中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国は養豚テクノロジーの先進国。AI個体識別、RFIDにナノ飼料

中国は世界の半分以上の豚を生産する養豚王国だ。そのため、養豚テクノロジーも進んでいる。RFIDによる個体識別やAIによる個体識別の導入も進んでいる。また、ナノ飼料が開発され、ビタミンを効率的に吸収できる技術も登場していると科普中国が報じた。

 

世界の半分の豚を生産する中国

中国は世界一の養豚国家だ。世界の養豚出荷数の56.6%が中国だ。2位はEUの19.1%、3位は米国の9.3%となる。人口が世界の19.0%の国が、56.6%の豚を育てている。中国では毎年6億頭以上の豚が出荷をされている。

これだけの生産をしなければならない養豚業は、最新の技術が投入されるようになっている。中国は養豚テクノロジーの分野での先進国になろうとしている。

 

非常に難しい画像解析による個体識別

養豚の生産性をあげるには、子豚の個体識別を行い、食事量や行動量、体重などの成育状態のデータを取ることが基本になる。しかし、ベテランの飼育員であっても豚の顔や見た目で見分けることは不可能だ。

そのため、識別タグを耳につけたり、背中に識別番号をプリントしたりしているが、食事量や運動量を個別に記録をするのはとても難しい。ミスも出やすい。

そこで、豚の顔認識技術の開発が進められていたが、当初は非常に難しかった。なぜなら、豚肉の品質をあげるために、近親交配が繰り返され、遺伝子がほとんど均一化された系統が確立しているため、豚の見た目は非常に小さな差しかないからだ。

しかし、ディープラーニング技術が発展をし、この数年で、豚の個体認識技術がほぼ確立をした。

スマート養豚場では、天井にレールが設置され、カメラロボットが常に巡回をし、豚の上から見た姿を学習し、個体識別を行い、行動を記録していく。

これにより、豚の生育状況をほぼ自動で記録できるようになっている。

▲画像解析で個体識別を行う豚舎では、天井にレールが設置され、カメラが巡回をして、豚の個体識別と運動量などを記録する。

 

アフリカ豚熱の感染拡大が個体識別技術の開発を加速した

この豚の顔認証(個体識別)が、広く導入されるきっかけになったのは、2018年8月に、中国で大流行したアフリカ豚熱(ASF)の感染爆発だった。数億頭の豚が死亡、または殺処分され、多くの養豚場が破綻をした。さらに、ワクチンは現在開発途中にあり、ASFの不安は完全には取り除かれていない。

このような事態に、多くの養豚場が個体識別システムを導入した。あらかじめ、体温、食事量などの範囲を指定しておくと、体温異常、食欲不振の子豚を発見すると自動的にアラートを上げてくれるようになり、そのような子豚を隔離して検査をし、対応ができるようになった。

中国がASFの感染爆発から脱することができたのには、このような個体識別技術による貢献も大きかったという。

 

安価な個体識別として普及するRFID

このような個体識別技術は優れたものだが、問題は導入コストが高いことで、大手の大規模養豚場では導入できても、個人規模の養豚場では費用負担が大きすぎる。

そこで、安価なシステムとして注目されているのが無線RF識別技術(RFID)だ。すでに物流での荷物識別、オフィスので備品管理、小売店での商品管理に使われている。小さなチップとリーダーの組み合わせで、リーダーをかざすと対象物の情報が見られるというものだ。

養豚場では、今まで耳につけていた個体識別票をRFID化をする。子豚が給餌機に近づくと、無線により個体を識別し、その子豚用に調合された餌を設定された量を給餌する。そして、食べ終わると、食べ残しの量が自動計測され、その子豚が、どのくらいの量の餌をどのくらいの時間で食べたが自動的に記録される。

▲自動給餌器が設置され(写真手前)、豚の耳にはRFIDタグがつけられている。これにより、どの豚がどのくらいの時間、自動給餌器のそばにいたかが自動的に記録される。

 

安価でもいくつかの欠点があるRFID

ただし、AIによる顔識別、個体識別に比べていくつか欠点はある。耳に電子タグをつけるのは、意外に子豚の負担になる。子豚にとって違和感を感じることもあり、壁にこするなどして取ろうとすることもあり、そこが傷となり感染症を起こしてしまうこともある。

また、リーダーの設置場所に近付いてもらわないと個体識別ができないため、餌や水の量は測定できても、運動量を測定するということは難しい。しかし、安価にしシステム導入できるということから、今後も広がっていくと見られている。

 

ビタミンを効率よく吸収させるナノ飼料

もうひとつ、大きな技術革新がナノ飼料だ。子豚の健康的な生育には、資料に添加するビタミン剤が欠かせない。しかし、一般的なビタミンは、空気中で酸化しやすく、添加をしても、子豚に吸収される率は決して大きくない。

そこで、ナノ技術を使ったビタミン添加飼料が開発されている。ビタミンをナノレベルの小ささにし、リン脂質、コレステロール、タンパク質でつくった人工的な生物膜に埋めこんでしまうというものだ。こうすることで、酸化が起こりづらくなり、また凝集することも避けられる。子豚に効率的に吸収される。

中国の養豚技術は、日々進化をしている。もはや養豚場は「豚小屋」という言葉が相応しくない場所になろうとしている。

▲一般的な微細粒子を溶かしたもの(左)とナノ粒子を溶媒に溶かしたもの(右)。ナノ粒子ではレーザー光が通るが、一般的な微細粒子ではレーザー光が拡散してしまう。

▲顕微鏡で見たナノ粒子。ビタミンなどの栄養素が生体膜に包まれている。これにより酸化せず、豚に効率的に摂取される。