、高速道路、歩行者と交錯する低速度で、AEBの動作戦略を変える必要がある。
都市内一般道では、主に車両間の追突、接触を避けることが目的となる。システムがリスクを検出した場合、予備制動をかける。それでも、運転手が回避行動を取らなかった場合、ブレーキを動作させるか、進路を変えることで回避する。主に時速50km以下で動作する必要がある。
高速道路では、長距離の識別を行う必要があり、リスクを検出するとアラートを出し、一定時間内に運転手が対応しない場合は、AEBが動作をし、ブレーキやシートベルトの締め付けを行う。最初は予備ブレーキであり、それでも運転手が反応しない場合は、フルブレーキをかける。動作範囲は時速30kmから時速80kmが求められる。
歩行者に対しては特別なアルゴリズムが必要になる。なぜなら、歩行者の行動は予測が非常に難しいからだ。動作範囲は時速60km以下になる。
つまり、AEBは、障害物を発見したらブレーキをかけるなどという単純なものではなく、自動車がどのシーンにいるのかを認識し、そこで適切なAEBアルゴリズムを動作させなければならない。
運転に適切に介入しなければならない
さらに、AEBは、障害物に鋭敏に反応するのがいいというわけではない。運転に適切に介入する必要がある。
例えば、高速道路で障害物を発見したとして、すぐにAEBが動作をすることは適切とは言えない。なぜなら、速度を落とさなくても、ハンドル操作で回避できる可能性が高いからで、運転手が障害物を認識している場合は、ブレーキは軽くかけるだけで、ハンドル操作で回避しようとするだろう。
しかし、そこでAEBが作動して、フルブレーキをかけてしまうと、運転手のハンドル操作により、車体がスピンをし、かえって大きな事故につながりかねない。
AEBはただ動作するだけでなく、適切に運転介入することが求められる。

誤報の問題もある
さらに、誤報の問題もある。センサーは雨や霧といった環境の影響を受け、障害物が存在しないのに、障害物があるという誤検出することが避けられない。例えば、沿道にある看板広告内に印刷されている人物を歩行者と誤認識してAEBが動作するというトラブルはよく報告されている。
これは運転手にしてみれば、何も危険なことはないのに突然ブレーキがかかることになり、運転操作を誤ったり、後続車に追突されるリスクを高めてしまう。
そのため、各自動車メーカーは、この誤報率を下げる開発に力を注いでしまいがちだ。運転体験として非常に悪いものであるため、自動車の売れ行きに直接影響をするからだ。さらに、誤報により事故が発生した場合は、当然、メーカーの責任が問われることになる。
そのため、各メーカーは誤報率を下げる調整を行おうとするが、その手法が適切でないと、今度は本当の障害物に対してAEBが動作しないという問題が起きることになる。
この問題はきれいに解決する方法がなく、AEBのアルゴリズムを洗練させていく以外の方法がない。AEBが義務化することにより、さまざまな小さなトラブルが発生し、AEB開発がさらに進むきっかけになると見る人もいる。AEB義務化が、自動車の知能化を推し進めることになることは間違いないようだ。
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