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まったく新しいアプローチ、レベル2+自動運転とは何か。テスラのFSDを追いかける百度のANPとファーウェイのASD

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今回は、自動運転の新しいアプローチ「レベル2+自動運転」についてご紹介します。

 

自動運転=AIが運転をするという発想は、発想だけであれば、そうとうな昔からあったでしょう。しかし、本格的な開発は、2009年にグーグルが非公開の秘密プロジェクトとして始めてからになります。グーグルは2012年にこのプロジェクトを公開し、交通事故による死亡者の多くが20代の若者であることを挙げて、自動車が私たち社会の未来を奪っていると訴え、交通事故ゼロを目指すことを宣言しました。

ここから世界中で自動運転プラットフォームの開発競争が始まりました。中国では、百度が2015年に自動運転の研究を始め、「アポロ」という名称の完全自動運転開発計画を進めます。

 

しかし、かなりの時間が経つのに、まだまだ無人自動運転車は身近なものにはなっていません。自動運転の最大の障害になっているのは、実は人間の感情なのです。

自動運転はどのレベルまで到達すれば実用化していいのでしょうか。合理的に考えれば、人間の運転による事故率を下回った時です。これは、グーグル傘下のウェイモー、百度のアポロ、中国の小馬智行(シャオマー、Pony.ai)などはとっくに達成をしています。しかし、私たちの社会は、毎日起きている人間の落ち度による悲惨な交通事故のことは棚に上げて、AIの運転による事故が1件でも起きると、それを強く非難をしてしまいます。

実際に、大きな影響を与えることになったのが、2018年のウーバーの自動運転車による事故です。アリゾナ州フェニックス郊外で、ウーバーの自動運転車が歩行者をはねてしまい、死亡させてしまったというものです。

夜10時頃、被害にあった歩行者は自転車を押して、道路を横断しようとしていました。横断歩道がないところで、当然ながら歩行者横断禁止です。そこにウーバーの自動運転車が近づいていきましたが、AIはこの被害者を「自動車」と認識しました。車道には歩行者や自転車はいてはならないことになっているのですから、車道にある物体は自動車か、あるいは何らかの障害物しかありません。車輪の形状を見て、自動車と判断したのかもしれません。

しかし、自動車のようには道路を走行していません。AIは対象物の判定を「自動車」から「その他」に変更しますが、再び自動車に戻すなど、混乱をし始めました。「自転車を押して歩いている歩行者」が正確なのですが、そのような対象物が、横断禁止の場所で前方を横切るなどというシーンは学習ができていなかったのだと思います。

 

衝突2.6秒前に、ようやく自転車と認識をしましたが、速度が遅いために静止をしていると判断をしました。そのため、そのまま車線を走行することを選択。そこに被害者が車の前に出てきたために、衝突1.2秒前にアラームを鳴らし運転手に警告を出し運転介入を求め、衝突0.2秒前に自動でブレーキをかけました。しかし、間に合わず、はねてしまったというものです。

この時、安全監視の役目で乗車していた運転手は、安全監視をさぼってスマホでHuluの動画を見ていたことも明らかになり、ウーバーに対する非難が起こりました。ウーバーはこれをきっかけに、自動運転プロジェクトを停止しています。

この問題は、他の自動運転車にも及びました。ウェイモーの自動運転車には、走行試験中に、しばしば住民に取り囲まれ走行を妨害されたり、他の車に幅寄せをされる、目の前に止まられ道を塞がれる、タイヤを刃物で切られる、石を投げられる、銃口を向けられるなどの妨害行為が頻発をしました。


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▲ウェイモーの自動運転車が、道端の人から銃口を向けられたシーン。自動運転車に対する妨害行為が起きている。

 

明らかな過剰反応で、AIに対する漠然とした不安と不信感が根底にあるのだと思います。このような人たちに、「自動運転車が、人間の事故率を下回ったら、社会実装することが合理的」と説明しても、とても納得してもらえないでしょう。おそらく、「事故率0%」にならなければ納得をしてもらえないでしょうし、仮に達成しても(テクノロジー的にあり得ないことです)、「隠している情報があるはずだ」と言って抵抗されることになります。

このような人たちを、遅れた、迷信に囚われた人たちと笑うことはできません。私たちの中にも、自動運転というとどこか怖い、どこまで信用できるのかという気持ちがあります。人間は感情的な生き物であり、その感情を無視することはできません。

 

