スターバックスが地方都市にまで出店することを宣言したことにより、地方都市でカフェの競争が激化をしている。特に激しいのが価格競争で、多くのカフェが10元以下の価格を打ち出していると捜狐が報じた。
カフェの地方浸透で注目されるコーヒー価格の相場
中国のカフェの地方浸透が始まっている。スターバックスは2025年までに300都市9000店舗の拡大計画を発表。ライバルの瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin’ Coffee)はフランチャイズを活用し、すでに1万店舗を突破した。さらに、俗に「ラッキン2.0」と呼ばれるフォロワーたちが地方を中心にカフェを出店。また、ファストフード系のマックカフェ、KFC、さらにはコンビニコーヒーと、カフェは地方で完全に過当競争のモードに入っている。
この中で、注目されていたのは、相場価格だった。スターバックスは30元台、ラッキンは20元台だが、その他の地方系カフェ、ファストフード、コンビニは10元前後が相場となる。地方でも高くても美味しいコーヒーが好まれるのか、それとも安いコーヒーが受け入れられるのかが注目をされていた。
そして、地方でコーヒー価格の値下げ競争が始まっている。やはり地方では安いコーヒーが受け入れられるのではないかという状況になり始めている。
地方では10元以下の相場形成が進む
広西チワン族自治区の南寧市では、2023年に入って、カフェの価格競争が熾烈になってきている。相場をリードしているのは、激安ドリンクカフェ「蜜雪氷城」(ミーシュエ)のサブブランド「幸運珈」(ラッキーカップ)だ。ベーシックなアメリカーノ、エスプレッソ、低脂肪乳ラテを5元で販売し、アレンジコーヒーのココナッツラテなどでも10元。ラッキーカップは現在600店舗だが、地方を中心に急速に店舗数を伸ばしており、相場価格についてはラッキーカップがひとつの基準になりつつある。南寧市だけでなく、南京市、蘇州市、無錫市などでもラッキーカップを中心にした価格競争が始まっている。
例えば現在1500店舗を突破している「CoCo都可」では、期間限定ながらアメリカンを3.9元、ココナッツラテを8.9元で販売するキャンペーンを行なっている。
コーヒー豆価格の下落が拍車をかけている
この価格競争が始まったきっかけは、コーヒー豆、特に高品質で多くのカフェで使われるアラビカ種の国際価格の下落だ。高騰をしていたコーヒー豆価格は、2022年の後半に下落をし、1年半ぶりの安値となった。その後、やや戻したものの高騰はせずに価格が落ち着いている。
最大の理由は、欧米での需要の後退だ。インフレが進行し、あらゆる物価が高騰をしている。そのような中で、見直されるのが嗜好品だ。コーヒーの需要が大きく減っている。さらに、ブラジルの生産量が順調に回復をしている。このような事情から、コーヒーの先物価格が下落をし、国際価格も下がり始めている。地方で市場を確保したい中国のカフェにとっては絶好の機会となり、販売価格の下落が進行をしている。
中国茶カフェもコーヒーに参入
さらにカフェの価格競争を激化させる要因がある。一大ブームとなった中国茶カフェの需要が頭打ちとなり、どこも業績が苦しくなる中で、コーヒー飲料を提供することで活路を見出そうとしている。
中国茶カフェの主要な顧客は女性だった。そこにコーヒーを提供することで男性客の掘り起こしを行い、男性にも中国茶ドリンクを楽しんでもらおうという戦略だ。その典型例が「CoCo都可」で、中国茶ドリンクを主体にしながらも、低価格コーヒーで新たな男性客層をつかもうとしている。
インスタントコーヒーが打撃を受けることに
この価格競争の影響を受けているのが、インスタントコーヒーだ。地方ではこれまでコーヒーを飲むには、インスタントコーヒーというのが一般的だった。価格は1杯分で2元程度で、ペーパードリップ式のインスタントコーヒーでも4元から6元程度。つまり、低価格カフェはインスタントコーヒーの価格帯にまで下がってきていることになる。インスタントコーヒーの市場を蚕食することになるのはほぼ間違いない。
専門家の見方によると、この価格競争はしばらくの間続くという。コーヒー豆価格が適正価格で安定をし始めたことや在庫が豊富になっていること、さらに各カフェは地方で地位を確立するために優待政策を進めることが予想されるからだ。
となると、スターバックスがますます苦しくなる。スターバックスは2023年に値上げを行い、スターバックスラテが27元から30元になった。スターバックス1杯分の価格で、ラッキーカップの低脂肪ラテが6杯飲めることになる。300都市9000店舗計画にも黄色信号が灯ることになった。