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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ゴールドラッシュで儲けたのはシャベル販売商人。カフェブームで最も儲けたのは紙製コップを供給した恒鑫生活科技

カフェ競争が激化をする中で、経営に苦しむ各社。その中で利益をあげ続け、上場が見えてきているのが、紙製カップやストローを製造している恒鑫生活科技だ。ゴールドラッシュで一攫千金を得たのはシャベルの販売商人という話そのままだと時代週報が報じた。

 

カフェブームの陰で利益を得ている恒鑫生活科技

1800年代後半、米カリフォルニア州で起きたゴールドラッシュで一攫千金を得たのは、金鉱堀りに挑戦した人々ではなく、その人々にシャベルを売った人だという話はよく知られている。

中国では、スターバックスや瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin’ Coffee)などのカフェ、喜茶(シーチャー、HEY TEA)、奈雪的茶(ナイシュエ)などの中国茶ドリンクカフェの競争が激化をしている。その中で最も利を得たのは、「合肥恒鑫生活科技」(ハンシン)かもしれない。

恒鑫は、紙コップやストローなどを生産しているメーカーで、スターバックスやラッキンコーヒー、HEY TEA、マクドナルド、バーガーキングなどに紙コップなどを提供している。恒鑫は目論見書を深圳証券取引所に提出し、上場計画を進めている。

安徽省合肥市にある恒鑫生活科技。元々は印刷会社だが、PLAコーティングの技術を得て、カフェ競争により大きく成長をした。

 

分解される防水コーティング

恒鑫の中核技術は、PLAコーティング技術だ。PLAはとうもろこしを原料としたポリ乳酸のことで、生物由来の原料を使いながら、石油由来のコーティングと同じレベルの強度、防水、透明性を実現している。植物由来であるために、通常の廃棄をしても分解され、環境に負荷を与えない。

中国では2008年からレジ袋の使用に制限がかけられ(限塑令)、2030年までにCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までに排出量をゼロにする「双碳」が2022年に目標として掲げられるなど、石油系原料の使用削減が進んでいる。そのため、各カフェチェーンも、紙コップやストロー、包装紙に天然由来のものを採用するようになっている。恒鑫はこの波にうまく乗ることができた。

▲恒鑫生活科技の製品。PLA(ポリ乳酸)をコーティングした紙コップなどを製造している。防水効果が高いだけでなく、植物由来の樹脂であるため、環境中で微生物により分解される。

 

飲料原料を製造するメーカーも躍進

この分野で成長をしたのは恒鑫だけではない。田野創新(ティエンイエ)、浙江徳馨食品科技(ダーシン)などの濃縮果汁などの食材を提供する企業も上場をした。さらに、元気森林にエリトリトール(甘味料)を提供している三元生物(サンユエン)と植物由来のクリーミングパウダーを提供している佳禾食品(ジャーフー)も上場準備を進めている。

カフェ競争、中国茶ドリンク競争が激化する中で、まさにシャベルを提供する企業が上場ラッシュになっている。

業界の専門家、和弘諮詢の文志宏総経理は、時代週報の取材に応えた。「このようなサプライ企業の発展は、新中国茶飲料、コーヒー、無糖飲料などの急速な発展によるものです。消費者に飲料を提供する最前線の企業に比べて、サプライ企業はBtoBであるため安定した売り上げを確保しやすいのです。また、コストなども制御しやすく利益率も安定をします」。

▲恒鑫の紙製ストローもヒット商品となった。PLAコーティングされているため、時間が経っても柔らかくならない。

 

印刷会社がPLA紙製品に転身

恒鑫は1997年創業で、創業時の社名は恒鑫印務で、企業向けのパンフレットや資料の印刷請負会社だった。2001年頃から紙食器を扱うようになっていった。2008年6月1日に限塑令が出され、小売店でレジ袋の無料提供ができなくなると、プラスティック代替製品がにわかに注目されるようになった。恒鑫はPLAに着目し、夢賓生化科技(ルオビン)を買収し、PLAストロー、PLA紙コップ、PLA紙皿を主力製品にするようになっていった。

しかし、限塑令はレジ袋に限られていたため、なかなか紙食器の売上は伸びず、輸出に頼っていた。しかし、2019年頃から中国茶カフェの競争が激化をし、このチャンスを捉えて、恒鑫はスターバックスマクドナルド、ディコス、バーガーキング、デイリークインなどの外資ファストフードチェーンの顧客を獲得していった。10年間、輸出を地道に続けていたことが、外資系チェーンから評価されることになった。

2020年には、HEY TEA、Manner、古茗、蜜雪氷城、Cocoなどの国内チェーンの顧客を獲得していく。外資系チェーンが採用したことが評価された。

2020年には、限塑令が強化され、使い捨てのプラスティックストローが使用禁止となり、PLA紙食器に注目が集まり、恒鑫はさらに業績を拡大した。恒鑫は2021年には紙コップを18.8億個も販売している。

カフェが過当競争になる中で、最も利益を得た会社として注目されている。

▲激安ドリンクスタンド「蜜雪氷城」のカップもPLA製。プラスティックと異なり、生物分解される素材でできている。