また、高度な完全自動運転は、メーカー側もマネタイズをどうするかという難問を抱えています。

完全自動運転(運転手不要、乗客は乗るだけ。レベル4またはレベル5)になると、車を個人が所有する意味はなくなります。必要な時にスマホで呼んで、目的地に着いたらリリースをすれば、勝手に次のお客さんがいるところに走っていきます。自動車メーカーは、車を売るのではなく、ロボタクシーなどのサービスを提供することでマネタイズをせざるを得ません。初期投資は一般の自動車に比べて数倍になる上に、料金は一般のタクシーより安くしなければ消費者は納得しません。要は儲かるまでに辛抱が必要な商売なのです。自動運転はテクノロジーとしては夢がありますが、商売としては地道な努力が必要になります。

 

そこで、テスラ、百度、ファーウェイなどが注目をしているのが、「レベル2+」という新しいカテゴリーです。

国土交通省の資料(ロードマップ2017)を元に自動運転のレベル。現在、日本では、レベル4までが走行可能。

 

レベル2+自動運転というのは、レベル2とレベル3の間にくるものです。国際的な基準として認められているものではなく、中国メディアが使い始めている言葉です。他にも「レベル3に限りなく近い自動運転」「レベル2を超えた自動運転」などという表現もあります。ファーウェイのADS(Advanced intelligent Driving System)では、マーケティング用語として「レベル2.9」(9は循環小数の表記で2.99999…)という言葉を使っています。

レベル2+とレベル3の技術的な違いはあまりありません。しかし、大きく違うのは、運転主体です。レベル2+はあくまでも運転主体が人間であり、自動運転中も運転しているのと同じ注意力が求められます。一方、レベル3は運転主体はAIであり、自動運転中は映画を見たり、本を読んだりすることができます。

この運転主体が人間にある自動運転がレベル2+、運転主体がAIにある自動運転がレベル3になります。

「だったらレベル3の方が楽でいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、レベル3は「条件下での自動運転」であることに注意をしてください。条件下とは、現在はほとんどが「高速道路での定速走行中」「高速道路での渋滞中」などであり、家を出てからすぐに自動運転になるわけではありません(レベル2のオートパーキングなどは使えます)。つまり、普段は人間が運転をしていて、条件にあてはまる状況になった時だけ、AIに制御を渡せるというものです。AIに制御を渡している間は、ビデオを見たり、本を読んだりすることができます。ただし、いつでもAIからの要求に対して、人間が運転できる状態でなければならず、飲酒をしたり仮眠をとることはできません。スマートフォンの操作も、法的にはOKですが、すぐに運転操作に戻れれないケースがあることから、自動車メーカーは非推奨にしています。

つまり、レベル3自動運転と言っても、実際は条件に合う一部の場所でしか自動運転を利用できません。

 

一方、レベル2+自動運転は、常に自分が運転をしているのと同じレベルの注意力が必要になりますが、家を出てから目的地に着くまで自動運転が利用できます。もちろん、完璧ではなく、ところどころ自動運転がうまくいかないところが出てきます。その時は、人間が介入をして修正してやる必要があります。

うまくいかないと言っても、壁に激突しそうになるとか、そういう危険なことは起こりません。多くの場合、AIが走行戦略を立てることができず止まってしまうというパターンです。

レベル3の自動運転は、完全に制御をAIに渡します。このような車を市販するためには、厳密なテストが要求されます。AIが完全に運転をするのですから、わずかであっても運転ミスが起こらないレベルに仕上げる必要があります。

一方、レベル2+自動運転は、あくまでも人間が主体となって運転をしますから、自動運転ができないシーンがあっても、人間の介入を求めることができます。技術的にはハードルが低くなるわけです。

 

と言っても、レベル2+自動運転の進化は目覚ましく、人間が介入しなければならないシーンがどんどん少なくなり、日常的なシーンではほぼほぼ自動運転に任せっきりにできるようになってきています。自動運転ができずに、人が運転しなければならない状況と言っても、多くの場合は、交通標識や道路形状などが理解できず、停止してしまうというパターンです。感覚としては、ほぼほぼ自動運転でAIに運転は任せているけど、難しいところで助け船を出してやるという感覚です。人間の感覚からすれば、レベル2+の方が自動運転ができるシーンが多いため、完全自動運転に近い感覚があります。

こういう用語の使い方は正しくなく、誤解を招いてしまうかもしれませんが、レベル2+自動運転は「簡易版完全自動運転」に近い感覚です。しかも、レベル3自動運転に比べて、求められる技術ハードルは低いために、個人向けの市販車にも搭載できます。また、運転の楽しみがあり、完全自動運転に気軽に触れられるということから、個人からのニーズもあります。つまり、レベル3よりも市場性があるのではないかとも考えられるのです。

このレベル2+自動運転で、競うように開発が進んでいるのが、テスラのFSD(Full Self-Driving)と百度のANP(Apollo Navigation Pilot)、ファーウェイのADS(Advanced intellignet Driving System)です。今回は、この3つのL2+自動運転について、どのようなことができるのか、どこまで進んでいるのかをご紹介します。

 

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