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マイクロドラマはエンタメとして定着をするのか。低俗、短絡、低品質である一方、ビッグネームの参入やビデオ生成AIの導入も

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今回は、中国のマイクロドラマについてご紹介します。

 

マイクロドラマとは、中国で「微短劇」(ウェイドワンジュー)と呼ばれているもので、日本ではマイクロドラマの他にもミニドラマ、ショートドラマ、短尺ドラマなどと呼ばれることもあります。

中国では、あらゆるコンテンツは、公開前に国家広播電視総局の審査を受けなければなりません。暴力表現や性表現、政治表現、歴史表現などの規制をクリアしなければ、映画、ドラマ、音楽、ラジオ劇、ゲームなどは放送したり公開したり販売したりすることができません。2020年に、広電総局はこのマイクロドラマをドラマの一形態として認めました。その定義によると、「1話の長さが数十秒から20分以内で、話数に規定はない」というものです。

1話が2分から3分程度で、合計で50話から100話程度あるというのが一般的です。多くの場合、最初の10話ほどは無料で見られますが、続きを見るには課金をしなければならないというパターンが多くなっています。

このマイクロドラマが現在流行中で、本来ならばもっと早く読者のみなさんにご紹介をすべきだったのですが、ここまで遅くなってしまいました。というのは、このマイクロドラマが定着をするのかどうかよくわからなかったからです。一時期の流行ですぐ消えてしまう可能性もあり、逆に抖音などのショートムービーなどと同様に定着をする可能性もあります。現在になっても、消えてしまうのか、定着をするのか、私にはよくわからないところがあります。

 

マイクロドラマが生まれたのは、2020年のコロナ禍で映画やテレビドラマの撮影ができなくなり、スタッフたちが仕事がなくて困ったということが発端です。遊んでいても仕方がないので、低予算でドラマをつくってみてネットで公開をしたところ、想像以上に受けたということがきっかけになっています。コロナ禍で映画館も休業となっていることもあって、ドラマに飢えていたこともありました。この頃から、最初の10話は無料、以降は課金という形式でしたが、映画館に行くよりは安く、多くの人がマイクロドラマに夢中になりました。

 

新しいスタイルのコンテンツが登場したわけですが、一過性のブームで消えてしまうと思わせる面と、そうではなく新しいタイプのコンテンツとして定着をすると思わせる面の両方があります。

一過性のブームで消えてしまうと思わせる理由は、内容が単純で低俗であることです。1話が短いために複雑な伏線のあるストーリーは展開できません。わかりやすい内容にする必要があります。また、次の回を見たいと思わせなければ課金をしてもらえませんから、露骨な手法で次への惹きをつくろうとします。そのため、どうしても内容が短絡的にならざるを得ないのです。

例えば、恋愛ドラマで、男性が恋人にビンタをしようと手を上げるところで、「続きは課金で」となります。で、続きを見てみると、振り上げた手を下ろして、何事もなかったかのように別の会話が続いていくというようなものがたくさんあります。しかし、これは黎明期ゆえのクオリティの低さであって、競争をしながら次第に洗練されていくのかもしれません。

私の感覚では、大昔の韓国ドラマを見ているような印象を受けます。よくあるパターンは、お金持ちの男性がいて、そのお金を目当てに美女数人が近づき、争いを起こして怒鳴りあっているようなイメージです。これも、単に私の好みに合わないというだけのことで、中国人にとっては面白いのかもしれません。そのあたりが私には何とも判断がつかないのです。

 

一方で、将来性を感じさせる動きもあります。

マイクロドラマは、その相性の良さから抖音、快手といったショートムービープラットフォームで配信されてきました。さらに、配信プラットフォームのミニプログラムも続々と登場しています。

それだけでなく、テンセントビデオ、iQIYI、優酷、マンゴーTVといった映像配信サービス(日本で言えば、NetflixやHuluにあたる存在)が目をつけ、マイクロドラマ配信に乗り出しているのです。このような映像配信サービスは、映画やテレビドラマを配信することが主であるため、マイクロドラマも1話が10分程度あり、話数も30回程度と短めです。また、映像が縦画面でなく、横画面のものが多くなっています。つまり、30分ドラマ、60分ドラマに寄せた仕様になっているのです。

従来のテレビドラマと近い感覚であるため、定着をする可能性はじゅうぶんあります。NHKの朝ドラ=連続テレビ小説に近い仕様です。

ビッグネームも参加してきています。「少林サッカー」「カンフーハッスル」などで人気となった周星馳チャウ・シンチー)監督は、抖音に「九五二七劇場」というアカウントを開設し、「金猪玉葉」というマイクロドラマを公開しています。久々のチャウ・シンチーのコメディーということもあって人気になっています。内容は確かに面白いです。しかし、「少林サッカー」のような誰にでもわかる面白さではなく、少し大人びた複雑な笑いのコメディーになっているため、「少林サッカー」のようなわかりやすい面白さを求めていた人からは不満も出ているようです。

さらに、ドラマの映像制作プロダクションである華策影視、オンライン小説プラットフォームの閲文集団などがマイクロドラマに参入をしてきて、このジャンルは盛り上がりを見せ始めています。

 

このような業界動向を見れば、新しいコンテンツのスタイルが登場したと思えますが、結局はヒット作がどれだけ生まれてくるかにかかっています。マイクロドラマが盛り上がったのも、今年2月に公開された「私は80年代の世界で継母になった」(https://www.douyin.com/search/八十年代短)が、1日に2000万元(約4億円)の収益をあげたという話題から始まっており、このヒットにより、同じ制作会社「聴花島」が過去に制作したマイクロドラマも急に収益があがるようになりました。

読者のみなさんがいちばん知りたいことは、「このマイクロドラマの波が日本にもやってくるのか」ということだと思います。この判断は非常に難しいと思います。中国のマイクロドラマの状況は、初期の混乱と熱狂の段階が終わり、産業としての体制が形づくられてきたというところだと思います。今後、このマイクロドラマが産業として伸びていくのかどうかを判断するのには適した時期になっていると思います。

そこで、今回は、産業面としてのマイクロドラマをご紹介し、みなさんに中国で、あるいは日本でも、今後流行していくのかどうかをご判断していただきたいと思います。その判断材料を提供するというのが、今回のメルマガの目的になります。

 

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