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豚肉が安くなると、シャトルの価格があがる。人気のバドミントンに思わぬ落とし穴

手軽に楽しめるスポーツとしてバドミントンの人気が高まっているが、シャトルの価格が高騰するという思わぬ事態になっている。その理由は、豚肉の価格が下がり、豚肉需要が大幅に増えたことにあると中国企業家雑誌が報じた。

 

シャトルの値上げでバドミントンも貴族のスポーツに

市民の間で、気軽にできるスポーツとしてバドミントンの人気が高まっている。ラケットとシャトルを用意し、体育館などのスペースをレンタルするだけで楽しめる。お金のかからないスポーツであり、老若男女が一緒に楽しめ、爽快感も大きいというのが人気の理由だ。

しかし、最近「月給2万元でもバドミントンはできない。貴族のスポーツになった」という声がSNSで拡散している。この7月にシャトルの価格が40%から60%も上昇したからだ。

北京市大興区で総合体育館を経営する総経理によると、シャトルの値上げは昨年2023年11月ごろから始まり、ほぼ毎月のようにあがり、その上げ幅が大きくなる傾向がある。もっとも一般的なメーカーRSLの5号球は1カートン(12個入り)が昨年11月時点では82元だったが、現在は115元でも入手が難しくなっているという。

バドミントンは5人程度のグループで体育館のコートを借りて楽しむのが一般的だ。レンタル料は2時間で200元程度で、この間にシャトルを1ダース消費する。以前は5人で282元で楽しめたが、現在では315元もかかることになる。RSLの5号球は練習用であり、試合形式で楽しもうとすると、より品質のいいヨネックスのシャトルが使われる。ヨネックスでいちばん安価なAS-02は1カートン165元だったが、7月には215元まで上昇している。ヨネックスのシャトルでもう200元以下のものはなくなっている。

しかも、試合に使う公式球はもって1時間ぐらいで交換しなければならない。平均使用時間が短いため、意外にお金がかかることになるのだ。

▲バドミントンはラケットとシャトルだけで始められ、体育館などをレンタルすれば楽しめる気軽なスポーツ。その気軽さから人気が年々高まっている。

シャトルにはさまざまなグレードがあるが、すべてのシャトルの価格が大幅に上昇をしている。

 

豚肉価格が安くなるとシャトルの価格があがる

では、なぜシャトルの価格がここまで上昇しているのか。それは豚肉の価格と大きく関係している。豚肉の価格は2020年以降、2回大きな値上がりを経験している。2020年は新型コロナの影響で出荷作業そのものができずに価格が高騰をした。また、2021年には豚コレラが流行をし、価格が高騰をした。2023年になってようやく価格が落ち着き平常に戻り始めた。

この豚肉価格が平常に戻ったことで豚肉の需要が急激に増加をしたが、豚肉業界は新たな課題を抱えることになった。それは急激に需要が生まれたため、生産が追いつかず、特に繁殖できる母豚の数が不足をしていることだ。そこで、地方政府は農家が養豚業に転換することを奨励している。

▲豚肉の価格は2000年と2002年に高騰をしたが、現在は落ち着いた。これにより、豚肉需要が大きく伸びている。

▲繁殖できる母豚の数が急減をしているため、地方政府は養豚業への転換を奨励している。

 

豚肉需要が伸びて鶏肉需要が下がる

豚肉の需要が伸びるということは、その他の肉類の需要は落ちるということになる。また、養豚業への転換が奨励されるため、養鶏業から養豚業に転換をする農家も増えている。

バドミントンのシャトルは16枚の羽を必要とするが、それは養殖されたカモやガチョウから得られる。一匹のカモからは14枚程度の羽しか取れず、シャトルの生産には大量のカモやガチョウが必要になる。ところが豚肉需要が強く、その分、カモ肉やガチョウ肉の需要は減っている。さらに養豚に転換してしまう農家もある。これにより、羽が大幅に不足しているのだ。

シャトルは、肉として出荷をしたカモやアヒルの羽からつくられる。

 

高校入試にも組み入れられ人気が高まるバドミントン

それでもバドミントンを楽しむ人は増えている。2023年、北京のバドミントンを楽しめる施設は201ヶ所から294ヶ所に増加した。上海では297ヶ所から422ヶ所に増加をした。市民にとって、ジョギング並みに身近なスポーツになりつつある。

その理由のひとつが、北京市などで高校入試の科目にバドミントンが組み込まれたことだ。北京市では高校入試で体育の試験を組み込み、4類22項目の中から選択をして受験できる。その中に、バドミントンのサーブとレシーブという項目が組み込まれた。高校受験生はこのようなスポーツ科目の中からひとつを選んで練習をしておかなければならない。その中で、手軽にできるバドミントンを選ぶ生徒も多く、バドミントン施設では初心者のためのバドミントン教室が盛況になっている。

せっかく盛り上がってきたバドミントンだが、思わぬところで水をさされることになった。